日本維新の会:原発「ゼロ」と「輸出」 政策に矛盾抱える
毎日新聞 2012年10月24日 21時56分(最終更新 10月24日 23時24分)
日本維新の会が次期衆院選で掲げる公約の素案に、「2030年代までの既存の原発の全廃」と「原発輸出容認」が盛り込まれることがわかった。現実路線を意識した内容だが、原発ゼロを目指しながら技術開発や輸出は続けるという矛盾も抱え、「(原発ゼロを目指しながら核燃料サイクルは維持する)民主党政権と同じだ」という批判も出ている。
「日本で(原発の)プラントは持たなければいい。日本で造らなければいい。日本でなぜダメかというと危険だからでしょう」
記者団に矛盾を指摘された維新代表の橋下徹大阪市長は24日、こう反論した。
野田政権が打ち出した「30年代原発ゼロ」の方針に対しては、日本の核技術の優位性が失われることなどを懸念する経済界が強く反発している。維新が「原発輸出容認」を打ち出すのはこうした懸念に配慮する現実路線からだ。橋下氏は「現実の国家運営は市民運動と違う。原発を減らすばかりでは無責任極まりない」と強調。脱原発と同時に代替の電力供給源を示し、電力需要の効率化や技術革新を進める方針も示した。素案には条件付きながら再稼働を容認する内容も盛り込まれる方向だ。
素案は維新政調会長の浅田均・大阪府議会議長と国会議員団でまとめた。党綱領の「維新八策」では原発について「先進国をリードする脱原発依存体制の構築」という抽象的な表現だったが、議員団の一人は「現実的な政策でなければ孤立しかねない」と説明する。次期衆院選が近づく中で維新の政党支持率が下落し、「人気取り政策」だけでは持たないという認識が背景にある。
だが、これまで世論を意識し、安全性を前面に出して国を批判してきたのも橋下氏だ。関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働を進めた野田政権を「国民をバカにしている」と強く批判した。再稼働後の今月10日にも、安全基準が暫定的であることを理由に政府に稼働停止を申し入れた。
野田政権が「30年代原発ゼロ」を掲げるのは、次期衆院選を意識して、世論にアピールする看板を下ろせないためだ。原発輸出や技術開発を進めるとしながら「30年代原発ゼロ」を掲げる維新にも同じ構図が透けて見える。民主党も原発輸出を容認しており、党幹部は「まさかマネではないだろうが」と苦笑する。