生活保護者に対しては負担を求めて、高齢者には自己負担を軽減するようで、一見すると矛盾する言動に思えるが、実は三井厚労相のバックグラウンドを考えるとその発言の真意を推し量ることができる。
薬剤師は、基本的には医師と共存共栄なので、日本医師会の意向には従うはずだ。日本医師会は、患者の自己負担の引き上げに反対である。これは一見患者本位のようであるが、実は日本医師会は町医者の利益団体で、町医者にとってもっともいい「お客」は、ちょっとした病気で平日昼間の決まった時間に来てくれる患者。つまり老人、高齢者なのである。
こうした「上客」が気軽に町医者に来てくれるように、患者の自己負担の引き上げに反対すると考えれば、日本医師会の主張はきわめて合理的といえる。このため、70~74歳の医療費窓口負担について、三井厚労相は、現在特例で1割になっているのを2013年度から2割に戻すという政府の方針には慎重だと考えられる。
それでは、生活保護受給者の負担については、なぜ引き上げを言い出したのか。これには、生活保護に関わる「闇ビジネス」との関係があると筆者は推測している。「闇ビジネス」については医師、薬剤師等の医療関係者から、その実態の一部がしばしば語られる。三井厚労相もそうした情報チャンネルから、生活保護受給者が病院からタダで手に入れた薬をネットや路上でさばく「闇ビジネス」が横行していることを聞いているかもしれない。
「闇ビジネス」は規制を守って正直に商売する薬局の敵である。そこで、生活保護受給者の負担を引き上げるのは、薬局を守ることにつながると考えたのではないか。以上はあくまで推測だが、理屈はドラッグストアのポイント禁止と同じである。
一見正論に見えても、結局、誰もがしがらみを背負いながら行動しているのだ。
『週刊現代』2012年11月3日号より
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