個展 “INVISIBLESCAPES” オープニングのご報告

Daisaku Oozu on 7月 2nd 2012 at 22:52 |

境界線(”INVISIBLESCAPES”より。南相馬市内の警戒区域との境界にて撮影)[galerie sonにて]
‘Borderline’ from “INVISIBLESCAPES”, at galerie son / Photography by Daisaku Oozu.
新作 “INVISIBLESCAPES” のベルリンでの個展は、おかげさまで無事に滑り出すことができました。帰国の数日後からやや体調を崩してしまって、ブログでのご報告が遅くなりましたが、搬入は予想以上にスムーズに進み、22日に行なわれたオープニングはたいへん賑やかなものとなりました。
ギャラリストの鮮やかな、それでいながら日本人の心情に寄り添う見事な挨拶を受けて、作品について私が自ら付け加えることはありませんでしたが、ドイツからの災害支援への感謝のほかに、お伝えできることがあるのならと話したことは… いま福島に生きる人の、人間としての最低限の権利 – 生存の権利と将来を描く権利が、どれほどか損なわれ、あるいは損なわれつつあるか、それが全てでした。
会場ではさまざまな方から作品への批評と感想をいただいたとともに、被災地と事故の現状についての質問も少なくなく、あらためてドイツに暮らす人々の関心の高さを感じました。
一息ついて、飲物とオードブルを手にしたとき、友人の Andreas 氏がなかば冗談,なかば心配まじりに「ひょっとして、それが今日最初の食事かい?」と。図星でしたが、それでようやく自分がどれだけ気を張っていたのかを知るような、一瞬の10日間でした。
御礼をお伝えしたい方は数えきれませんが… 熱意をもって私のテキストを翻訳してくださった友人の Akira さん、お忙しい中ギャラリーとの連絡ほか要所を支えてくださった「ベルリン中央駅」の中村真人さん、的確で丁寧な通訳を懸命に務めてくれた長尾果林さん、友情厚いベルリーナー Andreas Stirl 氏。そして南相馬のFさん、会津のOさん夫妻とご両親、Kさん、福島出身のNさんをはじめ、福島の皆さんと気仙沼のM君。隙のない仕事で支えてくださった堀内カラーとフレームマンの皆さん、シグマのKさん。このほかにも沢山の方の応援と声援をいただいて形にすることのできた展示です。あらためて厚く御礼を申し上げます。
会期はこのあと、8月11日(土)まで。まだ始まったばかりです。さわやかな夏のベルリンへお越しの機会がありましたら、ぜひ足をお運びいただければ幸いです。
なお、ささやかではありますが、作品販売の収益の一部を寄付として、内部被曝を計測するホールボディカウンターの円滑な運用が急務となっている南相馬市立総合病院にお届けできることになりました。関係各位のご理解とご協力にあらためて御礼申し上げます。
 


at galerie son / Photography by Daisaku Oozu.

アートバーゼルとドクメンタを駆け足で訪れた後に辿り着いたベルリン。一歩目から何の迷いもなく歩き出せる街は、異郷なのにやはり温かく懐かしく、この街で待っていてくれた人たちとともに私の心を包んでくれるように感じました。少ないながら滞在中のエピソードの幾つかを、これからゆっくりとご紹介できればと思っています。
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2件のコメント to “個展 “INVISIBLESCAPES” オープニングのご報告”

  1. Akira より:

    Oozuさん、おはようございます。

    ベルリンでの個展のご成功、おめでとうございます。また、無事のご帰国お疲れさまでした。私一人の力では心もとない翻訳でしたので、前回同様ドイツ人の友人にチェックをお願いしましたが、正直なところ誤訳がないかと心配していました。
    国内でもこの原発事故で様々な誤解や軋轢などの問題が出ている中で、世界で最も大きな関心を持っていながらも得られる情報が少ないドイツで、被災地の人々の心に近づけるこの写真展を開催する意義はとても大きいと思います。更にホールボディカウンターの寄贈に寄与されるとのご判断は素晴らしいことと思います。

    この個展開催のお手伝いが出来た事に、私も感謝したいと思います。

  2. Daisaku Oozu より:

    Akira さん、あたたかいメッセージをありがとうございます。そして本当にありがとうございました。
    個展も始まったばかりで、しっかり評価されてこそ意味がありますが、ともかくも順調に滑り出すことができたのは Akira さんはじめ皆さんのお力添えあってのことです。
    ギャラリーはミッテのど真ん中で各観光スポットにも近く、ほんの数日見ていただけでも、訪れてくださる方の姿が少なくありませんでした。多くの方の目に触れ、遠い日本のことを身近に感じてくれるきっかけになってくれたらと思います。

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