新しいシリーズですー
第一話エロないです
ほんとは約束通り
くすぐりを書きたかったし、そういう気分だったのですが
どうも一番好きなくすぐりが一番エネルギーいるみたいで
しっくりこないのでもうちょっと時間を置かせてください。
色々書きかけたんですけど(書きかけが十篇くらい!)
自分の妄想を形をかえて展開することにしました。
「誰かの家に居候」とか、隣の男の子やお姉さんと……
なんて誰でも想像したことあるんじゃないでしょうか
あるいは好きなあの子と一緒に住んだら、とか、
ベランダの向かいにイケメンがいて、とかね。
当初は、ガールズオークションの続きとして書き始めたのですが、
マリナの性格には合わない気がしたので、
まったく別のお話にすることにします。
若干長くなる予感がしますが
短編挟んだりしながらやっていきます。
コレまで通り、のんびりお付き合いください。
☆
家庭調教師「うたかたのコイビト」
第一話 月曜日
☆
我が国のことではないが、
かつて、使用人は「お坊ちゃま」や「お嬢様」の性教育係を兼ねていたと、
どこかで聞いたことがある。
それがどういった様相のものなのかわからないが、
現代、それはずっとずっと進んで、
いま「家庭調教師」という形でここに馴染んでいる。
多くは、女子高校生や、女子大学生が、
主に男の子について“性教育”を施す。
彼の、初々しい体の初恋相手が家庭教師というワケだ。
あるいは、男の子と付き合うなんてまだまだだ、と思っている両親が、
意図的に女子×女子の組み合わせを選ぶこともある。
女の子に比べるとずっと少ないが、男の子の家庭調教師も存在している。
ここしばらくシゴトのなかった私だが、
以前教えていた相手の紹介で、派遣会社を通さず直接依頼が舞い込んできた。
月給7万円、家と食事付きの住み込み家庭調教師。
依頼者が母親と言うのも、私の薄い警戒心を刺激しなかった。
給料こそ多くはないが、
それでも一軒の家から支払われる報酬としては多すぎるほどだし、
明日住む家のない私にとっては、これ以上ない条件といってもよかった。
それだけのお金がもらえれば、
あとはハンバーガーショップででもアルバイトすれば、
十分生活をまかなうことが出来るだろう。
学費は奨学金でやりくり出来る。
依頼人である宮木さん(なんとなくお金持ちそうな名前ね)は、
物腰が低く、優しいお母さんといった第一印象を私に与えた。
しかし会話をしていると要領を得た会話運び、
抑揚の操作、「押し引き」の上手さ等、隠し切れない地頭の良さが垣間見られ、
ザックリ切り揃えられたミディアムショートの髪も、
いかにもキャリアのある女性と言う雰囲気に感じられてきた。
30半ばということだが、20半ばと自称しても「大人っぽい」で通じるだろう。
「どうかしら、変なお願いだと思うでしょうね」
確かに、そんな子供が存在するなんて、なんとも信じ難い。
「詩(ウタ)ちゃんはこうやって可愛らしいし、
でも、プロの家庭調教師だものね?
ふふ、評判良いわよ貴女」
「ね、私の子、カイとミサを手慣づけて欲しいの、
あなたにぞっこん、恋させちゃって。
うん、そう、性的な意味でよ」
カイはまだしも、クウは難しいかしら?
もしそうだったら、カイだけでもいいのだけれど」
「いいえ、私は女の子でも構いませんが。
一応お断りしておくと勉強を教えることも出来ますよ、普通に……」
「ダメよ、それじゃ。
躾けて欲しいの、二人の性欲を満たして、貴女のペットにして頂戴。
……あぁ、もちろん、間接的には私のペットということになるのだけれど。
前にもね、違う女の子を雇ったのだけれど、
すぐに辞めてしまって……困ったものね。
縛ったって、叩いたっていいわ、
道具が必要ならネットででも買って頂戴。お金は全部出します。
貴女家に困っているんですって?
部屋が一つ空いているから、そこを使って頂戴。
そう、三人で暮らすの。お風呂だってキッチンだって好きにしていいわ。
家具はもうそろえてあります。私物は自分で送ってね。
なんなら苗字だって三人目の子として、宮木にしていいのよ……急ぎすぎかしら?
家事は三人で相談して頂戴。
私がやってもいいのだけれど、この通り忙しのよ。
それにあんまり若い子は、私みたいなおばさんには難しいのよね。
……詩ちゃんは、前のお宅では“ネコ”だって聞いたけど、
マゾなのかしら?」
暗い喫茶店の中二階奥の席。
店は、確かに混んでこそいないが、
この階層にだけ一切他の客が通されないのが、
彼女がこの店に顔馴染みであることを感じさせる。
「……そうですね、たぶん、うん」
「――ふふ、女の子はそういうものよね、
相手によって色々な花を咲かせることができる。
ね、見せて頂戴。
あんなイヤらしい自慰を見せてくれた女の子が、
思春期の子供をはべらせてお姫様になった絵を。
私はそれが見たい、描きたいのよ――」
そういうと彼女は私の斜め向こうに、焦点の合わない、
ぼぉっとした、けれど熱の篭った目線を向けた。
(普通じゃない……特別なヒトだな)
ぼんやりと私は思った。
(住み込みで相手は二人、か……)
「不安?」
私の心の中を見透かしたように、宮木さんは尋ねた。
「少し……その、私もそれほど……経験豊富でもないもので」
「あはは、大丈夫よ、
私が“下地”は作ってあるから。
きっと楽しくなっちゃうと思うわ――」
★
バイトの概要をまとめてみる。
彼女の養子である、二人の子供たち(三人の間に科学的血縁関係はない)を、
私なしでは生きていけない(性的に)ように躾ける“家庭調教師”のアルバイト。
対象の二人は、幼少期から義母に性調教を施され、
感度鋭敏、性欲旺盛。
しかし依頼人は多忙を極めており、教育の続行が不可能。
二人を母性のドレイに躾けなおすことが目標。
関係は恋人でも、ドレイと女王様でも。
期間はとりあえず様子見で一週間。一週間で手付け込み五万円先払い。
それ以降は、必要を見て月単位で延長。
母親が終了を決める。終わり次第ボーナス支給。
快感でもよい。苦痛でもよい。「なんなら通電してもかまわない」
(どこまでが冗談かわからなかった)
必要なものがあれば経費で購入してくれればいい。
「……調教なんていっちゃったけど、
要するに、貴女とずっと一緒にいたいって思えば成功よ」
依頼人の言葉そのまま。
★
世田谷にある宮木家(母親は普段別のマンションに暮らしているそうだ)は、
大使館や豪邸の目立つ閑静な住宅街の中にありながら、
新築でもなさそうながら、ペンシルハウスなどではなく、立派な一軒家だった。
00年頃に立てられた完成分譲住宅といった風情で、
おそらく木造なのだが、全体が深緑で塗装されており堅牢な印象を与える。
駐車場は長らく使われていないようで雑草が伸びているものの、
石畳風の玄関周りや筆記体の「Miyaki」という表札、
白いレースのかけられた飾りガラスのドアなどは、
裕福な外国の家を思わせるオシャレなものだ。
なんなら家政婦の一人も居そうな雰囲気である。
――これから私が家政婦みたいもんか。
“姉”のクウちゃんは私より三つ年下、
“弟”のカイくんは五つ年下。
つまり二人とも中学生だ。
この年じゃ、三つ違いとなると、もう随分遠い距離のように思える。
彼女は違うアーティスト、違うブランド、違うマンガ、違う感性が支配する世界に生きている。
五つなんてもうエイリアンみたいなものだ。
「こんにちは。 誰かいらっしゃいますか~……」
「はい?」
私を出迎えてくれたのは、
赤いギンガムチェックのエプロンをつけた栗色の髪の毛をした男の子だった。
バターと小麦の甘い匂いが、家の奥から漂って来る。
「あ、こんにちは、えっと、お母さんから家庭教師を頼まれた……幸田です、はじめまして」
「あっ……あぁこんにちは、宮木……です。
えっと、いま……あ、お姉ちゃん、呼んでくるんで」
「カイくん、こんにちは。
はい、お願いします」
「! はい、あの…… ちょっとお待ちください」
彼はたどたどしい敬語を付け足してそういうと、
銀色のフライ返しをもったまま急いで戻っていった。
海くんはどことなく口下手な感じで、
細身だけれど、年齢の割りに身長が高く、
まだ顔がその背丈に追いついていないように幼さを残していた。
足や二の腕なんて、きっと私より細いだろう。
黒いスキニーデニムを細くロールアップして、
ラルフローレンの白いオックスフォードシャツを着ているその格好はいかにも「宮木家」らしいけれど、
袖の捲りが適当だったり、胸元にUネックが覗いて見えるところに、
年頃らしいあらっぽさが感じられて好印象だった。
「こんにちは」
遅れて出てきたクウちゃんは、カイくんより明瞭な声でそういった。
懐かしいストレートパーマの前髪、
アイロンで上手に巻かれた、痛みのない黒髪の毛先。
卵型のややまるっぽい輪郭と鼻立ち、シルエットはすっとしているけれど
やわかそうな頬、やや憂鬱そうな黒目がちな瞳(たぶん、黒色のカラーコンタクト)、
ぷっくりとした唇。
体つきは身長が低め、見た感じ150cm前半。どちらかというとややふっくら。
友達が多く、にぎやかに笑いそうなとっつき易さがありながら、
どこかナイーヴさを内包したその愛想笑い、
とまぁ全身こういった調子の、“古着MIXガール”の表紙でも飾っていそうな女の子だった。
私は二人に進められるまま、ダイニングの机に座り、
海くんの焼いたホットケーキをいただくことにした。
彼はフライパンを二つ駆使しして、一度に二枚のホットケーキを焼いていて、
バニラアイスクリームと小さなミント、ホットケーキ・シロップに浸かったそのケーキを
私たちによこし、自分は何もつけずにそれを食べた。
「おいしいー!これ美味しい……ですねぇ、凄く!」
「カイが料理担当なんですよ。
私は料理はダメで、洗濯担当。
それにしてもよかった、優しそうなお姉さんで。ねぇ、カイ?」
「そ……そうだね」
「何緊張してんのよ」
「してないよ」
「緊張するよね、突然おじゃまして、今日から一緒に暮らします、なんて」
私も内心はずっとドキドキしているのだけれど、
事前に決めたように、こうしたシゴトに慣れているお姉さんを装ってカイくんににっこり笑って話しかけた。
「そんなことないんですよ、
ずっとお母さんにお願いしてたんです。私たちお姉さんが欲しいって。
ねぇ、カイ、あんたずっとそう言ってたでしょう?」
「そうだけど……」
「初心だな~、クラスの女の子とちゃんと話してんのぉ?」
「うるさいなぁ、そんなのどうでもいいだろ」
「カッコつけちゃってんな~、結構モテるくせに。
三年の間でも噂だよ、アイネちゃん好きなんだって、海のこと。
ね、アイネちゃんって凄い可愛い子がいるんですよ、家が近所なんだけど、その子……」
「余計なこと言うなよ!だから、フられんだ」
「あ~、言っちゃうかぁ、そういうこと。しらないぞ~」
「ふん」
「あとでガールズトークしてくださいね」
「うん!しよしよ~」
わざわざ躾けて欲しいというくらいだから、
もっとトガった子供たちを想像していたのに、
年相応に女の子と話すのが恥ずかしいといった風情のカイくんも、
きっとクラスのパイプ役
(例えば野球部と図書委員会を、いじめられっことトップグループを繋ぐあの立場)
をつとめているに違いないクウちゃんも、本当にいい子だった。
休みの今日一日話し合った結果、このように私達の日程が決まった。
(といっても、カイくんは終始無言で怒りをテレビの中のゾンビにぶつけていた)
月曜日 21時から、カイくんの勉強をみる
火曜日 おやすみ
水曜日 22時から、クウちゃんの勉強をみる
木曜日 22時から、クウちゃんの勉強をみる
金曜日 21時から、カイくんの勉強をみる
土曜日 三人とも部活動
日曜日 おやすみ
そして今日は祝日、月曜日。
カイくんは話がまとまると、晩飯は勝手にとクウちゃんに確認して、
すたすたと二階へあがっていってしまったけれど、
私とクウちゃんは解散せず、
私の部屋にあたる一階奥の部屋に運び込まれたダンボールをあけて荷物を整理していた。
彼女は私の服を広げたり畳んだりしながら、可愛い、似合いそうだと誉めてくれる。
「さっきクウがいってた子なんですけどね」
クウちゃんはそうやってきさくに話しかけてくれると、
まるで本当に兄弟姉妹が出来たみたいで、
恥ずかしいような、嬉しいような、くすぐったい感情が生まれる。
「ウタさんってあんまりそんな風に見えないのに……
その、えっちなシゴトしてるんですか?夜の、っていうか」
「えっ……そ、そんな、違うんだよ~、
でもそうだね、ちょっと、してるかも」
「うわ、凄い、なんかやらしーな~。
わかってたけど緊張だなぁ、
よかったー、私、水曜日からで」
「二人はその……知ってるの、私がなんで来たのか」
「知ってますよぉ、私たち二人とも異常ですもん。
あの人のせいで……
あ、いや、いいんです、ごめんなさい。
ともかく私は嬉しいな、ウタさんとは仲良くなれそうな気がして」
「私もクウちゃん好きだなぁ」
「あ!やっぱり慣れてる!」
「そんなことないよぉ」
「あはは」
クウちゃんは色々話してくれた。
自分でも自分たちの性欲は異常だと思う。
だけど母親の教育の結果、生理的にオナニーを体が受け付けない。
だから誰かに「して」もらわなきゃいけないのは仕方ない。
私はなんだかその話が、
自分の境遇と重なって聞こえて、二人に同情を抱いた。
「カイはね、ああやってみえてもドエムですから。
いっぱい苛めてあげてくださいね」
「クウちゃんは違うの?」
「どうかな~、あはは
……ほらそろそろ、九時になっちゃいますよ」
「あっ、ほんとだ……
じゃあいってきます」
「はぁい、いってらっしゃい、お姉ちゃん」
★
コンコン。
「入るね」
「どーぞ」
カイくんはベッドの上でマンガを読んでいた。
部屋全体に私と彼の、シャンプーの匂いが充満している。
彼が横目でちらっと時計を見る。
「今日からですか」
「うん、お給料もらっちゃってるしね、ちゃんとやらなきゃ」
「……そうですね」
「しよっか」
「……」
「お勉強」
「……お願いします」
瞼の裏には、さっき三人で食事をしたときの光景が浮かんでいた。
社交辞令なんだと自分に言い聞かせても、宮木さんの言葉がぐるぐる頭を回る。
「二人がうまくなつくようなら、宮木として三人で……」
変なカタチだけど、これが私の家族作りなんだ、
二度目の、それで、たぶん最後の……。
決定済みの未来のように思われた、フーゾクで知らないおじさんの顔を覗き込む自分と、
マックでのバイトを終えて、海くんの作ったご飯の待つ家に帰る自分が交互に浮かんだ。
後ろ手にドアを閉める。
カイくんの部屋はどこか薄暗くて、電球が一つ足りないような気分だった。
廊下から差し込む白色LEDがゆっくり陰りを帯びていく。
がちゃん。
「さぁ、授業を始めましょ」