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ペットの鳴き声などによる近隣被害については被害や長期裁判での精神的苦痛のわりに損害賠償金は
少ない。できれば、訴訟以外の行政指導や裁判外紛争解決機関での解決が望ましいと思われる。
●《 事件 14 》・・・判決文データ有
管理規約に「小鳥・魚類以外のペット飼育禁止」が定められている分譲マンションで、規約に違反してペットを飼育する区分所有者が数軒いたため、マンション管理組合は組合総会でペット飼育をしている区分所有者によりペットクラブを設立させ、クラブ自主管理の元で、現在飼っているペットに限り飼育可とする決議をしたが、その後新たに小型犬を飼う居住者が現れたため、管理組合は総会決議違反として小型犬の飼育中止を申し入れたが、従わなかったため管理組合は小型犬の飼主に対して飼育差止め及び損害賠償訴訟を起こした。
                          
                         【東京高裁平成8年7月5日 判例時報1585号−43頁】

判決・・・(平成9年7月31日)
マンションの生活は共同生活であるから、価値観が異なる人々がお互いに節度を守る必要があるとして、動物の鳴き声などの騒音・臭気・体毛などを嫌悪する人、アレルギーを持つ人も少なからずいること、また衛生面上の問題として建物内部の防音やベランダや換気口からの臭気の侵入、ペットの病気の伝染の危険性などが生じ、またペットの排泄物などによる共有部分の汚損はマンションの経済的価値の下落をもたらす可能性があることを指摘した。
また、ペットの噛み付き事故等については飼主の十分な飼育管理が必要であるが、責任感に欠ける人がペットを飼育する可能性も否定はできない。
飼主の自主的管理には限界があり、管理規約で禁止することには合理性が認められる。
以上から、ペットの飼育禁止を定める管理規約を有効とし、これに反した小型犬の飼主に対し飼育差止め請求を認めた。
また、管理規約違反であることを知りながら、かつ再三の管理組合からの飼育禁止要請を拒否し、結果訴訟事件になったことは不法行為に当たるとして飼主に対して賠償(弁護士費用の内40万円)の支払を認めた。

平成10年3月26日、最高裁は東京地裁の判決を支持し管理組合が勝訴した。分譲マンションでのペットの飼育の可否に関する最高裁の初めての判断であった。
最高裁判決文:「上告人の上告理由について、所論の点に関する原審の認定は原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認する事ができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に基づいて原判決の法令違背をいうものにすぎず、採用をすることができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。」




●《 事件 15 》
細則で「犬・猫などの小動物又は他の居住者に迷惑危害を及ぼす恐れのある動物をしないこと」と規定されてい
る。
管理組合が犬の飼育者A・Bに「犬の飼育禁止」求めた訴訟
飼育者(A)分譲マンション購入時、販売担当者から犬の飼育ができると聞いた。
飼育者(B)禁止規定を知っており犬・猫等の小動物を飼育 しない旨の誓約書を提出していた。
                                          
                                            【神戸地裁 平成9年11月27日】

判決・・・
犬の飼育禁止。被告に25万円と年5分の遅延損害金。訴訟費用は被告(A)(B)の負担。

具体的な実害の発生において対応を行う体制が必要だが、このような体制を作り維持する事は事実上困難なため禁止はやむを得ない。




●《 事件 16 》
都営アパートに居住する原告が、東京都に対して、同アパートの入居者が犬、猫等のペットを飼育することを禁止し、違反者には右禁止を守らせる措置を講ずる管理義務を負っていることの確認を求めるとともに、東京都がペットを飼育している入居者を取り締まらず、原告に精神的苦痛を与えたなどとして50万円の損害賠償を求め、また、同アパートの原告と同じ棟に居住する被告A(猫の飼い主)及び被告B(犬の飼い主)に対して、同被告らが、同アパートにおいてペットの飼育が禁止されているにもかかわらず、敢えて犬又は猫を飼育し、その犬、猫が原告方に侵入するなどした結果、原告に精神的苦痛を与えたなどとして、各50万円の損害賠償を求めた。「都営住宅のペット飼育禁止の確認等請求事件」
                                            【東京地裁 平成12年1月26日】
判決・・・
原告の請求をいずれも棄却する。
原告にとって、近隣で犬や猫が飼育されていることが耐え難く感じていたとしても、集合住宅における犬猫の飼育の是非について、種々の議論がある中で、原告の右のような感情に応じて、直ちに、被告東京都に本件義務が生じ、それを履行しなくてはならないものとは解することができない。
被告Aが猫を飼育したこと自体が、受忍限度の範囲を超えて、原告に何らかの具体的な損害を及ぼしたとの主張立証は、次に触れる本件猫が2回侵入したとの点を除いて何らされておらず、被告Aが猫を飼育していたこと自体が原告に対する不法行為となるとすることはできない。
被告Bの犬が原告方に侵入したのは単なる偶然であって、被告Bが意図したものでない事、また犬が原告方に侵入した直後に被告Bは本件犬の名前を呼ぶなどして呼び戻そうとしており、原告方に本件犬が留まったのは原告が玄関のドアを閉めたことによるもの。原告が供述する、本件犬が原告方のカーペットを汚しその上で尿をしたとの事実がたとえあったとしても、軽微なものである上に、原告が原告方の玄関のドアを閉めて、本件犬を閉じこめなければ発生しなかったものであると考えられる。被告Bは、原告に生じた損害に対して社会通念上必要とされる慰謝の方法を既に尽くしているものであって、これ以上に慰謝料を支払ってまで謝罪しなくてはならない損害は存在しないと認められる。




●《 事件 17 》・・・「曖昧規約での犬飼育禁止と損害賠償請求」 
分譲マンション内で犬を飼育している6名の区分所有者に対し、犬の飼育は管理規約違反であって違法であり、臭気、吠え声、糞尿によって大迷惑を蒙っているとして損害賠償請求をし、管理組合に対して規約違反の事態を放置しているとして6名の区分所有者に対し、犬飼育禁止の措置を取ることを求めるとともに損害賠償請求をしたもの。

原告は犬は必然的に臭気や抜け毛を伴い、動物であるから吠えるし、糞尿もする、犬の好きな区分所有者もいるかも知れないが、犬の嫌いな区分所有者にとっては、その何れも「他に迷惑をかける」行為であって、危害を及ぼす恐れがなくても迷惑をかける恐れがあるので、飼育が禁止されていると考えるべきであると主張し、規約改正による犬の飼育一律禁止が有効であるとした最高裁判例を引用した。
それに対して、管理組合及び6名の区分所有者は、本規約は犬の全面飼育禁止を定めているものでなく、犬のうち「他に迷惑または危害を及ぼす恐れのある」もののみを禁止しており、被告らの飼い犬は全て小型室内犬で、エレベーター内では抱きかかえ、糞は袋に入れて持ち帰り、1ヶ月に1回以上シャンプーするなど飼育マナーに欠けるところなく、区分所有者のうち2名は分譲時に犬を飼うことは可という販売員の説明を聞いて購入している者がいること、マンション敷地内の犬の糞尿には近隣から散歩に連れてくる犬のものが多いことなどを指摘した。
原告:区分所有者 被告:管理組合及び区分所有者6名        
                                             【大阪地裁 平成12年8月28日】

判決・・・原告の請求を棄却
裁判所は他のマンションの規約例を引いて、犬の飼育の一律禁止の場合は、明らかにその旨の規定(小鳥、魚以外禁止など)を置いているが、本件マンションの規約はそれと異なるとして次のように判断した。「禁止条項は可能な限り明確なものでなければならない」ので本件の場合、他に迷惑または危害を及ぼす恐れのない犬は飼育可能と解すべきである。本規約は「本来は猛獣や猛犬などのように定型的に他人に迷惑または危害を及ぼす恐れのある動物を予定しているものであって、原則的には、室内で飼育されることの多い小型犬のように定型的に右恐れの少ない動物は含まれないと解されるところである。」
被告6名の飼育していた犬は、「何れも体長60cm以下、体高30cm以下の室内で飼育されることの多い小型犬であり、他人に迷惑又は危害を及ぼしていた、又は、その具体的危険性があったと認められない」ので、規約によって禁止されていると言えない。
管理組合としても規約違反でない以上、何らの措置をとる必要はない。
規約違反ではないので、他の区分所有者の飼う小型犬等の飼育に関して一定の受忍義務を負うと解さざるを得ない。
したがって、犬を散歩させる際などに糞尿をすることもあれば、各専有部分において若干の臭気がしたり、吠えることもありえようが、その行為態様が悪質で且つ他人の被侵害利益が大きい場合に、すなわち、本件使用細則で予定されている受忍限度を超えていると判断される場合にはじめて、当該犬の飼育行為が違法になり、不法行為が成立する場合がありえると解すべきである。

原告はこれを不服として、高裁に控訴。しかし、平成13年5月19日に大阪高裁で棄却。




●《 事件 18 》
犬の飼育を禁止した特約がある賃貸借契約を無視して、犬の飼育を続けた賃借人に住居の明渡しを請求した。
賃借人は、入居時不動産管理会社の担当者から犬の飼養を認められたよ主張、マンションの他の住人も犬を飼育しているとして、賃貸人との話合いに応じなかった。
                                            【京都地裁 平成13年10月30日】
判決・・・
賃貸借契約での犬の飼養禁止にも係らず、犬の飼養を続けた飼い主に建物の明渡を命じた。また、契約解除における特約(家賃の1,5倍の支払)も認めた。
管理会社の担当者は犬の飼養禁止の契約があるにも係らず、それに反した承諾の代理行為は認められない。




●《 事件 19 》・・・判決文データ有
ペット飼育可の賃貸マンションを賃貸借契約が終了して退去する際、ペット飼育していたことによる臭い、衛生面などから、室内の壁・カーペットなどの現状回復義務があるとした貸主に敷金の返還請求の訴えを起した。
                              
                                            【東京簡裁 平成14年9月27日】
判決・・・
衛生面の問題であっても、消毒で済むようであれば、全面的な原状復帰は認められない。
通常使用して破損・修復した費用と1DKクリーニング(消臭消毒)の作業費を認め、残金の返還を命じた。




●《 事件 20 》
H13年12月頃から、苫小牧市営住宅に住む男性が数匹の猫を飼い始めた為、近隣住民から悪臭などの苦情が出され、市は市営住宅管理条例違反として、同男性にH14年6月以降再三に渡り、飼育を止めるよう求めたが、男性が従わなかった為、同年12月訴訟に踏み切った。男性は妻と二人暮しで入居時にペットを飼育しないという誓約書を提出していた。
                                        【札幌地裁苫小牧支部 H15年4月1日】

判決・・・
裁判官は原告側の請求を全面的に認め、男性に同市営住宅からの退去を命じた。
北海道建設部住宅課によると「ペットの飼育を理由に公営住宅からの退去を命じられたのは道内では初めての出来事」であるとの事。
同市住宅管理課は「共同生活では最低限のルールが必要で、やむを得ず提訴した。同様のケースがあれば、厳しい姿勢で臨む」としている。




●《 事件 21 》
東京都調布市にあるマンションの管理組合が、6匹の犬を飼育していた住人の男女2人に、ペット飼育規定で禁止した大型犬や複数の犬を飼わないよう求めた
2人は平成5年春に入居し、平成10年秋にはダックスフントやドールデンレドリバーなど6匹の犬を飼育。他の住人から鳴き声などの苦情が多発していた。
管理組合は平成12年に具体的なペット飼育規定を新設し、大型犬や犬猫の2匹以上の飼育を禁止していた。
                                             
                                            【東京地裁 平成15年6月10日】

判決・・・
管理組合の請求を全面的に認めた。
2人は「飼育禁止は後から決められており、違反とされるのは疑問。既に5匹は昨年、別のマンションに移している」と主張したが、裁判官は「移転先で苦情を受け、いつまた犬を戻すか分からない」と規定の順守を命じた。




●《 事件 22 》・・・判決文データ有
昭和60年(1985年)頃から神戸市兵庫区の住宅街に住む夫婦が野良猫に餌を与え始め、平成13年(2001年)には、約10匹ほどに増え、近所周辺に糞尿の悪臭がたち、隣に住人の居酒屋店主たちが夫婦に清掃などを求める調停を神戸簡裁に求めたが、逆に夫婦との間に争いが生じた。
居酒屋主たちは、野良猫に敷地内で糞尿されたり、猫をめぐるトラブルで精神的被害を受けたとして、夫婦と知人達あわせて4人に計500万円の損害賠償を求めた。
夫婦たちは、「社会通念上許される程度で寛容な精神を持つべきだ。反対に居酒屋の客が立小便するなどの迷惑を受けた」などと反論していた。
                                             【神戸地裁 平成15年6月11日】

判決・・・
裁判官は「世の中には猫を好む人も多いが、他人に不快感を与えないための配慮が必要。猫嫌いの人が不快感を味わっていれば、餌をやるべきではない。原告が嫌がる野良猫に餌をやり続けたことは違法」として、猫の被害に対して40万円の慰謝料を夫婦に命じた。
また「原告への悪感情から嫌がらせを続けた」と営業妨害による被害も認定した。計150万円の支払を命じた。




●《 事件 23 》・・・判決文データ有
沖縄県浦添市のマンション駐車場付近で、飼い猫が,平成12年5月8日の朝、行方不明となったため、飼い主が同月17日に市に問い合わせたところ、同月8日の朝、同駐車場において、問合せの飼い猫と思われる猫が、何者かによって箱に入れられて市側に引き渡され、既に処分済みであると知らされた。
飼い主は、平成14年7月24日、浦添市情報公開条例に基づき、引き取った猫の記録」の公開を求めたところ、
市が当該文書を公開したものの、その一部を黒塗りにして非公開とする決定を行った。
飼い主は欲する情報(引き渡した人の名前,電話番号,住所)が得られないとして、行政不服審査法6条に基づき、本件一部非公開決定に対する不服申立(異議申立て)をした。
市は上記異議申立てについて浦添市情報公開及び個人情報保護審査会への諮問を経た上で、飼い主に対し平成14年12月3日この異議申立てを棄却するとの決定をした。
飼い主は、平成15年2月10日、上記棄却決定が不服であるとして、公文書一部非公開決定取消を提起した。


                                          【那覇地裁 平成15年10月28日】
判決・・・
黒塗りにされた箇所は、非公開情報に該当するとして、請求は棄却された。




●《 事件 24 》
香川県さぬき市の市営住宅で多数の犬を飼い、住宅を目的外に使用し周辺の環境を乱したとして、市営住宅に住む男性に対し、さぬき市は住居の明け渡しなどを求めた。
男性はH15年4月頃から市営住宅や敷地内に市に無断でプレハブなどを建て、約50頭の犬を飼育。多数が野犬化し同年8月には新聞配達の女性が犬3頭に咬まれ大怪我を負う事故が起きていた。同市は同年10月に住居の明け渡しを請求していたが、男性は犬の里親を探すのに猶予が欲しいとしていた。
男性はH15年9月に狂犬病予防法違反容疑で書類送検され、H16年2月に罰金20万円の略式命令を受けていた。

                                             【高松地裁 平成16年3月5日】
判決・・・
「市営住宅は正常な状態で維持しなければならない。と定めた市条例に反しており、男性には市営住宅で多数の犬を飼育する権利はない。また犬は第三者に危害をくわえており、市の明け渡し請求は正当であり、明け渡しは猶予できない。」として、さぬき市の訴えを全面的に認め、男性に市営住宅の明け渡しを命じた。




●《 事件 25 》・・・判決文データ有
福岡市の分譲マンションを購入する際、マンション販売会社がペットの飼育に関して、不適切な説明を行い、購入者に同マンションでの犬飼育が可能であると誤信させ、売買契約を締結させたとして販売会社に損害賠償または不当利得の返還請求を求めた。
同マンションの管理規約は「他人に迷惑、危害を及ぼす行為」が禁止事項になっており、ペット飼育については明確な定めがなかった。
管理組合の調査では、購入者の中には、ペット飼育禁止と理解していた者やペット飼育可と理解していた者がいた。
                                           【福岡地裁 平成16年9月22日】

判決・・・
「管理規約の内容については、区分所有者の総会で決定されるものであり、販売会社がマンションを販売するにあたって購入予定者に対して説明し得るのは、制定予定の管理組合規約等の内容に限られるものであり、ペット飼育の可否を含む管理に関する事項に関しても、販売会社は制定予定の管理組合規約等の内容を説明する義務を負うに止まり、それを超えてペット飼育の可否についての説明義務までは負わない。」として、請求を棄却した。




●《 事件 26 》
マンション内で飼育している犬の鳴き声や足音等の騒音が原因で寝不足になったとして、階下の居住者が犬の飼い主に約260万円の損害賠償と飼育禁止を求める訴訟を起した。
同マンションは管理規約で犬の飼育が禁止されており、階下の居住者はH14年6月頃から再三再四、犬の騒音について注意をしたが飼い主は飼育を続けた。騒音に深夜から早朝まで悩まされたためH16年5月、睡眠用に別の部屋を借りることになった。

                                          【名古屋地裁 平成16年12月15日】

判決・・・
裁判官は「被告がマンションの管理規約で禁止されているにもかかわらず犬を飼育したため、原告が連日連夜睡眠不足に陥った」と認定。一方で原告側が占有権や賃借権などに基づいて犬の飼育禁止を求めたことについては「犬の飼育や騒音によって占有権などが侵害されたとは言い難い」と判断した。
原告側の主張を一部認め、犬の飼い主に計約100万円の支払いを命じた。
飼育禁止については請求を退けた。




●《 事件 27 》

京都市左京区の府営住宅のベランダで数十羽の野鳩を餌付けし、ベランダに糞が堆積。野鳩は住宅室内にも入りこみ産卵。羽毛や糞の粉塵、悪臭でH15年秋頃から同棟の他の居住者から苦情が出ていた。
府は野鳩の糞の除去を再三指導したが、改善されず「一般人の受忍限度をはるかに超えている」として、住居の明渡しを求め提訴した。

                                               【京都地裁 H17年2月22日】
判決・・・
被告女性は、裁判で反論せず、府の請求を全面的に認めた。

京都府の関係者は「『動物を飼ってはいけない』とお願いしてるが、小鳥を飼うぐらいなら大目に見る。しかし、ここまでひどいと厳しい姿勢で臨まざるを得ない」と話しているという。