17日にソウル市江南区の湖林博物館新沙分館で会った尹理事長は、崔淳雨館長について詳しく語った。崔館長とは手紙を170通近くやりとりし、尹理事長が文化財収集家として成長するに当たり「家庭教師役」を務めた。「崔館長は、淡泊で欲のない方だった。ある時、絵だったか書だったか、簡単なものを贈り物として差し上げたことがあったが、亡くなる前、国立中央博物館に私の名前で寄贈したという話を聞いた」
崔館長のアドバイスは、率直なものだった。買うべきもの、絶対買ってはならないもの、価格を交渉すべきものをはっきり区分した。「74年に崔館長が、シンプルだが韓国的な美に優れた青華白磁を『是非とも買うべき』と言ったため、4000万ウォン(現在のレートで約290万円)で購入した。ソウルの鍾路で小さなビルを買えるほどの金だった。どれほど気分の良いことだったか…」。それは、後に韓国の国宝第222号に指定された「青華白磁梅竹文壺」だった。
文化財の分野には上記の人物をはじめ、生涯かけて集めたコレクションを国立中央博物館に寄贈した東垣・李洪根(イ・ホングン)氏=1900-80=や崔永道(チェ・ヨンド)弁護士など、開城出身者が多い。少し前に、朝鮮時代末期の実学者、秋史・金正喜(キム・ジョンヒ)=1786-1856=の『歳寒図』を国立中央博物館に寄託し、50年間手入れをしてきた京畿道竜仁・安城の林野(時価1000億ウォン=約72億円)を国に寄贈したソン・チャングン氏(83)は、尹理事長のいとこに当たる。尹理事長は「古都・開城で育ち、おのずと文化財に関心を持つようになったのだろう。ほかの時代よりも、高麗時代の青磁や仏画、経典の方に愛着がある」と語った。
18日から湖林博物館新沙分館で開催される開館30周年特別展「湖林、文化財の林を歩く」では、名士が選んだ湖林博物館の名品30選、国宝・宝物46点と共に、尹理事長の秘蔵の作品10点など、合わせて約80点が展示される。期間は2013年4月27日まで。