石原慎太郎東京都知事が知事を辞職し、新党を結成して国政復帰を目指す意向を表明した。石原氏の参戦が乱立気味の第三極勢力にどんな影響を及ぼすか。あくまで政策本位の政治行動を望みたい。
「石原新党」をめぐっては数年来、浮かんでは消え、消えては浮かぶ状態が続いていた。それは民主党と自民党という二大政党に対する「失望感の裏返し」だった、と言ってもいいだろう。
臨時国会開会は決まったものの、永田町では野田佳彦政権と自民、公明両党が特例公債法案の扱いをめぐって対立し、こう着状態が続いている。国民に高まる「いらいら感」を見極めたタイミングは絶妙といえる。
三年前の総選挙では、民主党が掲げた「脱官僚・政治主導」「地域主権」の旗に多くの国民が期待を寄せた。だが失敗し、野田首相は公約を裏切って消費税を引き上げる法案を成立させた。
自民党は安倍晋三総裁の下で政権奪還を目指しているが、本当に党が生まれ変わったのか、国民は半信半疑だ。だから石原氏への期待も一定程度、集まるだろう。
石原氏は会見で霞が関の役所と官僚に対する不満をあからさまに語った。なぜ政府は発生主義、複式簿記の財務諸表を作らないのか。なぜ厚生労働省は東京都が独自に始めた認証保育所を認可しないのか。なぜ外務省は横田基地の日米共同使用に反対するのか。
石原氏は都政を預かった十三年間「国の妨害に遭って苦しい思いをした」と吐露した。自民党政権時代に閣僚を務め、さらに都知事の経験も加わって霞が関の岩盤の厚さを痛感したに違いない。
同じ問題意識は橋下徹大阪市長率いる日本維新の会や渡辺喜美代表のみんなの党、河村たかし名古屋市長の減税日本など第三極勢力に共通している。そこから「第三極の連携がどうなるか」がこれからの大きな焦点になる。
そこで石原氏にぜひ望みたいのは、連携や協力関係は政策本位であってほしいという点だ。会見で自ら紹介した「米国防総省を刺激しないで」という外務省高官発言にあるように、強硬な外交路線を懸念する声もある。
消費税の扱い、原発・エネルギー政策、尖閣諸島や竹島、北方領土問題、さらに環太平洋連携協定(TPP)についても、国民は「自分たちの意見を政党に託したい」と願っている。国民に明快な政策の選択肢を示せるかどうかが、石原新党の試金石になる。
この記事を印刷する