脱・薬物依存:出所者支援、更生施設に専門スタッフ−−法務省方針
毎日新聞 2012年10月27日 大阪夕刊
薬物依存者の再犯防止を図るため、法務省は来年度から、刑務所出所者の自立や就労を支援する更生保護施設に「薬物依存回復プログラム」を実施する専門スタッフを配置していく方針を固めた。来年度は先行的に全国の5施設に各2人のスタッフを配置する方針で、5施設に対する委託費として来年度予算の概算要求に約5000万円を計上した。
国会で継続審議となっている「刑の一部執行猶予」関連法案が成立した場合、薬物依存者は一部執行猶予の対象として出所後、長期の保護観察を受けることが可能になる。この期間に効果的な治療を行って再犯防止を図る仕組みが想定されており、同省が出所後の受け皿の一つとなる更生保護施設の態勢強化に乗り出した格好だ。
専門スタッフは臨床心理士、社会福祉士、精神保健福祉士といった有資格者とする方向で検討。一つの施設に、プログラムを実施する「処遇」担当者と、薬物依存者の自助グループや医療機関など退所後も支援を継続できる関係機関につなぐための「調整」担当者の2人を配置する。
プログラムは刑務所出所前に行う専門スタッフによる面接で同意した薬物依存の出所者が受けられる。更生保護施設入所時から3カ月間、薬物依存に効果があるとされる心理療法「認知行動療法」を活用し、集団・個別指導を組み合わせて行う。
更生保護施設の自発的な取り組みとしては、東京都渋谷区の「両全会」が今年8月から、全国で初めて臨床心理士による本格的な薬物依存回復プログラムを始めており、同省はこうした取り組みを支援することになる。【伊藤一郎、江刺正嘉】