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2012年10月26日(金)付

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 華が足りないのか、新聞記者が主役の活劇は少ない。ささやかな誇りはアメリカンヒーローの重鎮、スーパーマンである。仮の姿のクラーク・ケントはデイリー・プラネット紙記者。編集局からの「出動」も多い▼その人が新聞社を辞めるという悲報にうろたえた。おととい米国で発売された新作で、上役に「スクープが少ない」と叱られ、こう息巻いて職を辞したそうだ。「新聞はもはや、ジャーナリズムではなく娯楽になり下がった」▼作者によると、退社後は「現代的なジャーナリスト」として独立し、インターネットでの発信に挑むらしい。「新聞で人助け」とか言っていたのに、そりゃないぜクラーク▼1938年に登場した正義の異星人。一貫して新聞記者の設定で、作者が代わっても勤め先は同じだった。「勤続70年」の転職である。同業の目には無謀と映るし、ひがみ半分、いわば副業だけに気楽なもんだとも思う▼娯楽だと嘆いたのは場の勢いだろうが、新聞の暗中模索は米国に限らない。メールも携帯小説も同じ文字文化だから、課題は活字離れではなく、紙離れだろう。小紙を含め、有料の電子版が競う世だ。空さえ飛べる男が時流に乗るのは道理かもしれない▼記者としての彼の難は、スーパーマンが降臨するほどの修羅場で「突然いなくなる」ことだった。体が一つしかないのは当方も同じ、あれもこれもの器用さは持ち合わせない。ひそかな自慢が業界を去っても、新聞という地味な人助けにこだわりたい。

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