ご無沙汰しすぎてた『壬生
』さんです。
玄関先のお軸は、
「山の神 海の神」
お料理のお品書きは、
「秋時雨」というお題でしたが、
まさに訪れた日は、
雨が降ったり止んだりの時雨模様でした。
毎年10月は、
まず、
女将さんから、
こんな巨大松茸、『壬生』さんでしか見たことないってほどの大きな「丹波松茸」を見せて頂き、見とれるほどの姿と香りを楽しんでから、
一品目に入りますが、
トップバッターは、
神御敷に入った「松茸ご飯」でした。
ご飯は一切蒸らさず、
炊き上がったらすぐに供されるので、
やや水分の多い状態ですが、
『壬生』さんでは、
いつもそうなんです。
それにしても、
のっけから豊潤な松茸の風味に、
ご飯茶碗に大盛りな量でも、
ペロリといけてしまいます。
食べ終えると、
「鯉の髭」が天に向かって伸びているお皿でした。
中国では、
鯉が滝を登りきると龍になる登龍門という言い伝えがあり、
古来から尊ばれたようですね。
続き、
「桐の葉の紅葉」が描かれたお椀には、
すりおろした小蕪と、茗荷の小口切りのお吸い物でしたが、
おだしは、「まぐろ節」です。
柔らかく炊かれた小蕪の上には、
渋皮付きの大きな丹波栗がのってましたが、
この栗、
一口食べたら、
焼き芋そっくりでした。
なんでこんなにホクホクで甘いのか伺うと、
10分強、油でじっくり揚げてあるとのこと。
お椀は、
毎度のことながら、
熱々すぎて、
涙目になりながら頂いてましたが、
次の氷がたっぷり張られたお造りで、
一気に熱がおさまりました。
赤貝・鰈・桃色かじき(まぐろ)です。
氷を口に入れて、
口の中もしっかり冷えたところで、
枯松にまみれた肌色の包みが出され、
探り出すと、
最初に見せて頂いた「丹波のジャンボ松茸の天ぷら」でした。
この大きさが写真ではうまく伝えられないのが、
歯痒いですが、
肉厚で横幅も長く、
かといって大味ではなく、
きちんと主張した松茸です。
日本酒がすすむのなんのって。
いつもに増して、
昼間から飲みすぎました。
でも、
この天ぷらには、
日本酒がなくてはならない女房役です。
また、
『壬生』さんでは、
お料理が終わるまで、
日本酒しかないため、
水のように、
つい手が伸びてしまいます。
とはいえ、
ペースが特急になってしまったので、
「マスカット・巨峰・冬瓜・ゼリー酢の白和え風」では、
抑え目にしました。
白和えといっても、
最初に和えてないで、
丸くくり抜かれた葡萄・冬瓜・お酢で作られたゼリーに、
白和えの衣をのせて食べるスタイルです。
この葡萄料理は、
お部屋に飾られていた葡萄の絵からヒントを得たそうですが、
この葡萄は、
女将さんの人生を物語ってるそうです。
葡萄のような人生って…、
色々考えてしまいましたが、
自分の人生を食べものに置き換えてみると、
「スクランブルエッグ」かなぁと…。
そんなことを考えていると、
皮目は酢橘をしぼって、
身の部分はそのまま頂きましたが、
お魚を食べきったところで、
酢橘を掌にしぼって、
さっぱりさせます。
これで生臭さがどこへやらです。
そして、
お料理がおしまいになると、
果物ですが、
今月は、
「筆柿(筆のような形ということで。別名:ごま柿)」と、
「さるなし(野生キウイ)」でした。
どちらも、
あと10個は食べたい美味しさでしたが、
すかさず、
「銀杏のおやき」が運ばれてきました。
苦味のある銀杏で、
体中が浄化されたかのようでした。
お部屋や外を眺めながら、
女将さんの人生話を聞きながら、
しっぽり頂く『壬生』さんですが、
いつ訪れても、
五感が刺激され、
「これが本当の日本の食なんだ」と、
伝統と歴史を感じる日本を思い知らされ、
感嘆のため息が出てしまいます。
料理という域を超えた学びの場です。
「食学」です。
今月も、
「ごちそうさま」の意味を思い描きながら、
ごちそうさまでした。