政府は23日の閣議で、五輪と世界選手権を合わせて世界大会13連覇を達成したレスリング女子55キロ級の吉田沙保里(30=ALSOK)に国民栄誉賞を授与することを正式決定した。同日午後、都内で記者会見を開いた吉田は「大変に栄誉ある賞」と神妙な表情。一方で、周囲から懸念されていることがある。これまでの受賞者は賞の重みから「スーパー優等生」になりがちなため、「性格を変えるな!」の声が飛んでいるのだ。
これ以上ない栄誉に、会見に出席した“霊長類最強の女”もさすがに緊張気味だった。「とてもビックリした。大変に栄誉ある賞。国民のみなさまの応援のたまものです」と、いつもより神妙な表情で感謝の言葉を述べた。
国民栄誉賞は、第1回の王貞治氏(72)以来、20件の受賞がある。故人を除く受賞者はいずれも「国民栄誉賞をもらったのだから、おかしなことはできない」と、必然的に正しい振る舞いを求められた。なかには「スーパー優等生」を演じるあまり、私生活ががんじがらめになった受賞者もいる。心労のあまり「お悩み相談」に駆け込んだ者もいたという。
また過去には、授与の打診があったプロ野球の盗塁王・福本豊氏(64)が「立ちションもできなくなる」と固辞した話は有名。昨年、なでしこジャパンが受賞した際も賞にふさわしい“品格”が話題になった。それまでの自分を変えることも余儀なくされるほど影響力のある賞を、吉田も受賞することになったが、懸念材料もある。
吉田といえば、飾り気がなくサービス精神旺盛。誰にでもあけっぴろげな性格で、国民的な人気がある。五輪で金メダルを獲得しても、テレビ番組で過去に同じ男性に6回告白して振られた話をしたり、お気に入りのアイドルや選手、恋愛話も包み隠さず話す。
それが国民栄誉賞を受賞したことで一転、吉田も当たり障りのない発言ばかりで面白みのない「スーパー優等生」になってしまうのではないか。そんな声も上がっているのだ。
日本レスリング協会の福田富昭会長(70)もこう訴えた。
「(恋愛話を)やめなくていいですよ。別に悪い話をしているわけではない。恋愛話でもなんでも、今まで同様、性格を変える必要はない。『明るいサオちゃん』でいいじゃないですか」
これは今後の競技生活にも影響があること。吉田の庶民的でくよくよしない明るい性格が、13年も世界一の座を続ける原動力になったのは言うまでもない。「となりのサオちゃん」のキャラクターを変えてしまえば、試合結果にかかわる可能性があるというわけだ。
この日の会見で吉田は「今後も14連覇やリオ五輪での金メダルなど、世界記録を更新することが、国民栄誉賞に応えることだと思う」と話し、来年の世界選手権ハンガリー大会で記録を伸ばすことを改めて誓った。
国民栄誉賞では、通常約100万円相当の記念品が贈られるが「私は三重県出身なので、地元のミキモトの真珠がいい。金色で作っていただけたら」と言う吉田。性格を変えずに賞の重さを跳ね飛ばせるか。
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