東京都の石原慎太郎知事が「明治以来の中央集権、官僚制度をシャッフルする」といい、職を辞して立ち上げる新党に注目が集まっている。次期衆院選の「台風の目」とされる、大阪市の橋下徹市長率いる「日本維新の会(維新)」との連携がうまくいけば、政権にしがみつくだけの民主党は駆逐されかねない。一体、「石原・維新」連合には、どのくらいの破壊力があるのか。専門家の見立てでは、最高、民主党を上回る130議席という数字も出た。
次期衆院選の構図を一変させかねない、突然の都知事辞職と新党立ち上げ宣言。永田町の一部では、今週初めから、石原氏の盟友・平沼赳夫代表率いる「たちあがれ日本」について、「緊急全国支部長会議が30日に召集された。動きがあるぞ」と警戒されていた。
このタイミングでの決断について、政治評論家の浅川博忠氏は「石原氏としては短期決戦がベスト。『今発表すれば、民主党を衆院過半数に追い込む離党者が出たり、野田佳彦首相が焦って、来週からの臨時国会で解散するかも』と期待したのでは」といい、「長男の伸晃氏が敗れた自民党総裁選(9月26日)から1カ月過ぎ、気持ちの整理ができたことも関係している」と分析した。
今後の注目は、石原氏が会見で「大阪の仲間」と語ったように、橋下氏率いる維新との連携になる。橋下氏は同日、「政策と価値観で一致がないと有権者にソッポを向かれる」と語ったが、もともと、両氏は都内や大阪で何度も会談し、意見交換してきた。
お互いに「考え方が同じ」「石原御大はすごい」と評価しており、「東の石原、西の橋下」と連携できれば、その威力は計り知れない。
政治評論家の小林吉弥氏は「『石原・維新』連合に、渡辺喜美代表の『みんなの党』も加わるのでは。(憲法改正や原発問題など)政策に距離はあっても、(選挙に勝つという)大義の前では何とでもなる。渡辺氏の父、美智雄元副総理は、石原氏とは『青嵐会』の盟友だった。この連携は永田町にとって相当な起爆剤になる」という。
そして、次期衆院選での主要各党の獲得議席について、小林氏は「自民党は比較第1党だが、これで単独過半数はなくなった。200議席前後では。『石原・維新』連合が、全小選挙区に候補者を立てられれば、100議席前後で、第2党に大躍進する。民主党は間違いなく第3党、80議席程度だろう」と予測する。
一方、浅川氏は「『石原・維新』連合は、東西で住み分けでき、格好のパートナーになる。外交政策もほぼ合致する。維新はみんなとの連携をご破算にするのではないか。年内解散ならば、自民党は比較第1党で200〜220議席。『石原・維新』連合は120〜130議席は行きそうだ。民主党は80議席前後だろう」と読む。
ともに、「石原・維新」連合が、堂々たる比較第2勢力になるという見方だ。
こうなると、石原、橋下両氏は保守政治家だけに、選挙後に、比較第1党となる安倍晋三総裁率いる自民党と組んで、「政界再編」や「保守再生」を仕掛ける可能性もありそう。
民主、自民両党以外の第3極としては、「石原・維新」連合以外に、「国民の生活が第一」の小沢一郎代表が提唱する「オリーブの木」構想があるが、石原氏や、橋下氏以外の維新幹部が「小沢嫌い」で有名なため、小林氏は「オリーブの木は一休み。民主、自民、『石原・維新』連合のよる三つどもえの戦いで、小沢新党はじめ、中小政党は埋没する」と語る。
こうしたなか、次期衆院選で惨敗必至とみられる民主党は、死に物狂いで、政権にしがみついている。日本経済を回復させる手も打てず、中国や韓国による領土・主権侵害を許している政権が延命に必死になる姿は醜いが、これが長引けば、「石原・維新」連合にも影響を与えかねない。
浅川氏は「解散を先送りされて、来年夏の衆参ダブル選挙となると、『石原・維新』連合はインパクトもなくなり、資金的にも厳しくなる。100議席にも届かないかもしれない」と語る。
傘寿を迎えた石原氏の決断に、国民はどう反応するのか。