森口氏記事6本誤報、読売東京・編集局長ら処分
読売新聞 10月26日(金)7時2分配信
iPS細胞(新型万能細胞)から作った心筋細胞を患者に移植したと森口尚史(ひさし)氏(48)が虚偽発表した問題で、読売新聞は、心筋移植と過去の研究に関する記事の計7本(東京本社発行版)を検証した結果、6本は森口氏の虚偽説明による誤報と判断した。
残る1本は誤報ではないと認定した。6本の取材では、森口氏の研究実態や肩書などの裏付けが不十分だった。
読売新聞東京本社は11月1日付で、大橋善光専務取締役編集局長と溝口烈執行役員編集局総務について、役員報酬・給与のそれぞれ2か月30%を返上する処分とする。また、柴田文隆編集局次長兼科学部長を罰俸とし、更迭。当日の編集責任者だった編集局デスクをけん責、科学部のデスク2人を罰俸、担当記者をけん責の処分とする。
検証対象は、今月11日朝刊の「iPS心筋を移植」など一連の心筋移植関係記事と、2006年2月〜12年7月に掲載した森口氏の「研究」に関する記事。11日朝刊で1面トップにすることは、局長をはじめ編集局としての決定だった。
局内に設けた検証チームは森口氏から再取材し、25人の専門家に意見を聞くなど事実関係を確認した。
森口氏は「iPS心筋移植」の手術6件中5件をウソと認めた後も、1件は実施したと主張。検証取材に「米ハーバード大近くの病院で行った」と述べ、初めて病院名と執刀医名を明かしたが、この病院には手術記録がなく、同名の執刀医もいないため、改めて虚偽説明と断定した。記者は、医師国家資格のない森口氏を医師と思い込んでいた。
これ以前の6本の記事では、5本の研究に実態がないと判断した。5本中、09年9月〜10年5月のiPS細胞作製などに関する4本の研究については、森口氏が「08年末から2か月半の米国滞在中に1人でやった」などと不自然な説明を繰り返し、複数の専門家も「不可能」としている。
12年7月の「凍結保存し4年後に解凍した卵巣で妊娠」では、複数の専門家が「ありえない手法」と指摘。森口氏も移植手術に立ち会っていないことを認めた。
当時の取材は、実験記録や森口氏の年齢、肩書などの確認が不十分だった。
7本は全て森口氏が取材源で、検証に際し、紙面で取材源を明かすことを森口氏は了承している。
大橋善光・読売新聞東京本社編集局長の話「一連の誤報について読者の皆さまに深くお詫(わ)びいたします。iPS細胞移植の臨床応用への期待を裏切ったことに責任を痛感しています。今回の検証結果で明らかにしたように、裏付け取材の甘さに弁明の余地はありません。二度とこのような事態を生じさせないよう、また本紙に対する信頼を取り戻すために、全力で再発防止策に取り組んでいきます」
最終更新:10月26日(金)7時2分
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