「iPS心筋移植」誤報認め、検証記事掲載

2012年10月13日訂正報道一覧メディア:ジャンル:, ,

読売新聞2012年10月13日付朝刊1面

【読売】 2012/10/11朝刊1・3面「iPS心筋を移植 初の臨床応用 ハーバード大 日本人研究者 心不全患者に」、2012/10/11夕刊1面・2面「死の間際 iPSしかなかった 心筋移植 森口講師 日本なら無理だった」
(訂正事項) 日本人研究者がiPS細胞から心筋細胞を作り心臓患者に移植した事実

読売新聞は、原報道で森口尚史氏がiPS細胞から心筋細胞を作り、重症の心臓病患者に移植したなどとしたのは虚偽であったとするおわび記事を掲載するとともに、一面を使って「検証『iPS心筋移植』報道」と題する詳細な検証記事を掲載した。

検証「iPS移植報道」森口氏、治療の事実なし(Yomiuri Online2012/10/13 07:02)

徹底検証を続けます…読売新聞東京本社編集局長(Yomiuri Online2012/10/13 07:08)

読売新聞は、「iPS移植は虚偽 森口氏の説明 関係者が否定」と題する記事で、森口氏が心筋細胞の移植の研究成果をまとめたとする論文の共同執筆者になっていた大学講師が論文の執筆に全く関与していないことなどを挙げ、「同氏の説明は虚偽で、それに基づいた一連の記事は誤報と判断した」と説明した。

また、検証記事では、森口氏の説明を虚偽と判断した根拠を詳細に説明したうえで、自社の取材・報道の経緯を検証。誤報の原因については、ハーバード大への確認など取材の積み重ねが足りなかったことを率直に認めた。さらに、東京本社編集局長名で、過去にも森口氏の記事を取り上げたことを認め、「徹底的な検証作業を続けます」としている。

肩書 ハーバード大に確認せず

振り返れば、取材の過程で何度か、森口氏の虚偽に気づく機会はあった。

「ハーバード大客員講師」という肩書は、過去の新聞記事などで使われてはいたが、ハーバード大に確認していれば、否定されていただろう。

過去に森口氏が一流専門誌に発表した論文も、その後の確認取材で、専門家の厳格な審査「査読」を受けない自由投稿欄が多かったこともわかった。事前に詳しくチェックすれば、こうした不自然な実態を見抜けた可能性が高い。

また、①前提となるはずの動物実験の論文が確認できない②倫理委員会で承認されたとの確証がない-といった点を軽視せず、取材を積み重ねていれば、今回の誤報は避けられただろう。

(読売新聞2012年10月13日付朝刊8面「検証『iPS心筋移植』報道」より一部抜粋)

 

読売新聞2012年10月13日付朝刊1面

読売新聞2012年10月13日付朝刊8面

 

■関連:【訂正報道一覧】読売、森口氏の「研究」報道5本を誤報と認定(読売2012/10/26)

■関連:【注意報】ハーバード大、「初のiPS臨床応用」日本人研究者との関係否定(2012/10/12第1報~)

(*) 読売新聞2012年10月26日付朝刊に掲載された過去の森口氏「研究」報道の誤報を認める記事については、本件と分離して収録しました。(2012/10/28)

(2012/10/13掲載、2012/10/28修正)