「貧困のブラックホール」自営業720万人時代

414万人は月収入100万ウォン未満
「ハイリスク・低収益の罠」
半数は3年以内に廃業…50代自営業者は30%に急増

 ソウル市内に住むキムさん(51)は3年前に会社を辞め、不動産仲介士の資格を取った。古い住宅の建て替えが進む再開発地域で不動産仲介業を始めたが、競争が激しい上に経験不足ということもあり、6カ月間で1件しか契約が取れなかった。

 不動産仲介業をあきらめたキムさんは料理教室に6カ月間通って調理師の資格を取得、昨年初めに若者の街、弘益大エリアでチャジャンミョン(韓国風ジャージャーめん)店をオープンさせた。若者層をターゲットに低価格で勝負しようとしたがうまくいかず、1年もたたないうちに廃業した。そして今年初めには、スーパーとは名ばかりの小さな雑貨店を買収、3度目の自営業に挑んだ。しかし、近所にコンビニエンスストアがオープンしたため、またまた苦戦を強いられている。キムさんは「子どもたちはまだ学校に通っているのでいろいろとお金がかかる。あらゆることをやってみたが、どれもうまくいかない」と言ってうなだれた。

 多くの人々が自営業を「ハイリスク・ハイリターン」のゲームだと思っている。リスクも大きいが、うまくいけば大成功するものと期待しているのだ。しかし実際のところ、韓国の自営業は「ハイリスク・ローリターン」のゲームだ。失敗の危険性が高く競争が激しいため、高収益を得る可能性がかなり低いということだ。

 本紙が民間経済研究機関「現代経済研究院」と共同で統計庁の資料などを基に自営業の実態を調査したところ、起業して3年続いた自営業者は46.4%にとどまった。中小企業庁の実態調査では、自営業者が昨年手にした純利益は月平均149万2000ウォン(約10万4000円)に過ぎなかった。職に就くことができず最低限の生活費を支援してもらう国民基礎生活受給者(日本の生活保護受給者に相当)=4人家族基準=とほぼ同じ額だ。また、自営業者の57.6%は1カ月の収入が100万ウォン(約7万円)以下だった。これを経済協力開発機構(OECD)の資料に基づき「2010年現在で、韓国では就業人口の28.8%を自営業者が占める」という割合で全自営業者数を算出すると、そのうち約414万人が月100万ウォンの収入も得られていないことになる。

■「貧困のブラックホール」になった自営業

 それでも最近、自営業者が急増している。ベビーブーム世代(1955-63年生まれ)で会社を退職する人が増え、起業せざるを得ない状況に追い込まれていることが主な原因だ。

 建設会社の役員を務め退職したチョンさん(56)は昨年、5億ウォン(約3500万円)を投じてソウル・江南地域のテヘラン路近くに70坪(約230平方メートル)の店を借り、大規模な輸入ビール専門ビアホールをオープンさせた。オフィスが密集している地域のためうまくいくと思っていたが、現実は違った。週休2日制の会社がほとんどのため金曜日の夜から日曜日までは開店休業状態で、平日でも日中は客が入らなかった。売り上げは伸びず、2000万ウォン(約140万円)の店舗賃借料と従業員8人の給料まで払うとなると、赤字は雪だるま式に膨れ上がった。結局、1年もたたないうちに投資額の半分も戻らないまま先日、店を閉めた。

キム・ヨンジン記者
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