◆玄関ドアの新聞受けに着目
事件か、自殺か―。密室で遺体が発見されたため、当初は自殺との見方も出ていた片岡夕子さん(29)が殺害された事件で県警は、宮部高典被告(32)が仕組んだトリックを見破って摘発に至った。「捜査の現場が、殺人であることも念頭に置いていたからこその摘発。初動捜査がしっかりしていた」と岐阜地検幹部。捜査1課の現場捜査員らが現場の違和感をいち早く察知し、スピード解決に至った。
9月30日、午前。各務原市のアパートの1室で、片岡さんの遺体が見つかった。着衣に乱れはなかったが、首にはタオルが巻きついており、顔はうっ血。救急隊が死亡を確認した。
部屋のドアは、カードキーを差し込んで開錠するタイプで、鍵の複製は不可能だった。二つある鍵の一つは室内に、もう一つは父親が所持。窓も閉まっており、完全な密室だった。県警幹部は「事件の線は薄いとの見方は確かにあった」と振り返る。
しかし、ある捜査幹部は「部屋の空気みたいなものから、事件の線は捨てきれなかった」という。
着目したのは、玄関ドアの新聞受け。内側の箱のふたが開いたままだった。「新聞が箱の中にたまらないよう常に開けている人はいると思う。しかし、被害者は新聞を取っていなかった」。ドアに何らかの細工をするために、犯人が開けたものなのではないか―。「違和感を感じ、ずっと気になっていた」
同日夕から任意で事情を聞いていた片岡さんと交際していた男、宮部被告。「当初はシロ(無実)という見立てだった」というが、捜査幹部はより詳しく話を聴くよう取調官に指示。取調官は、片岡さんが殺害されたとみられる時間帯前後の供述に不審な点があることを見抜き、追及すると容疑を認めたという。
逮捕は翌日の未明。地検幹部は「事件、事故などあらゆる可能性を排除せず、迅速に犯罪性を見極めた捜査だった」と話す。宮部被告はその後、ドアの外から新聞受けを通じて内側の鍵にひもを付け、外側からひもを引いて施錠する工作を説明。「自殺に見せかけるつもりだった。交際トラブルで殺害した」などと供述した。
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