パレスチナ:ラマラ新市長「生活向上阻む占領」
毎日新聞 2012年10月27日 14時42分(最終更新 10月27日 15時40分)
ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区の中心都市ラマラで20日に実施された市議会選で過半数を獲得した地方政党「この市の息子たち」代表で、市長に就任するムサ・ハディド氏(47)が24日、毎日新聞の単独インタビューに応じた。経済的成長の目立つラマラは、パレスチナの「繁栄の象徴」とも呼ばれるが、ハディド氏は、道路や下水道など「基本的なインフラ整備が不十分で、課題は山積だ」と強調。イスラエルによる占領政策が生活の向上を阻んでいる実態を広く伝え、「問題の根本的な解決を目指したい」と述べた。【ラマラ(ヨルダン川西岸)で花岡洋二】
今回の選挙は06年1月の評議会(国会に相当)選以来の実施となったが、自治政府主流派組織ファタハと対立するイスラム原理主義組織ハマスがボイコットし、選挙の意義を疑う声もあった。ハディド氏は「拒否するのは自由だが、選挙は公正に行われた。結果の正当性は否定できない」と話した。ファタハ指導部が選んだ候補者に納得しないハディド氏ら一部メンバーが新たな政党「この市の息子たち」を組織、大きな支持を集めたことについては「現在の自治政府に一定の批判を加えたいという民意の表れ」との見方を示した。
市行政の課題については「下水道は整備率が50%に満たない。道路や街灯の整備、街の清掃も十分ではない」と指摘。ラマラの経済的な発展に関しては「イスラエル政府などがパレスチナの繁栄の象徴のように取り上げるが、一つの側面に過ぎず、(他の問題から目をそらすための)恣意(しい)的(戦略)だ」と訴えた。
ヨルダン川西岸は、パレスチナ自治政府の行政権が及ぶ「A地区」と、イスラエルが行政権を握る「C地区」などに区分されている。ラマラ市はかつてC地区に排水処理施設の建設を計画していたがイスラエル側が許可せず、A地区に建てた。ハディド氏は「新たに二つの処理施設が必要だが、もはやC地区以外に土地はない。生活の質の向上を阻害するこうした占領の問題について、パレスチナ自治政府と協力して積極的に取り組みたい」と意欲を示した。
ハディド氏は11月招集の市議会で、正式選出される。