ニューヨーク・タイムズが「アジア人が入試で合格しすぎて争点に(Asian’s Success in Admission Tests Seen as Issue)」という記事を載せました。

問題になっているのはニューヨーク市のエリート公立高校が行っている、ペーパーテストのみによる「イッパツ入試」です。

ニューヨークには四つの公立エリート高校があります。それらは生徒数の多い順に:

ブルックリン・テクニカル・ハイスクール
スタイビサント・ハイスクール
ブロンクス・ハイスクール・オブ・サイエンス
クイーンズ・ハイスクール・フォア・ザ・サイエンス・アット・ヨーク・カレッジ


です。

中でもスタイビサント・ハイスクールは日本で言えば「開成高校」的なオーラを漂わせた、スノッブな高校です。

ニューヨーク市の公立高校(総生徒数102万人)全体に占める、アジア系の比率は16%です。

しかし所謂、エリート校の誉れの高い高校では、アジア系が生徒の過半数を占めています。

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これはどうしてかと言えば、ニューヨーク市の方針で、これらのエリート校の入試はペーパーテストによる「イッパツ入試」を採用しているからです。

アジア系の家庭の親は子供の「お受験」に熱心です。土日も補習校などに通わせて、これらのエリート校へ合格するよう、準備するわけです。

1970年頃にはスタイビサント高校の学生の大半は白人で、アジア系は僅か6%でした。それが今は72%がアジア系になっているのです。
これを見て、非アジア系の親からは「フェアじゃない!」という声が上がっています。

ブルームバーグ市長は本人自身がウォール街のトレーダーから情報端末会社を立ち上げた経歴の人なので、競争の中を生き抜いてきたビジネスマンです。だから「ペーパーテストのどこが悪い!」と、ぜんぜん批判に取り合う気は無いようです。

もともとニューヨーク市の公立高校をメリット主義の「イッパツ入試」にしたのは、NYタイムズの記事によれば白人の親たちなのだそうです。

1970年代に公民権運動が盛んになった際、白人が既得権益を守るため、州議会を動かして、現在の「イッパツ入試」方式を導入したのです。

それが完全に裏目に出て、白人の生徒は勉強熱心なアジアの生徒に勝てなくなっているわけです。

ところで話は脱線しますが、このスタイビサント高校(下の写真)は、ゴールドマン・サックスの新本社から、歩いて三分くらいのところにあります。

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このへんはウォール街に働く若いファミリーが多く住んでいて、バッテリー・パーク・シティにある幼児向けのネルソン・ロックフェラー公園には、下の写真のような銅像が沢山あります。

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幼少の頃から、このおカネの銅像をナデナデして、するどい金銭感覚と、剛毅な態度を養うわけです。

そして夜遅くまで灯のともる、ゴールドマン・サックスの本社(下の写真)を眺めながら、勉強にいそしむというのが、将来の「宇宙の支配者」たちの育成過程というわけです。

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あ、それからスタイビサント高校は最近、カンニングが常態化しているということがすっぱ抜かれて、美味しい話題を振りまきました。

それにしても流石スタイビサント高校……将来のインベストメント・バンカーに必要とされる人格を学校側が敏感に感じ取って、世渡りの巧い人間の養成にいそしんでいるあたり、やっぱエリート校は心構えが違うわ。


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