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縄文時代の津波被災者か 人骨発見
10月26日 17時33分

宮城県東松島市にある遺跡から見つかった縄文時代の複数の人骨が、およそ3500年前にあった津波で流されて亡くなった人たちのものである可能性が高いという研究結果がまとまりました。
津波被害の痕跡とされる人骨の出土は初めてで、分析にあたった研究者は「災害の履歴を明らかにして復興に生かしていきたい」と話しています。

人骨が見つかったのは、宮城県東松島市の宮戸島にある室浜貝塚で、26日は発掘調査に当たった奥松島縄文村歴史資料館が記者会見を開きました。
資料館によりますと、2年前に行った発掘調査で見つかった9体の人骨について、放射性炭素を使った手法で年代を測定したところ、3500年余り前の縄文時代後期のもので、この地域を襲った津波の痕跡とみられる地層と年代が一致したことが分かりました。
また、これらの人骨は、いずれも人為的に掘った穴ではなく、くぼ地にはまり込んだような状況で見つかったほか、手足の一部が欠けていたり、頭蓋骨だけ残っていたりして、埋葬されたとは考えにくいということです。
東日本大震災でもこの場所には津波が押し寄せたということで、資料館では、縄文時代に起きた津波で被害にあった人たちが流れ着いたものではないかと判断したとしています。
津波被害の痕跡とされる人骨の出土は初めてだということです。
分析に当たった奥松島縄文村歴史資料館の菅原弘樹館長は「今までに発見例がないことなので、さらに慎重に分析する必要がある。地面に残された災害の履歴を明らかにして復興に生かしていきたい」と話しています。

専門家は

今回の発見について、縄文時代の墓に詳しい国立歴史民俗博物館の山田康弘准教授は「人骨が広い範囲ではなく一か所に集中して分布しているほか、人骨自体の埋葬姿勢が非常にきれいに残っているように見えるものもあり、津波被害というより縄文時代の墓地だったと考える方が自然ではないか。墓を作ったあとに、津波などの影響を受けて、上に積もった土が全部取られてしまった可能性があり、さらに検討する必要があるのではないか」と話しています。

一方、縄文時代の環境や生態系に詳しい東京大学の辻誠一郎教授は「3500年前という時期は、気候が寒冷化するなど地球規模で環境が大きく変動していた時期に当たり、縄文人はいろいろな災害に見舞われていたに違いない。今回の人骨は、津波の被害を含めさまざななケースを想定して、地質学的、堆積学的な検討をさらに加えていく必要がある」と話しています。

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