人は、「ヤマ」と「タニ」を持っている。
「ヤマ」とは、その人を支え続ける記憶が作った「場所」であり、
「タニ」とは、その人を炒め続ける記憶が作った「場所」である。
人が持つ数ある記憶の「場所」の中、
このふたつの特別な「場所」にのみ、
「彼ら」はそういう名前を付けた。
「ヤマ」と「タニ」、どちらを失っても、
人は生きていくことが、できない……。
ヒロキと司は、他者の記憶を操作できる特殊能力者。「会社」と呼ばれる謎の組織に所属し、ターゲットとなった人間の記憶を改変したり、時には「ヤマ」や「タニ」を破壊して癈人に追い込む、「潰し屋」である。「イメージ」と呼ばれる擬似記憶を使って他者の記憶を侵犯する彼らは、「会社」の人間から、「ペット」という蔑称で呼ばれていた。

ふたりは、「会社」の「社員」・桂木の指示のもと、同じ「潰し屋」の悟とともに、これまで「仕事」をしてきたが、殺人も厭わぬ「会社」のあまりに非情な姿勢に、ヒロキは耐えられなくなり始めていた。そんな時、司と悟の能力を発見し育てながら、「会社」から逃亡した板特殊能力者・林が、彼らを救い出すため、追っ手である桂木の前に姿を現した……。
「再会」と裏切り、愛しさと憎しみが交錯し破裂する。

桂木と接触し、「記憶」を共有するすべての愛する者を、血と涙にまみれた塊の地獄から救い出そうとする林。だが、「会社」内で「社員」に出世している司は、自らの「ヤマ親」である特殊能力者・林を潰すよう社長に命じられる。悟を救出するため姿を現した林と、司は、愛憎入り交じる記憶操作バトルの末、ともに潰れてしまう。瀕死の司を見てヒロキは動揺するが、驚くべき能力を発揮し、癈人化していた司を蘇生させることに成功した……。
ヒロキと司、そして悟。
「イメージ」を持った悲運の少年達。

自らの「ヤマ親」を潰すこととなった司。その後、次の仕事に取りかかったヒロキは、偶然、瀕死の林に出会い、司が林を潰したことを知りショックを受ける。問い詰めるヒロキに、司は、「会社」を操るため、同じ能力者である旧知の悟を潰そうと持ちかける……。
深く結ばれたふたりの「ペット」は、
この血にまみれた非情な世界で今……。
林の思い。
真実を知った悟。
引き裂かれる司。
桂木の過去。
そして、ヒロキ……。
「会社」を逃げ出すことにした、ふたりの「ペット」。悟の持っていたディスクの中にあった、「場所」へと向かう途中、ヒロキは…。慟哭のクライマックス、最終話『始まりの「場所」』。 |