日本郵政が15年までに株式公開の準備、売却収入7.2兆円の見込み
[東京 26日 ロイター] 下地幹郎郵政民営化担当相は26日の閣議後会見で、日本郵政の上場準備に着手する考えを示した。3年以内の上場を目指し、上場で調達した資金は東日本大震災の復興財源に充当する予定。
日本郵政グループの連結純資産は約10.9兆円(2012年3月期時点)のため、政府が保有分の3分の2を売却し、PBR(株価純資産倍率)1倍と仮定すると、売却収入は総額で約7.2兆円になる見通し。実現すれば、1986年のNTT(9432.T: 株価, ニュース, レポート)以来の大型民営化案件になる可能性がある。
下地担当相は、日本郵政の上場計画を29日開催の郵政民営化委員会で説明し、上場のための体制を整備する考えを示した。計画が順調に進めば、政府は保有株式の3分の2を段階的に売却していくことになる。
昨年12月には、東日本大震災の復興財源を確保するための特別措置法が施行され、日本郵政の経営状況や収益見通しなどを勘案しながら「政府保有株をできる限り早期に処分するものとする」と規定されていた。
ただ、郵政の民営化や今回の上場をめぐっては、いくつかの課題や問題点が指摘されている。
日本郵政は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式を100%保有しており、2013年4月には両社が新規ビジネスとして住宅ローン事業に参入する構えだ。これら金融2社が新規ビジネスへに取り組むことは収益力の向上につながり、上場のための成長シナリオを描くために重要との見方もある。
しかし、大和総研の島津洋隆・主任研究員は、郵政民営化とはいえ、金融2社に対する政府の株式保有が長期間にわたって残る可能性が高いという改正法の立てつけのもとでは「完全民営化ではない」と語る。
また、株式を上場する際も、日本郵政が将来性のあるビジネスモデルを描き切れれるかが課題となる。上場をふまえた成長シナリオが描けたとしても、金融2社には「暗黙の政府保証」が残るため、島津氏は「改正法が政府の進めるTPP交渉やWTO(世界貿易機関)の内国民待遇の原則に矛盾するとの声もある」と指摘した。
今年3月に郵政民営化委員会が郵政民営化推進本部(野田首相)に提出した意見書では、民営化が完全民営化ではなく、政府の株式保有が一部残るのであれば、WTO協定を順守する観点(内国民待遇の原則)から、金融2社の業務を少額の貯金などに限定するべきなどと指摘していた。WTO協定は、ビジネスの競争条件の対等化を求めている。
(ロイターニュース 江本恵美、取材協力:藤田淳子、編集:内田慎一)
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