連載コラム

現場より:塾長野崎、365日

取締役として会社経営に携わりつつ、サイシンの塾長として教育現場の一線に。そして、さっきまで教え子だった中3の息子と一緒に家に帰る…。1日24時間、365日子どもの教育に向き合う野崎裕之のつれづれ日記。

時限つきの関係

2012年10月01日

塾の教師は、「夜型」の仕事です。一般のご家庭のように、家族と夕飯を共にする、ということは、日常的にはできません。

一方で、父母会などでは、親御さんのお子さんへの影響力について、口角泡を飛ばして説いたりしている。受動的に日々を過ごしていると、他人様には、親子のつながりの大切さを説き、自らは一般のご家庭よりも子供とのつながりが希薄である、という自家撞着に陥ってしまいます。

で、どうするか。朝しかありません。

今年高校に入学した長男が6年生の時の晩秋から、毎朝6時に起き、子供達も叩き起こすようになりました。そのライフスタイルも間もなく4年目を迎えようとしています。

基本は、一緒に勉強することですが、勉強以外にも、ロードレース大会に備えてのランニングに付き合ったり、ラグビーの練習をしたりもしています。

今春から長男は高校1年生になりました。埼玉の奥から都内の私立高校まで通学しています。遠距離通学ゆえ、朝は6時半過ぎには家を出てゆく。車で駅まで送るのは、私の仕事になりました。

駅まで行く10分余りの時間は、私の「説教タイム」です。毎日テーマを示して、自分の思うところを一方的に話しています。

最初、イヤそうな顔をしたので、「子供は親に養われているんだから、親の話を聴く義務があるんだ!」と怒鳴りました。

その怒鳴り声に続けて言ったこと。

「お前が、大学卒業して、就職するだろ?ウチはこんな田舎なんだから、家族と離れて、どこかに一人で暮らす、という可能性のほうが高い。そう考えると、実は、一緒に暮らしていられるのは、あと6年半くらいだ。お母さんなんか、18歳で家を出たんだから、お母さんと同じことになると考えたら、あと2年半しか一緒に暮らせない。今の状態はずうっと続くように思うかもしれないけど、実はごく短い時限付きだ、って考えろよ。」

その話をして以来、愚息も私の話に耳を傾けるようになりました。

「自分よりも必ず先に逝く存在としての親」。

だからこそ、母や父を歌う歌に、人は得も言われぬ哀感を感じるのではないでしょうか?おじいちゃんやおばあちゃんがそのお孫さんと過ごしている姿を見た時に感じるある種の哀しみの先にも、親子よりもさらに短い時限が背景にあるから、と思うのです。

時限付きの人間関係、とう視点で考えた時、「今一緒にいる」ということは、とてつもなく貴重なものである、と思えてきます。

プロフィール

野崎裕之プロフィール

野崎裕之(のざきひろゆき)
(株)秀文社取締役、進学塾サイシン・サイシンエクセル塾長

昭和39年東京都杉並区に生まれる。大学4年生の時、埼玉進学スクールにて塾講師の第1歩を踏み出す。大学院卒業と同時に入社。教室長でデビューとなる杉戸校時代に、就任時40名だった生徒数を1年間で160名に。平成8年、栗橋校を立ち上げ、生徒数200名という華々しいスタートを切る。平成20年、塾長に就任。

進学塾サイシン・ホームページ   http://saisinschool.sakura.ne.jp/

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