日本の最大野党・自民党の安倍晋三総裁(写真)が、教科書検定の基準を改めるなど、いわゆる「愛国心教育の強化」を次期衆議院議員総選挙の公約に盛り込む方針を打ち出した。このため、安倍総裁が政権の座に就いた場合、日本の教科書の歪曲(わいきょく)がこれまで以上に深刻化するとみられる。
朝日新聞が24日報じたところによると、安倍総裁は23日、自民党総裁直属の「教育再生実行本部」の初会合を開き、次期総選挙の公約として示す教育政策について話し合った。この中で安倍総裁は「日本の伝統や文化を尊重し、愛国心を高めることとした改正教育基本法の精神が、民主党政権の発足後は十分反映されていない。教育再生実行本部を画期的な教育改革の原動力とし、論争を恐れることなく、活発な論議を繰り広げていこう」と主張した。また安倍総裁は「(自身の)選挙区である山口県の教科書には、(同県出身の)伊藤博文が『安重根(アン・ジュングン)に殺害された人物』という程度のことしか書かれていない」として、現在の教科書に対する不満をあらわにした。
安倍総裁はかつての首相任中(2006年)、1947年に制定された教育基本法を改正し、「国と郷土を愛する」という、愛国心教育に関する条項を盛り込んだ。文部科学省は同法に基づき、08年と09年には小・中・高校用の学習指導要領や同解説書を作成し「竹島(独島)は日本の領土」という主張を盛り込んだ教科書を誕生させた。今年3月に高校用教科書検定に合格した39種類の教科書のうち、21種類には独島に対する領有権を主張する内容が盛り込まれている。また、旧日本軍の従軍慰安婦をめぐっても、強制動員の主体についてあいまいにするなど、骨抜きにした。自民党の教育再生実行本部は、教科書の検定や採択について話し合う分科会を設置し、同分科会は改正教育基本法の趣旨に照らして教科書検定の基準の強化を図る意向だ。またこのほか▲教育基本政策▲いじめ問題対策▲高等教育の国際化▲教育委員会制度の改革―の計五つの分科会を設置した。
この日の会合で、自民党議員たちは「教育基本法の理念を反映していない教科書が検定で合格している」と主張し、安倍総裁もこれに同意した。同党の稲田朋美議員は「教育再生実行本部が戦後体制を変革する役割を担っていくべきだ」と主張した。今年末または来年初めごろに行われるとみられる衆議院議員総選挙では、自民党の政権獲得が予想されており、安倍総裁は事実上、次期首相候補とみられている。安倍総裁は、従軍慰安婦の強制動員を認めた河野洋平・元官房長官による談話など、過去の歴史について反省の意向を表明した歴代政権による談話の修正を主張している。