しかも、ソフトバンクはスマートフォンを経由してパソコンなどの機器をインターネットに接続できる「テザリング」機能をアイフォーン5で開始すると発表。ただでさえ電波が逼迫している中、1.7ギガヘルツを使えなければ、テザリングによって急増する通信量に対応できず、ネットワークがパンクするおそれがあった。
そこで、孫正義社長は勝負に出た。イー・アクセスに対し、時価の3.5倍に当たる1株5.2万円を提示。大株主であるゴールドマン・サックスの条件を飲み、株式を100%買い取ることにしたのだ。
ただ、イー・アクセスは、多くの事業者に自社の通信網を貸し出す事業を収益柱の一つとして展開している。ソフトバンクの完全子会社になると顧客から反発が起こり、事業へ悪影響が出る懸念もあったという。ソフトバンクの目的はあくまでも電波の確保にある。ならば、早いうちに出資比率を引き下げた方がいいと判断したようだ。
連結子会社から外すもう一つの理由に、今回の買収をめぐる総務省への配慮がある。イー・アクセスは今年6月、プラチナバンドと呼ばれる700メガヘルツの電波が割り当てられたばかり(2015年にサービスを開始する予定)。それからわずか3カ月で”身売り”となったため、総務省に対し「電波を割り当てた直後の買収を認めてよいのか」という声が高まっていた。
それだけではない。3年前、総務省はソフトバンクに1.5ギガヘルツ、イー・モバイル(現イー・アクセス)に1.7ギガヘルツの電波を割り当てている。審査に当たっては、競争を促すために「(割り当てを)申請している会社と役員など議決権ベースで3分の1以上の出資関係にある会社が、申請していないこと」などの基準がある。結果的に、今回のように割り当て後に買収して電波を獲得するやり方は、こうした基準の趣旨に反する。
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