2011-08-29
■[書籍][コミック]カネッティの『群衆と権力』と『ヘルシング』の「黒い兄弟」
- 作者: エリアスカネッティ,Elias Canetti,岩田行一
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2010/09
- メディア: 単行本
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今村仁司氏の『群衆――モンスターの誕生』を読んでいた際、ネタ元であるカネッティの『群衆と権力』を読みたくなったので、備忘録代わりに書きます。
- 作者: 今村仁司
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1996/01
- メディア: 新書
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さて、恐ろしいのが、「群衆、平等、カネッティ」で検索を掛けた結果、『ヘルシング』の「黒い兄弟」にカネッティの言う「群衆」を見出した人がいたという事です。
中略
そして、イスカリオテメンバー全員が、アンデルセンを先頭に斬り込みを開始します。「行きます」「逝け!!」「お先に!!」と致命傷を受けたものから次々と捨て駒になって、自爆していくわけですが、その様子を眺めながらの「さくりさくりと死んでいく」以下の少佐のセリフ。
個人的には正直かなり驚きました。
わたしはあまりマンガを多くは読んでいませんが、この少佐のセリフのような、「群衆」というものに対する認識はマンガなどではごくごく一般的なものなのでしょうか。
実はこのくだり、先日来読み進めている(しかもまだ途中…汗)カネッティの『群衆と権力』における群衆論と酷似しているように思います。
すなわちカネッティの論をざっくりまとめれば、人間は特に好意を持っていない場合、他者との接触を恐怖する。この接触恐怖から唯一自由になれるのが、群衆の中にいる瞬間である。肉体的にも心的にも緊密で、互いに押し合っている状態のとき、この接触恐怖が転化し、理想的な場合、一切が一個の肉体の内部で起こったときのように自己と他者との区別も無くなり、解放され、全てが平等になる。
では群衆は何を核として形成されるのかと言うと、それがこの場合、「神」に対する信仰や、「国家社会主義」による戦争や、「アーカード」という存在への一体ということになるのですが、いずれにせよ、「理想的な群衆」の形成を少佐はこの場で目撃し、これを称して「黒い兄弟たち」と言っているわけです。
そして、カネッティがナチスの台頭を目撃していたドイツ語で書くユダヤ人であることを考えると、少佐とのこの見解の一致は、また一層興味深く思えてなりません。
私は「黒い兄弟」という概念を私は男にしか通用しない「共有幻想」と解釈しましたが、「黒い兄弟」という概念が、何がしかのイデオロギーや信仰心といったコアをよりどころにした「群衆」だという解釈を行ったこの方の解釈には驚きました。イメージとしては、塊魂と言ったところでしょうか。コアは大したものでなくていいのですが、求心力があれば、うまくいくとどこかの国みたいに、国家ごと「一億総玉砕」や「神風特攻隊」といった狂信者になれます。
塊魂トリビュート PlayStation3 the Best
- 出版社/メーカー: バンダイ
- 発売日: 2010/06/03
- メディア: Video Game
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ネット上でもある特定の対象(フジテレビでも、韓国でも、平野綾さんでも、犯罪自慢者でも)を見かけると、それをコアにして一期に膨れ上がります。
まさしく群衆の行動様式そのものです。
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- 50 http://www.google.co.jp/imgres?imgurl=http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tyokorata/20100513/20100513005439.jpg&imgrefurl=http://d.hatena.ne.jp/tyokorata/20110130/1296392725&usg=__Y1oc7G3jYdiRpXOl6DCqipqEwpQ=&h=800&w=533&sz=266&hl=ja&start=332
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リアキ 2011/08/31 04:48 美味しくて健康的な食品を安く食べたい。
誰もが思う理想でしょう。自分もそう思います。
不味いより美味しい方が良いし、健康に悪いより良い方が良いし、値段が高いより安い方が良い。
「悪いより、より良く」。
そうした「理想の追求」はむしろ自然であり、それ自体は決して「悪」ではないでしょう。
しかし理想という光によって覆われた現実という闇を見ない、見ようとしない愚かな行為は、逆に光が闇に覆い尽くされる結果となる。
自らが悪であると自覚する者より、自らが悪である事にすら気付かない者の方が恐ろしい。
悪より悪い「最悪」、真の邪悪。
全ての人が自制、反省出来れば「理想」なんでしょう。
しかし悲しい事に、自覚しようとする者は少数、自覚しよう「とすらしない」者が圧倒的に多いのではないか?
群集には、群集を正しく導く神のような絶対的な存在が必要不可欠なのだろうか?
他者によって強制されなければ現実を直視する事は出来ないのだろうか?
シャア「地球は人間のエゴ全部を飲み込めやしない!」
アムロ「人間の知恵はそんなもんだって、乗り越えられる!」
シャア「ならば、今すぐ愚民共すべてに叡智を授けてみせろ!」
クェス「(そうだ…それができないから…)」
シャア「結局遅かれ早かれこんな悲しみだけが広がって地球を押し潰すのだ。
ならば人類は自分の手で自分を裁いて、自然に対し、地球に対して贖罪しなければならん。
アムロ、なんでこれが分からん!?」
……シャアのやってた事はアレですが。言葉だけだとまともに見えるわぁ。
愛藤遊彩 2011/08/31 10:40 食の群集問題、言ってる事は理解できるし苦労もあるんだろうと思いますが、じゃあ僕たち消費者はどうすればいいんでしょうか。
スーパーに行けば安い食材がキレイに置いてあって、その中からよりやすくて質のいいのを探そうとするのは当たり前の行動だし、ファミレスにしろなんにしろそりゃ価格的にも品質的にもよいものを求めますよ。
そして有機野菜を消費者としての誠意=高い値段を出して買ったらそれはそれでブランドの買いあさりといわれると、じゃあどう買えば誠意のある消費行動になるんだと言いたくなってきます。
味っ子2では傲慢な客として群集の悪い面が描かれてましたし、もっと敬意を払うべきっていうのは分かりますが、目指す姿勢を提示せずにただ批判だけされても…
これはtyokorataさんではなく作品の欠陥じゃないかなーと。どっちも好きな作品なんで心苦しいですが。
うちの近所にはDVDレンタルショップが隣接していて、片方は旧作100円、もう片方は50円で提供しています。
映画を作られたうえでの労力を考えても明らかに安すぎるとは思いますが、じゃあここで借りるのはよくない消費者なんでしょうか? 気に入った作品はDVDを購入するという選択肢もありますが僕はほとんどないです。だってDVD2000円だとしてもそのお金で40本レンタルできるから。
責任転嫁みたいになりますが、流通業者やファミレス、その背後にある効率を徹底追求する姿勢にも問題がある気がします。
味っ子2のファミレスの社長とか「限界まで安くて質のいいのを目指していたら、もっと限界を要求された」みたいなように言って消費者のわがままを描こうとしてましたが、そりゃそうだろ、と。
消費者が「いや、そこまで安くしなくてもいいよ、このくらいの値段でいいよ」とか言ってくれるわけもないし、限界ラインは自分で決めなければいけないと思います。
そこで限界以上に突っ走ってしまうのは他社との潰し合いがあるわけで。
あの社長も消費者の声に逆らえず泣く泣く農家に負担を押し付けたように描かれていましたが、近隣の農家から質の高いネギを購入していたなら、値下げだけでなくそれをアピールすることができたんじゃないかと思います。
もちろんそれでは競争に勝ち抜けないと判断したからなんでしょうが。
かといってここで業者が集まって価格はコントロールしようぜという話になってもそれはそれでカルテルとかでばっちり違法なんですよね。
なんというか完全に自分を悪者にしないための論理展開って感じですし、心理状態としてそれを否定もできませんが。
買ったおいらが悪いのか、売ったあいつが悪いのか、卸した農家が悪いのか、という状態ですね。全部ひっくるめて世間が悪い。
こうなって群衆の群れが自分自身のコントロールを放棄してしまうことこそが群集の最大の問題点なわけですが。
現在農家の収入がすさまじく低いって言うのは知ってますし、どうにかしなければとも思いますが…
正直日本の農業は狭い面積で手間をかけて高品質なものを作るスタイルですから、物価(人件費)が天井知らずに上がっていってる現代じゃどうしようもないんじゃないかとも思います。
農地を手放す人が増えて、それを一部が買い集めることで大規模的農業にスライドしていって採算が合うように変化していく流れは止められないでしょうし。
(戦後の農地改革とかのころまでは手作業ですから一人で管理できる面積に限りがありましたしね)
農家は機器の買い替えで出費もかさむ状態だとか、農業問題は知れば知るほど旧来のスタイルがどん詰まりになってしまっているという感想しか出てきません。
スパロボマスターK 2011/09/01 19:18 農業と食糧の問題は今後の日本の切実な課題です
とりあえずJAが寡占状態で権力を利かせて情報統制まで行っていて彼らに逆らう事が出来ず農地法の改正も出来ない状態
日本の農業の未来は暗いです
タクティクスオウガのランスロット二人のやり取りはエグくて大好きです
リアキ 2011/12/02 00:52 ブログの隅から隅まで目を通しているわけではないので見逃しているかもしれませんが、tyokorataさんは土山しげる先生の「食キング」を読んだ事はありますか?
自分にとって料理漫画で一、二を争う程大好きな作品で、もし読んだ事が無いのでしたらオススメです。