お別れ
妻は痛み止めを服用してから、だいぶ落ち着いてきましたが、薬が切れるころになると少し苦しくなるようです。とはいえ痛み止めは最小限に抑えたいので量を増やすなどはしたくありません。水をたくさん飲ませたいのですが、なかなか飲んでくれません。しかも痛み止めの効果で、寝ている時間が長くなり、水を飲ませられる回数も減ってきました。
起きても痛み止めのせいか朦朧としていて意識がはっきりしません。やはり痛み止めの服用は間違っていたのでしょうか? 私は医者に相談して痛み止めの服用を中止しました。
意識がはっきりして起きている時間が長くなったらまた水をたくさんのませようと思っていたのですが、薬が残っているのかなかなか目をさましません。
その後、今度は朦朧とした意識の中、妻は患部のかゆみを訴え始めました。私は痛みからかゆみに移ったということは、もしかしたら、がん患部が本当に壊死しはじめた兆候であり、希望が見えてきたと思いました。あとは意識がはっきりして体力が戻れば本当に治るはずです。
妻は、半分寝ぼけたような状態で、患部をかきむしるので出血が心配です。私は徹夜で妻の様子を見ながら、寝たきりで血液やリンパ液の流れが停滞しないように、全身をマッサージしました。この時点ではもう強い痛みはなくなったようです。
連日の看病で私も、さすがに疲れてきたので、私の姉に手伝いに来てもらいました。私は、少し妻の看病を娘に頼んで、少し仮眠を取るために横になりました。
でも30分くらいで、娘に起こされました。妻の呼吸が弱くなり、手が青く冷たくなってきたというのです。私は妻に一生懸命呼びかけました、若干の反応はあるもののもう返事を返す力もなくなったようです。残念ながらお別れの時が来たようです。
私は妻に、「今まで本当にありがとう、この世でのお別れだけどまた別の世界で会おうね」と泣きながら言い続けました。
まもなく妻は呼吸は止まりました。
人は生まれる時「おぎゃー」で息を吐いて生まれ、死ぬときは息を吸って亡くなるといいます。本当に妻は息を吸って亡くなりました。
私と娘と姉の三人は泣きました。人が息を引き取る瞬間に立ち会ったのは始めてです。涙が止まりません。私は一生分の涙を流したと思います。
その後、医師の死亡確認の後、その医師といろいろ話をしました。先生はカルテをみて、「抗がん剤治療をしなかったのですか?」と聞かれました。私は妻の体力的な不安で抗がん剤治療を拒否したことを説明したら、その医師は「正しい判断だったと思います」と言いました。
その医師は、緩和ケアを長くやっており、がん患者の最後を多く見てきて、やはり抗がん剤の問題を実感してきていると言っていました。
妻の今回の問題は、やはり基礎的な体力がなかったものだったと思います。妻は亡くなる数日前もしみじみと自分が今まで運動をしてこなかったこと、ほとんど体を動かさず筋肉のトレーニングなどもしてこなかったことを悔いていました。
なんとかがんを克服できる手ごたえはあっただけに、本当に残念です。
しかし、私も妻もこの一年弱、本当に一生懸命やってきました。そして最後の最後まで二人とも諦めていませんでした。本当に心が通じ合えた時間であり、お互いが労わりあい感謝しあった時間でありました。そして娘も私たち二人の様子をみて感じるところがあったようで、考えが変わってきて大人になったと思います。そしてさまざまな人から励ましや愛を頂きました。
間違いなく二人の魂は大きく成長したと思います。守護霊、守護神はこの物質世界の一生だけでなく、過去世から死んだ後のことまでを考え、その魂の成長と本当の意味での幸せを得るために私たちを指導していると思います。今回のこともこれですべて良かったと考えありがたく受け取りたいと思います。
このブログももう少し続けるつもりですが、私も少し体を休めようと思います。応援のコメントを頂いた方には本当に感謝いたします。
最後に、今まで妻といっしょにがんのことを調べ、妻の体でがんの症状を実際みて、やはりがんは治る病気であるということは強く言いたいと思います。
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お疲れさまでした。
毎日、仕事も続けながら看病は大変な日々だったかと思います。でも、キリボさんが仰るようにお二人にとってかけがえのない時間だったのではと思います。私も癌になり気づいたことは、病気になることは決して不幸でないということでした。旦那や、周りの人、食べれること、普通に暮らせること、小さな全てのことに感謝の気持ちがあふれ、不幸どころか幸福感で満たされてました。今は日常に戻りつつあり、また忘れかけてるのがよくないですが、治療の日々は充実感でいっぱいでした。心が動かされてたからだと思います。
奥様は、キリボさんの仰るとおり、治ると信じておりました。だけど、先生の話されるとおり、いい選択なさったのですね。奥様も、抗がん剤の治療に比べ苦しみも少なく、安らかに眠れたことと思います。抗がん剤をやらない選択は、治すためだけでないと思いました。私もたとえ、再発しても抗がん剤をしなかったことに後悔はしないでしょう。心を失わないために。最後まで、人として感動できるために。
自然に生きようと思います。
きりぼさん、大変な中、ブログを書き続けてくださり、ありがとうございました。今後も、楽しみにしております。
とりあえず、今はゆっくりと休んでくださいね。
投稿: ぬう。 | 2012年10月25日 (木) 12時57分