話はその2週間前にさかのぼる。10月1日、ソフトバンクは国内4位のイー・アクセス買収を発表。都内で会見した孫社長は買収の狙いを「イー・アクセスが持つ1.7ギガ(ギガは10億)ヘルツの周波数」と語った。
1.7ギガヘルツ帯とはアップルがiPhone向けの高速携帯電話サービス「LTE」の電波に指定した帯域の1つで「これまでと全く価値が変わった」(孫社長)。ソフトバンクはこの電波を手に入れることで、激しいiPhone販売競争を繰り広げるKDDIに対抗する狙いだった。
KDDIは9月21日の「5」発売に先立ち、スマホを中継局としてパソコンなどの外部端末をネットに接続するテザリングサービスを開始すると発表した。一方、電波の少ないソフトバンクはテザリングを見送った。しかし「5」予約の序盤戦でKDDIにリードを許した孫社長は9月19日に慌ててテザリング解禁を発表。直後にイー・アクセスの千本倖生会長のもとを訪れ、猛烈に経営統合を迫った。
「孫さんはどうしてもテザリングを急ぎたかったようだ。そのために一緒になりたいと情熱的にラブコールされた」(千本会長)。もちろんテザリングだけがイー・アクセス買収の狙いではないが、その時の孫社長はKDDIとの「5」販売競争で頭がいっぱいだったようだ。
もともとソフトバンクが日米同時で大型買収に乗り出せるほど財務体質を健全化できたのも、2008年にiPhoneを日本でいち早く導入してライバルから顧客を奪ったからだ。ソフトバンクが販売するスマホに占めるiPhoneの比率は6割を超えるとみられる。
しかしこの先を見据えれば、アップル頼みの経営こそがアキレス腱(けん)にもなりかねない。「5」でも高い競争力を見せつけたアップルだが「いつまでもiPhoneの優位が続くとは思わない」とライバル企業の首脳はいう。ソフトバンクにとってスプリント再建の成否も、イー・アクセスとの統合効果もカギを握るのはiPhoneだ。「携帯事業で世界一を目指す」と宣言したソフトバンクの孫社長だが、中長期的な成長のためにはアップル依存からの脱却が欠かせないだろう。
(産業部 磯貝高行)
孫正義、ソフトバンク、アップル、スプリント・ネクステル、iPhone、イー・アクセス、スマートフォン、ベライゾン、AT&T、KDDI
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