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'12/10/26

iPS臨床研究を申請 神戸の病院で13年度開始目指す



 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)は26日、高橋政代たかはし・まさよプロジェクトリーダーらが人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った臨床研究をセンター内の倫理委員会に申請したことを明らかにした。目の病気「加齢黄斑変性」の患者6人が対象。

 iPS細胞を使った治療は、実施されれば世界初とみられる。倫理委による承認後、厚生労働省の審査を受ける必要があり、2013年度の開始を目指す。高橋氏が眼科部長を兼務している先端医療センター病院(神戸市)で実施予定。

 米グラッドストーン研究所(サンフランシスコ)で現地時間25日に開かれた国際幹細胞学会のシンポジウムで、高橋氏は同病院にも近く申請する考えを示した。同学会はiPS細胞を開発した山中伸弥やまなか・しんや京都大教授が理事長を務める。

 臨床研究の対象は、高齢者に多い加齢黄斑変性のうち、網膜の裏側に余分な血管が生えてきて色素上皮が急速に傷み、視力が落ちる「滲出型しんしゅつがた」。

 現在の治療法の一つは、網膜に小さな穴をあけ、下にある血管と傷んだ色素上皮をピンセットのような器具で取り出す手術。だが、栄養を与えたり老廃物を処理したりする色素上皮が修復されず、網膜が次第に傷む難点があった。

 今回の計画は、患者の皮膚の細胞から作ったiPS細胞を網膜色素上皮細胞に成長させ、シート状にし、この手術でできた欠損部に補う。シートの準備に約半年かかる。

 当初の主な目的は安全性の確認。既存の治療をしても矯正視力が0・3未満などの条件に合う患者6人に移植し、異常が出ないかを監視、視力の低下が食い止められるかなども評価する。

 視力の回復効果を本格的に確かめるのは数年後の次の段階となる。参加人数を増やし、より大きな効果が期待できる比較的症状の軽い患者を対象にした試験をする。

 今回の計画は、幹細胞を使った治療に関する国の指針に適合するかなどを、厚労省の委員会が検討する。厚労省によると、昨年の平均は申請受け付けから結論まで平均7カ月。ただiPSの利用は前例がなく、患者への説明や安全性など十分な確認が必要となる。




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