つまり驚くべきことに、この南太平洋の外れにある島には、欧州のような先進的なシステムがしっかりと根を下ろしているのだ。街中はよく整備されており、交通や通信、医療などの社会インフラや治安も完璧で、政治も民主主義が定着している。現地に滞在した6日間、通りでたばこの吸い殻が捨てられているのは1回も見なかった。自動車がクラクションを鳴らすとか、行列に誰かが横入りするような光景もなかった。
その秘訣(ひけつ)はニッケルとフランスだった。ニューカレドニアは世界第5位のニッケル産出国だ。ステンレスなどの原料となるニッケルは、この島の国内総生産(GDP)の20%、輸出の90%を占め、しかも今後数百年分の埋蔵量があることも確認されている。まさにこの島はニッケルによって生活しているのだ。神はこの島に大きなプレゼントを与えたわけだ。
資源が豊富だからといってその国全体が豊かになるわけではない。世界には豊富な資源が原因で逆に貧困となる、いわゆる「資源の呪い」から抜け出せない国もある。ニューカレドニアにとって幸運だったのは、意外にもフランスの植民地だという点だ。19世紀以来この島を植民地としているフランスは、メラネシアの原住民が住んでいたこの島に自国のシステムをそのまま持ち込み、フランス式の教育や福祉制度を定着させ、欧州と同じような市民意識を持たせた。そのおかげでニューカレドニアは資源の呪いにとらわれることなく、豊かな島に発展できたのだ。
もちろんこの島にも問題はあるだろう。しかし市民の生活の質は、地球上のどの国よりも理想に近い。それはこの島が成し遂げたというよりも、外から与えられたものだった。
不幸にも韓国はニューカレドニアのような神の祝福は受けられなかった。ただ自分たちの力だけで豊かさと幸福をつかみ取っていかねばならないため、非常につらく大変だ。韓国の将来を保障してくれる独自のニッケル鉱脈とソフトウエアは何だろう。われわれは果たして天国に続く道を歩いているのだろうか。