【編集委員・小滝ちひろ】奈良時代(8世紀)の工芸の最高傑作といわれる、奈良・東大寺の不空羂索(ふくうけんさく)観音立像(国宝、高さ3.62メートル)の宝冠(同、高さ88センチ)にちりばめられた青いガラス玉が、より時代をさかのぼる弥生〜古墳時代に輸入されたものである可能性が高いことが27日、東大寺であった講演会で明らかにされた。東大寺を開いた聖武(しょうむ)天皇(701〜756)が天皇家に伝わる宝物を仏に捧げたのではないかとの見方も出ている。
ガラスを分析したのは東京理科大の中井泉教授(分析化学)と日本ガラス工芸学会の井上暁子会長(ガラス工芸史)。古墳時代以前のガラスが遺跡の出土品以外に科学的に確認された例は、過去にないという。
宝冠は、唐草文様を透かし彫りした銀製の本体に高さ24センチの化仏(けぶつ)がつき、翡翠(ひすい)や琥珀(こはく)、真珠、ガラスなど1万数千点の宝玉で飾られている。