石ノ森章太郎「人造人間キカイダー」

オレンジアント

ミツコとマサルの姉弟は父の光明寺の研究所が爆発するのを目撃する。その研究所の焼け跡からは死体は出てこなかった。その事件を伝えるニュース。「多量の電気を使用しての実権が落雷を呼び、爆発を誘発したと見られています。なお、光明寺博士はロボット工学の権威として世界的に名が知られています」ミツコはそれは違うという。「昨夜の事故はギルという男に関係があるのよ。おとうさんの日記に書いていたわ」

日記の中身をマサルに説明するミツコ。「おとうさんは死んだ一郎兄さんの代わりに、人造人間を作ろうとしてたのよ」「一郎兄さんって、前のお母さんの子?」一郎は自然破壊警備隊の隊員で、死ぬ前に父に語っていた。「あの企業がその工場から吐き出す有毒ガスでほうぼうの自然を破壊しているその決定的瞬間をつかんだんです。絶対に許しません。僕は戦います」しかし、一郎は謎の死をとげ、そのショックで一郎の母も死んでしまう。光明寺は一郎は殺されたと信じる。「警察は誤って、崖から落ち事故死といった。くそ、こうなったら作ってやる。絶対に殺されることのない自然破壊警備隊員を。強い人造人間の戦士を」

マサルに説明するミツコ。「こうしておとうさんはロボットの研究を始めたのよ。でも研究費が足りなくて苦しんでいる時に現れたのが、ギル・ヘルバートという外国人。この男はやはりロボット工学者で大金持ちだった。おとうさんはギル博士の援助を受けた」「ところが、そのギル博士が悪いやつだったんだ」「ええ。でもおとうさんはそれに気づくのが遅かったのよ」月日は流れ、ギルの紹介で光明寺は再婚し、ミツコとマサルが生れる。しかし、その再婚した妻はギルのスパイだった。

光明寺は日記で語る。「滅びゆく動物や昆虫の姿に似せて作った13体のロボットも、どうやらギルはよからぬことに利用しようとしているらしい。ロボットは命令者の指令どおり動く。たとえ悪いことでも。私は妻に秘密で「良心回路」の研究を始めた。悪い命令には絶対に従わないロボットの心を作るのだ。私の態度から自分の正体がばれたのに気づいたのだろう。妻は家を出て行った。良心回路は間もなく完成する。これが完成すればギルに渡したロボットも役に立たなくなるのだ。そうなっては困るからギルは何か手を打ってくるに違いない」

そして昨夜ポストに入っていた手紙を読むミツコ。「完成した良心回路を新しい人造人間にとりつけた。ジローという名前だ。今夜初めてスイッチを入れたが失敗だった。やり直している暇はない。ミツコ、ジローに良心回路の設計図を持たせて逃がす。ジローを探し出して、良心回路を正常に動くように治してほしい。それができないなら破壊してくれ。ジローは一郎の形見の真っ赤なギターを持っている」

ジローを探そうと外に出たミツコはサイ形ロボットに襲われる。ミツコを助けるジローであったが、突如頭を抱えたかと思うと、ミツコの首を絞めはじめるが、サイ形ロボットに襲われる。光明寺からの手紙を思い出すミツコ。「ジローを戦闘ロボットにチェンジするのは両肩のスイッチをオンにすればよい」ジローに呼びかけるミツコ。「ジロー。両肩にあるスイッチを入れなさい」ジローは人造人間に変身して、サイ形ロボットを撃破する。その変身した姿は左半身が機械がむき出しになっているという奇妙なものであった。

戦い終わって、ジローの体の中身をジローに説明するミツコ。「問題の良心回路は不完全なので、取り戻して直さなければならないの。その設計図はあなたに持たせたというんだけど、どこにも見当たらない。ね、もう一度考えてみて」「わからない。覚えていない」「あの時、あなたは突然狂い出して、あたしの首をしめた。戦闘ロボットに変身した時、体の左右がアンバランスだった。それがきっと良心回路の不完全さのせいなんだわ。だから、どうしても直さなきゃならないの」

いいことがあるというジロー。「あなたの良心回路を取り出して調べればいいじゃないか」「あたしは人造人間じゃないの。こうやって普段のジローの姿を見ていると、人間そっくりで区別できないけど」「ねえ。ミツコさんと僕はどこが違うの」「わたしは人間という生物よ。ジローはおとうさんの作った人造人間。機械なの。でも、よく考えてみれば、人間の体も精密な機械と同じかもしれないわ。あたしは生身というだけで。それもジローのように人工の細胞から作りだした肉や皮膚や筋肉を持っているすぐれた合成人間なら、人間と同じと言ってもいいのかも」「ミツコさんの柔らかくて暖かい体。僕は好きだ。僕は機械なんだ」

ギルはカマキリ型ロボット・グリーンマンティスにジローを抹殺するよう命令する。人造人間に変身するジロー。「変形する。俺は機械だ。貴様と同じ機械なんだ」「キ、キカイダー」戦闘を繰り広げるグリーンマンティスとキカイダー。「お前は機械だな」「そう。光明寺博士に作られた機械」「なんだって、それじゃあ僕と兄弟じゃないか」「兄弟知らない。お前を壊す命令を受けた」「誰の命令だ」「博士」「え、光明寺博士か」キカイダーは戦意を喪失して戦いの場から去る。

つぶやくミツコ。「はやく、良心回路が正常に作動するようにしてあげなくては。あたしにできるのかしら、もし、できないなら、ジローはおとうさんの言うように破壊しなくては。悪用されないようにあたしの手で壊してしまわなくては」それを聞いてショックを受けるジロー。「ミツコさんが僕を壊すと言った」バイクに乗るジロー。「待って。ジロー、どこに行くの」「みんなが僕を壊そうとする。なぜなんだ」

校庭で生徒たちが倒れる。それを見て、くくくと笑う男。その男に話しかけるジロー。「頭の中に不思議な笛の音のようなものが流れ、僕に悪いことをさせようとすると、必ずそばに兄弟がいるんだ。機械の体の人造人間がいるんだ」「くくく。このわしが人造人間というのかね」生徒たちは救急車ではこなれる。「あんたがやったのか。あの子供たちに何をしたんだ」「くくく、あのガキどもは今はやりの光化学スモッグにやられたんだろうさ。用がなければもう行くぜ」「待て」

男の後をつけまわすジロー。「いつまでつける気だ」「あんたが正直に答えてくれるまでだ」「正直になんと答えればお前は満足するんだ。俺がお前と同じ人造人間だということか。光明寺博士に作られた機械人間だということか。それとも、俺があの学校のガキになぜあんなことをしたということか」男はオレンジアントに変身する。光明寺博士はどこにいるとオレンジアントに聞くジロー。「なぜ、僕やあんたに悪いことをさせるんだ」「悪いことってなんだ。俺は命令されたことをやるだけだ」

そして笛の音に悩まされるジロー。勝ち誇るオレンジアント。「指令が来た。お前を壊せと」ジローはキカイダーに変身する。「やめろ。オレンジアント。あんたと僕は兄弟だ。こんなことをしてはいけない。命令を聞いちゃいけない」「貴様の電子脳は狂っている。命令には絶対に従わねばならん。あの新しい毒ガスの実験もそうだった。命令には絶対従うこと」「毒ガス?」「あの子供たちに吸わせた毒ガスよ。騒ぎを大きくしていろんな会社や工場を非難させる。そうやって競争会社をつぶしていくんだとさ」

「誰がそんなことを言った。おとうさんがそう言ったのか」「ギル博士だ。俺たちの造物主、光明寺のボスさ。二人とも同じ穴のムジナだと言ってたよ」「嘘だ。光明寺博士は違う。それじゃ、なぜ僕の心に悪いことはいけないと教えてあるんだ」「だから貴様の機械は狂ってると言うんだ。不完全なんだ」「う、嘘だ。狂ってるのは貴様のほうだ」逃走するオレンジアント。「お前は狂ってる。俺を壊すことは悪いことじゃないのか」考え込むキカイダー。「僕の兄弟を壊すことは悪いことなのか?僕は不完全な人造人間なのか?」

 

ゴールデンバット

ミツコのもとに戻るジロー。「ジロー。どうして出て行ったの」「だって、君は僕を壊すと言った」「違うのよ。あたしはジローを治したいだけなの」「治す?僕が狂っているから」「ええ。ある意味そうかも」「やっぱり、そうだったのか」「ジロー、あなたはピノキオなのよ。神様に生命をもらったお人形。女神はそのときコオロギのジェミニイをピノキオの良心に任命した。ジローの体の中にも良心回路というコオロギがいるんだわ」「……」

「ところが、その良心回路は不完全で、そのためジローは時々悪の誘惑に負けてしまう。でも、その良心回路が壊れてしまったら、ジローは悪いことでもなんでも命令に従って動くだけの本当の機械人形になってしまうの。このままではそうなる危険性が大きいわ。だから、一刻も早く修理したかったのよ」ミツコはジローの服を脱がせる。「まず良心回路の設計図を探さないといけないわ。洋服にはこの前探したけどなかった。とすれば、体のどこかだと思うのよ」

しかし悪魔の笛がなり、ジローはキカイダーに変身して、グリーンマンティスと戦う。可哀そうなジローとつぶやくミツコ。「良心回路というなまじ人間に近い心をつけたために、悩むことになってしまったんだわ。誘導笛の指令と戦う良い心と悪い心の悩み。兄弟同志で戦わなければいけないための悩み。その苦悩が人間型から戦闘型ロボットにチェンジするとき、体の半分を不完全なまま残してしまうんだわ。ハーフチェンジさせてしまうんだわ。善と悪の二つの心がジローの体を引き裂いている。あの体はジローの苦悩の姿なんだわ。一刻も早く良心回路を完全にしてあげなくては」死闘の末、グリーンマンティスを倒すキカイダーであったが、鏡で自分の醜い姿を見て愕然とする。「僕は化け物だ」

キカイダーが戦っている隙に、黒マントの怪人がミツコをさらう。とうとうと語る黒マントの怪人。「お前さんをこんな目にあわせてすまんと思う。しかし、目的のために手段を選べんと言うからなあ。お前さんをここに置けば、あいつは必ずやってくる。あいつにもお前さんにも恨みはない。が、ボスの命令なら、どんな仕事もやらざるを得ない。人造人間には命令の拒否権などないんだ。ところが光明寺博士はジローに命令の選択権を与えてしまった。わたしのボス、ギル博士はそれが気に食わない。人間の奴隷として作られた機械のくせして、造物主の命令に背くとは許されん。ジローをこわせ、良心回路を持っているキカイダーを破壊せよ、というわけだ。とにかくジローは人間でも機械でもない中途半端な存在になり、そのどちらにも属せない哀れな代物になってしまった」

泣くミツコ。「そうか。ジローに同情したか。同情してもどうにもならない。人間の同情など機械には何の役にも立たないんだ。どうやらジローはお前さんを好きになりかかっているらしいが、お前さんにはその愛は受け入れられない」「そんなことないわ。ジローが愛してくれるなら、あたしだって」「笑わせちゃいけない、お嬢さん。人間に機械は愛せない。同情はできるが、愛することはできない。その同情だって間違った心から生まれたものさ。人間の身勝手から生まれたものだよ。良心回路を治したいと思うにはジローのためじゃなく、お前たち人間の為だ。それに人間に人造人間に良心を期待す資格などないんだ。人間の持っている良心などあてにならない」「……」

私も光明寺博士の実験の犠牲者だ、という黒マントの怪人。「光明寺は私の体にも良心回路をつけたんだ。そいつはジローのものよりもっと不完全だから、良心なんてものに悩まされる時間は短くて済んだものの、それでも随分苦しめられた」「……」「コウモリの話を知ってるかね。鳥と獣の間をふらふら飛び回って、どちらにもいい顔して、あげくのはてにそのどちらからも爪はじきにされたみじめな動物の話だ。鳥たちの昼も獣たちの夜にも出歩けなくなって、夕暮どきしか世間に出れなくなった日和見主義者」「……」「光明寺はそれを見越したのか、この私をそのコウモリに似せて作りやがった。見ろ」コウモリ型ロボット、ゴールデンバットに変身する黒マントの怪人。「俺は光明寺の単なる科学的好奇心。冷たい科学者の心が生みだした怪物なのだ」

ゴールデンバットはミツコをある部屋に閉じ込める。「お前さんには気の毒だが、この部屋でジローに一緒に死んでもらう。お前さんはジローを愛していると言った。その言葉が真実かどうかわかる、心の底から愛し合っているのなら、一緒に死ぬのはむしろ喜びのはずだからな」ミツコの呼ぶ声を聞いて部屋にはいってくるジロー。部屋は赤い液で覆われていく。「死ね。血の池地獄でじわじわと。この血はどんなものでも溶かしてしまうんだ」ミツコはジローに変身して、と頼むが、ジローは拒否する。「僕は二度と戦闘ロボットには変身しない」「どうして。あなたが戦闘ロボットに変身して、壁を破らないと、あたしたちは死んでしまうのよ」「それでもかまわない」「ジロー。自殺するつもり」

くくくと笑うゴールデンバット。「自殺か。それもまたジローが人間に近いせいだな。機械が人間を愛し、そこに越えられぬ愛があると知ったとき、まともな機械なら死にたいと思わないが、不完全な心を持ってしまったジローは」「うるさい。そんなことじゃない」「心中しようと言う気がないなら、なぜ逃げ出す努力をしない。私はお前と能力の限りを尽くして戦いたいと思っているのだ」ゴールデンバットを嘲るミツコ。「なにが能力の限りを尽くしてよ。あなやはただおしゃべりなだけの卑怯なロボットなんだわ」

赤い液体を止めるゴールデンバット。「ジロー、外に出たまえ。一対一で勝負しよう。そのお嬢さんにロボットでも誇りにあることを見せてやろうじゃないか」一対一で勝負するゴールデンバットとジロー。しかしジローはキカイダーに変身しない。「ミツコさんの目の前で二度とあんな醜い姿にはなれないんだ」そしてジローは変身しないで、ゴールデンバットを破壊する。喜ぶミツコであるが、ジローはバイクに乗って走り去る。「ミツコさんには僕の心なんかわからないんだ」

 

サンダードク

少年が車にダイナマイトを仕掛けるのを目撃するジローは、その少年が爆発に巻き込まそうになるのを助ける。その少年は足が悪くて走ることができなかった。俺は自動車が憎いとジローに言う少年。「一年ほど前に、新聞配達の帰りに自動車にひき逃げされたんだ。だから俺はやってやるんだ。工事現場から盗み出したダイナマイトを使ってよ。今ので五台めだ。これかももぶっこわしてやる」「いいことじゃないね。人のものを壊すのは悪いことだ。それに自動車だって、機械だって、壊されるのは嫌だと思うよ」「へへ。自動車が嫌がったりするかい」

「嘘じゃない。機械だって心があるんだ」「それじゃなんで俺の足をこんなにした」「機械が悪いんじゃない。機械を動かしている人間が悪いんだ。機械はそれを使う人によって、良くも悪くもなるんだ」「とにかく、俺は片っ端からぶっこわす」「その元気を悪いことじゃなく、いいことをやってみせればいいじゃない。そのほうがずっとみんなが喜ぶと思うけどね」「俺は足が不自由なんだ。完全じゃないんだ。俺はもう野球ができないんだ。この足さえちゃんとしてれば、お前みたいに飛んだり跳ねたりできたかもしれないのに」「あんなことは、僕が機械だからできるんだ。あんなことするより、できなくても人間のほうがずっといい。それに僕だって完全じゃないんだ」キカイダーに変身するジロー。「でも、僕は絶対に悪いことはしない。さようなら」

ジローをサングラスの女が操る魔犬サンダードグが襲う。何とか傷つきながらも逃げるジロー。サンダードグに命令するサングラスの女。「電磁牙がなくても、追跡装置はきくだろう。絶対に見失うんじゃないよ。あいつは今片足と片腕の人造人間になってるんだがね」少年に杖を与える白髪の紳士。「遠慮することはない」「でも」「これはいろんな仕掛けがついているんだ。このボタンを押すと光線銃が出る。これさえあれば、爆薬などなくても自動車をふっとばせる」「え」

「さっきの人造人間との話は全部聞いた。あいつは不完全な人造人間なんだ」「あんたは誰だ」「あの人造人間を作った科学者だ。実は完成する前に逃げられ、あとを追っていたんだ。まったく不完全な機械というものは始末におえない。君の機械を憎む気持ちはよくわかるよ」「……」「どうかね。君の足。あの人造人間のように飛び跳ねるように、わたしに直させてくれないか」「え」

ジローの前に現れる杖を持った少年。「君を待っていたわけじゃないよ。僕んちはこの近くなんだ」「新しい杖だね」「ああ。いい杖だぜ。見せてやろうか」杖から光線銃が発せられるがジローは危うくかわす」「誰にこんなものもらった。誰に僕を殺せと」「し、知らない。ただ、そうすればちゃんと足を直してやるからって」ジローは少年の靴にしかけられた爆弾を遠くに投げる。「僕を殺せと命令したやつは、君を一緒に殺すつもりだったんだ」

少年を殴るジロー。「やめろ。僕は右足が動かないんだ。健康な足が欲しくてやっただけなんだ。そんな僕にこんなことをするなんて。やっぱりお前は冷たい機械なんだな」「甘ったれるな。それじゃ機械でも心のある人造人間を平気で殺そうとする君は冷たくないのか。それに君は僕を殺す手段に友情を利用しようとした。君は確かに不完全だ。足ではなく心が。僕と戦え。君はもちろんかなわない。君は死ぬ。それは自業自得だ」「そんな」「なぜだ。なぜ生命が惜しい。自分の生命だからか。他人の生命からかまわないというのか。誰の生命でも生命の尊さには変わりはないはずだぞ」「……」「行け。臆病者。命が惜しかったら、さっさと僕の目の前から消えてしまえ」驚いて立ち上がる少年。「あ、俺、杖なしで立っている」にこっと微笑むジロー。号泣する少年。

赤面するジロー。「僕はあんなエラそうなことは言えないんだ。僕だってこの体をひがんでいたもん」キカイダーに変身するジロー。「堂々と、この姿でミツコさんの前に行こう。そして素直に壊れた腕と良心回路を直してもらおう」キカイダーが帰ってきて喜ぶミツコ。「お帰りなさい、キカイダー」「コードを一本焼き切られたんです。それで治してもらおうと思って」「あら、ちょうどいいかたが見えているわ」現れる白髪の紳士。「黒川博士というお父さんの友達よ。やっぱりロボット工学の教授なの」

黒川博士はまずキカイダーの腕を修理し、良心回路にとりかかろうとするが、キカイダーは良心回路は不完全でもかまわないと言い出す。「僕は一人で人間と同じように自然に良心回路を完全なものに近づけていきます。そう成長するように努力したいんです」「馬鹿な。機械が成長するはずない」「あなたは良心回路を治したいんじゃない。壊したいんだ」黒川博士は笛を吹こうとするが、キカイダーはそれを阻止する。「僕の良心回路を狂わせたのはこの笛だったのか。するとあんたはギル博士だな」「む、この不完全な機械めが」黒川博士の化けの皮をはがすキカイダー。

そこに現れる魔犬サンダードグをパンチ一撃で破壊したキカイダーはミツコに迫る。「あたしは、マサルを人質にとられて」「嘘だ。ミツコさんはキカイダーなどと呼ばない。ジローと呼んでくれるんだ。ミツコさんの姿で嘘をつくのはやめてくれ」ミツコの化けの皮をはがしたキカイダーは、その場を立ち去る。うめくギル。「助かった。光明寺のやつがアシモフのロボット三原則を回路に組み込んでくれたおかげで」

ミツコとマサルは北海道にロボットが現れたという噂を聞いて、北海道に飛んでいた。灰色熊のロボットが現れたと聞く二人。「熊に似てるロボットなら、ジローじゃないね。ギル博士の悪ロボットだ」「そうらしいわね。でもギル博士のロボットがいるということは、ジローを追ってきたのかも」二人は山中で巨大熊に出くわすが、そこに双子が現れる。「大丈夫だよ」「こいつはおれたちが飼っているおとなしい熊だから」しかし地元民は熊ならみな撃ち殺してもいいと巨大熊を撃ち殺そうとする。怒った双子は合体して灰色熊ロボットになり地元民を追い払う。

灰色熊ロボットは再び双子に戻る。「お前たちは光明寺博士のお嬢さんとその弟だ。俺たちも光明寺博士に作られた。だから君たちとはいわば兄弟になる。まさか兄弟は殺せまい」「ありがとう」「命は助けてやる。でも、ここから帰してやるわけにはいかないぜ。俺たちの正体を知られたからにはな。まだまだ正体を隠したまま、することが残っているんでな」「あたしたちをどうするつもり」「一緒に隠れ家に行ってもらう」

 

ヒトデロイド

ミツコに説明する双子ロボット。「日本でも一、二に数えられる巨大産業が、東京近郊の工場ぐるみ一挙に、北海道のこの一帯に移転する計画を持っている。ひとちの市や町が人間ぐるみ移動するという途方もない計画だ。いざ連中が動きはじめたら、この辺の土地は膨大な値上がりをするだろう。この辺の土地を持っていれば、あっという間に大金持ちになれる。俺たちのボス、ギル博士の狙いはそこにある。怪物熊の噂でこのあたりに住んでいるやつらを追い払い、二束三文で土地を買い占める。それをその巨大産業に売りつける」

北海道にやってきたジローはキカイダーに変身して、灰色熊ロボットと戦うが、ミツコはやめてと叫ぶ。「あなたたちはどちらもあたしのおとうさんが作った兄弟なのよ。お願い。争うのはやめて」しかし戦いは続き、勝負はキカイダーの勝利となり、双子ロボットは大爆発する。キカイダーをののしるミツコ。「バカバカ。あんなに頼んだのに、どうして戦ったのよ」無言で空中を飛ぶキカイダー。(なんだい。ミツコさんは、僕ばかり悪いように言って。そうか、ミツコさんは僕が嫌いなんだ。この醜い体が)

夜中に巨大な黒いヒトデのようなものが空中に浮かびあがり、そこから発せられた光線で、二人の警官が殺される。そこを通りがかったジローは殺人犯と疑われる。弁解しようとするジローの耳にサングラスの男の奏でる口笛が聞こえる。途端に凶暴になり警官を投げ飛ばし、街路灯をへしぬき、宝石店から宝石を奪い高笑いを浮かべるジロー。にやりとするサングラスの男のそばに現れる空中ヒトデ。

「ヒトデロイドか。そっちの首尾はどうだ」「上出来だ。ハカイダ―。宝石店二軒、たんまりいただいてきましたぜ。ついでにキカイダーも溶かしてやりましょうか」「余計なことをするな。貴様は命令されたことだけしてればいいんだ。あのキカイダーは、あいつの弟、サブロウが、ハカイダー様が破壊する。それが俺に与えられた使命なのだ」

強盗傷害犯人がジローだと聞いて驚くミツコ。「それは何かの間違いですわ」「殴られた警官二名の証言があるのですぞ」「でも、ジローはそんな悪いことをするはずは」そこに写真が送られる。そこに写っているのは血まみれの光明寺博士とキカイダーであった。「人造人間ジロー、キカイダーは危険なロボットだ。ただちに全国指名手配で見つけ次第いかなる手段を使っても破壊するんだ」

我に返ったジローはポケットが宝石でいっぱいなのに驚く。警官に追われビルの屋上に逃げたジローを嘲笑うサングラスの男。「とうとう、おたずね者に成り下がったか、ジロー」「お、お前は」「貴様を破壊するためにこの世に生れてきた男だ」「む」「よしな。貴様にはこの俺は壊せない」「え」「俺の名はサブロウ。貴様の弟だ。そして、貴様の父親でもある」「え」「なぜなら、この俺の頭部には俺たちを作った光明寺博士の脳がおさまっている」変身するサブロウ。「それがこの俺だ。ハカイダ―様だ。ははは」

ハカイダ―を前につぶやく光明寺博士。「ハカイダ―。恐ろしいロボットだ。お前がもしこのままの形で完成したら、キカイダーの恐ろしい死の使いになるだろう。そんなことはさせない。ギル博士に渡されたお前の設計図に私は手を加えた。そう。良心回路を組み込めるスペースをあけたんだ。だから、あとはなんとかここを脱出して、ジローに預けてある良心回路の設計図を見てきて、それをお前の頭の中にこっそり組み込めば、お前はサブロウになる。ジローの弟サブローとなり、ギルの一味と戦うことになる」

光明寺は警備が薄くなったのを見て逃走するが、その様子をギルはモニタリングしていいた。「ふふふ。ハカイダ―の完成が間近になったら、多分逃走するだろうと思ったから、わざと逃がしてやったとも知らずに。良心回路の設計図さえ手に入り、それを焼き捨ててしまえば、あとはもうこっちの天下だからな」自宅に向かう光明寺博士。それを脱走したと勘違いしたヒトデロイドは光明寺を捕まえて、ギルの基地に戻る。そのあとを追うキカイダー。

ヒトデロイドに激怒するギル。「このうす馬鹿ロボットめ。こうなったら計画変更だ。大至急、光明寺博士の頭脳をハカイダ―に移植しろ」そして手術は終わる。「よし。キカイダーを中に入れろ」キカイダーは部屋にはいるが、そこには光明寺博士の死体があるだけであった。キカイダーは光明寺を助け起こそうとするが、罠だと気付き急いで部屋を出るが、その様子は写真に撮られていた。

キカイダーはハカイダーとの戦いを避けるため逃走する。「ダメだ。お前とは戦えない。戦えば光明寺博士の頭脳を傷つけてしまうんだ」ミツコのところに逃げ込むキカイダー。「ミツコさん。助けてください。良心回路を早く治して」そこにサブロウの口笛の音が。ハカイダ―はミツコの首を絞める。驚くマサル。「ジローの人殺し」頭を抱えてハカイダ―に戦いを挑むキカイダー。「貴様。俺の頭に光明寺の脳がはいっているのを忘れたのか」「ううう」「いかん。電子脳を狂わせることは敵味方の区別もわからなくしてしまうんだ」

ハカイダ―にはキカイダーの両腕をへしおる。「本当は無傷のまま連れていきたかったんだがな」キカイダーを担いでギルの基地に戻るハカイダ―は、ロボット医者にキカイダーを元に戻せと命令する。「なぜだ。こいつはこれまで我々を悩まし続けた敵なんだぞ」「今は違う。俺の口笛で自由にコントロールできるただのロボットにすぎん。それに、これだけの優秀なロボットをこのままにしておくのは、ボスだってもったいないと言うぜ」「そう、そのボスの指示がないと。ボスは今留守だから」「この俺の命令は聞けないというのか。キカイダーの処置に関しては、この俺がすべてをまかされているのを知らんのか」「わかったよ。やるよ」

ミツコは一命をとりとめ、ほっとするマサル。悲しむミツコ。「まあ信じられないわ。ジローがあんなことをするなんて」キカイダーの修理をほぼ終わらすロボット医者。「あとは動力解放スイッチを入れれば終わりだ」そこで待て、と言うギル博士。「スイッチには手を触れてはならん。ハカイダ―。お前はキカイダーをコントロールして、ミツコを殺させたそうだな。本当か」「この俺が嘘をついているとでも」「確かに首を絞めたかもしれん。だが、ミツコは死んでおらん。なぜだ。キカイダーの力なら、小娘の首の骨などひとたまりもないはず。それなのにミツコは生きている」「……」

「その答えは簡単だ。お前の口笛より、良心回路のほうが強力だったからだ。だからキカイダーは意識の底で手加減した。それと同じことがお前にも起った」「む」「お前も意識の底で光明寺の心で行動した。飾り物だったはずの光明寺の脳がお前をコントロールしたのだ」「まさか」「間違いない。だからこそお前はキカイダーを完全に破壊せず、また元通りに修理させたのだ」電撃ショックをハカイダ―に浴びせるギル。「よし。ハカイダ―の頭部から光明寺の脳を取り出すのだ」

余力を振り絞って動力解放スイッチを押すハカイダ―。再生したキカイダーは大暴れし、ギル博士に問い詰める。「光明寺博士の冷凍保存死体はどこだ」「地下四階のD冷凍室だ」「よし、死体をここに持って来い」届けられる死体。「では、はじめてもらおうか。ハカイダ―の頭部から光明寺博士の脳を取り出して、元へ戻すんだ」「しかし、さっきあれだけの電撃ショックを受けたから、元に戻るかどうか」「とにかくやってみてください」そして手術が終わり、キカイダーは光明寺博士の体を抱えて、ギルの基地から脱出し、ついでにギルの基地も破壊する。

 

ガッタイダー

岡部と川本という二人組が調査のために栗ノ木村にやってくる。「何百年も死火山で絶対に爆発しないというゴマスリ山が噴火した」「おかげでこっちはその付近の村の調査」栗ノ木村には誰もいなかったが、二人はやっと若い娘と少年に会うことができる。「君たち、この村の人だね。みんなはいったいどうしたんだい」「いいえ、あたしたち違います。あたしたちも今、山を下りてきたばかりで何も」

そこに現れるキノコ人間たち。岡部と川本はなんとか逃走する。「あの子たちは」「逃げたと思うけど」ほっとする二人の前に現れるサングラスの男。「あんたたちに聞きたいことがある、この近くで若い女の子と小さな男の子を見なかったかね」「あ。それなら見た。でもそこには行かないほうがいいよ。キノコの化け物がいるから」「あれを見たのか。それじゃ気の毒だが、生かして山をおろすわけにいかんな」

サングラスの男はハカイダ―に変身する。そして四人のハカイダ―に取り囲まれ、岡部は射殺され、川本は崖下に転落する。「むう」「下に降りて調べるか」「いいや。ここから落ちてはどうせ助かるまい。それより、あの子を早く見つけねばならん。それとあの村の連中だ。何とか始末せんと面倒なことになる」そして九死に一生を得た川本であったが、キノコ人間に変身して病院に担ぎ込まれる。

ニュースで栗ノ木村とゴマスリ山の異変を知り、顔色を変えるジロー。「あのギル博士の基地があったあの山だ。まさか基地を爆破したために、噴火を誘発したのでは。だとすると、僕はとんでもないことをしたことになる。光明寺博士もいまだに意識不明だ。手術のあと、すぐ激しく動かしたせいかもしれない。どれもこれも僕が間抜けだからなんだ。やっぱり僕は不完全なロボットなんだ。とにかく、あの山に行ってみよう」

栗ノ木村でキノコ人間を見つけて驚くジロー。「あなたは誰だ。その顔はいったいどうしたんです」「その化け物をどうするつもりだね。キカイダー」「ハカイダ―」そこにはキカイダーが四人立っていた。「ハカイダ―四人衆と呼んでもらいたいね。キカイダージロー」「お前はサブロウ?」「違う。俺はもうお前の弟分でもないし、光明寺でもない。俺はギル・ハカイダーだ」

「ギル?それじゃその頭脳に入っている脳は、ギル博士の脳なのか。でも、どうして」「とぼけるな。お前が基地をめちゃくちゃにして、俺の体を使い物にならなくした。だから、俺は俺の脳だけをこのハカイダ―の体に移植した。未来永劫生きるために。後ろの三体もあの爆発で死にかけた俺の幹部たちの脳が入っているのだ。俺たち四人は人呼んでハカイダ―四人衆」「しかし、あのとき基地は完全に破壊したはずだ。おまけにあの爆発が噴火を誘発したから」

「ふふふ。貴様は綺麗にぶっこわしてくれた。もっとも証拠を消すために、あとから山を噴火させたのは俺たちだかな。我々はあんな基地のひとつやふたつなくても平気なのさ。秘密基地はたくさんあるんだ。ダークの組織は不滅なのだ」「そうだったのか。それじゃ山が噴火したのは僕のせいじゃないんだな」「ふふふ。それが気になって貴様はここへ身に来たのか。良心回路がまだ働いているわけだ。その良心回路がショートしてしまいそうないいことを聞かせてやろう。後ろを見ろ」

キノコ人間を見つめるジロー。「その化け物はあの村の住人の一人だ。貴様が基地を爆破したとき、研究室で研究中だった細菌がふっとんで、そのためにそんな姿になったんだ。村人を化け物にしたのは貴様のせいなんだぞ」「まさか。そんな」「とにかく、証拠は全部消さなければならん。その化け物をこっちに渡すんだ」「ダメだ。この人は病院に連れて行く」「キカイダー。まだいろいろやらなければいかんことがあるから、今日は見逃してやろうと思ったが、邪魔をするのなら」

圧倒的攻撃力でキカイダーを追い払うハカイダ―四人衆。ぼろぼろになって戻ってきたジローに目を見張るミツコ。「博士の具合はどうですか」「気が付いたわ。それで、あなたを探していたのよ」「そうですか。よかった。これで僕も完全な体にしてもらえる」「でも、どうしても良心回路の設計が思い出せないんですって」「え」「でも心配いらないわ。設計図はジローの持っているギターの中に隠したって」しかし、そのギターはギルとの戦いのうちいつか焼失していた。

ハカイダ―四人衆が現れたことを光明寺博士に告げるジロー。「飛騨奥山、ミミズク寺」いってまた眠ってしまう光明寺。さっそく飛騨奥山のミミズク寺に赴くジロー。そして仏像の中から自分によく似たロボットが出てきて驚くジロー。「お前は誰だ」「お前こそ何者だ」「僕はジロー。キカイダー」「僕はイチローだ。キカイダー01」いやっほーと喜ぶイチロー。「あなたも光明寺博士に作られたんですね」「そうだ。お前もだな。俺たちは兄弟なんだ」「あんたは兄さんで僕は弟。光明寺博士は兄さんのことを言おうとしたんだ」

キカイダーとキカイダー01に語る住職。「キカイダー01。お前はわしが閉じ込めておいたのじゃ。わしも元々はロボット工学をやっておった。光明寺はわしの教え子での。が、あるとき感じることがあって、仏の道に入ったのじゃ。今の人間は機械を正しく使いこなす精神が備わっておらんと考えたのじゃ。機械を善の方向のみに使うには、人間の精神は幼すぎる。じゃからこそ、わしは光明寺がこのキカイダー01を作ったとき、ここへ隠しておけと言ったのじゃ」「……」

「それなのに光明寺め。またお前を作ったのじゃな」「光明寺博士は和尚様の言うことを聞かなかったわけじゃありません。悪いことに利用されないようにと、僕には良心回路を組み込みました。もっともそれを完全なモノにする前に、ダークというロボットを悪用する組織に邪魔されました」キカイダー01は自分には良心回路はないという。「でも、僕らは間違いなく兄弟だ。お前が本堂にはいってきたとき、ピンと感応した。だから仏像をあけて出てきたんだ」

寺に若い娘と男の子が逃げ込んでくる。そして現れるハカイダ―四人衆。イチローは若い娘と男の子を連れて逃走する。追うハカイダ―四人衆の前に巨大な貝殻のような者が現れる。この貝殻は手ごわいと見た四人衆は合体して、ガッタイダーとなって攻撃するが、貝殻はびくともしない。「くそ。これだけの力で殴っても蹴飛ばしてもかすり傷ひとつつかん。いったいこいつは何でできているんだ」その間に逃走するイチロー。「化けもんは化けもん同志でやってもらいましょう」

 

シャドウ

若い娘は男の子の名前はアキラというとイチローとジローに言う。「お父様はギル博士という科学者なんです」「え」「あたしはこのアキラ君が生れた時から、ずっとお母さんの代わりに世話してきました。あたしはリエコ。もと看護婦です。この子が私の勤めていた病院で生まれたとき、この子のお母さんは死んでしまったのです。私はそのまま雇われて。今では本当に自分の子のように」

ジローに聞くイチロー。「あのハカイダ―のボスの頭部にギルの脳みそがはいってるんだよな」「うん。そうなんだ」「すると、奴は自分の子供を取り返したくて、追っかけてきたわけだ。なら、何も危ない目に会わなくてよかったんじゃないか。あの坊主はもともとあいつが作ったんだから、今度来たらホイホイと」それはいけないというリエコ。「私は聞いてしまったんです。ギル博士が言った恐ろしい言葉を。この子の体の中に世界中を支配できる最終兵器の設計図が密かに隠してあるんだ、と。あのかたはこの子を追ってくるのは、そのためだけなんです。決して愛情からなんかじゃないんです。本当に愛情があるものなら、実の息子の体にそんなむごいことをするものですか。だから、あたしは基地が大騒ぎになった隙に逃げ出したんです」

ミツコのところにリエコとアキラとイチローを連れて行くジロー。ミツコはヨーロッパに行くという。「おとうさんの容態があまりはかばかしくないものだから、おとうさんのお友達のいるヨーロッパに静養に行こうと思っていたの。ジロー、あなたも一緒に」「行けません。僕は」「そうよね」「僕にはアキラ君のお父さんのギル博士をあんな姿にさせてしまった責任もあります。それに01には僕のように良心回路がついてませんから、不完全なものでも、僕が01の良心になってあげなくては。本当は僕だってミツコさんと別れるのはとても」「……」

ハカイダ―四人衆はガッタイダーとなりキカイダーと01に戦いを挑む。キカイダーはガッタイダーの頭部に集中攻撃して、ガッタイダーをバラバラにする。バラバラになった体の部品の良好なものが結集して、なんとか一体のハカイダ―となる。「くそ、四体の無事な部分を集めてやっと一体か。畜生、キカイダーめ、01め。今に必ず貴様たちをやっつけるぞ。わが陣営を立て直し、アキラを取り戻し、世界をこの手で握って見せる」

話し合うジローとイチロー。「ハカイダ―は倒したが、それで心配が消えたわけじゃない。むしろ、兄さんの言う貝殻の化け物の正体が皆目つかめないだけに」「お前は心配性だな。ジロー。どうせそのうち現れるさ」「そいつらの目的だが、やっぱりアキラ君を狙っているのだろうか」「もちろんそうだよ。リエコって娘の言うことを信用すればだが。アキラの体に隠されているという最終兵器の設計図をな。そうだ。アキラの体にどんなふうに設計図が隠されているのか。あの坊主をたたき起こして、いっちょう調べてみようじゃないか」「だめだよ。今は真夜中だよ」

真夜中に巨大ロボットが現れる。駆けつけるイチローとジロー。「くくく。来たか。キカイダー、01」「なんだ貴様は」「わからないか、01。わしはあの森でお前さんたちを助けたものだ」「なに。あの貝殻の化け物の仲間か」「さよう。我々は人間の影の組織。シャドウのものだ。あの子供をもらいうけにきた。ダークなる科学者集団がこざかしくも開発した最終兵器の設計図。これが作られると我々のこれからの仕事がいささかの邪魔となるのでな。くくく」「誰が貴様なんかに」「そうだ。あの子は絶対に渡しはしない」

キカイダーと01はシャドウのロボットに戦いを挑むが、相手の圧倒的パワーに押され、01は右腕を失う。ジローはイチローの右腕を地下の研究室で修繕し、リエコに笛を渡す。「僕たちは明日の朝まで地下の研究室にいますが、戸締りは厳重にして絶対に外に出ないでください。そして、もし何かあったらこの笛を吹いてください。すぐ駆けつけます」「いろいろ優しくしてくださって、ありがとうございます。ミツコさんがあなたを好きだったのがよくわかりますわ。あたしだって、とてもあなたがロボットとは思えませんもの」赤面するジロー。やけにジローばかり女にもてると嫉妬するイチロー。「しかし、人間は人間。機械は機械だぜ。大きな溝があるんだ。それにしても、あいつばかりなぜもてる」

シャドウは盗聴装置でジローたちの様子をチェックする。「ふむ。今日はずっと修理にかかるか」「チャンスは夜だな」「あのロボット兄弟を分裂させるいい方法を考えたぞ。あの娘にジローをもっと好きにならせて、単純なイチローを怒らせるのだ」さらにシャドーはリエコとアキラの入浴情景もチェックする。アキラの背中に浮かびあがる設計図。「むむむ。そうだったのか。湯で体が温まると浮き出してくる刺青で設計図を」

シャドウはクラゲロボットを発動させ、アキラを捕獲する。後を追うキカイダー。気絶したリエコを助け起こすイチローにジローの声が。「兄さん。リエコさんにさわるな。こんなことになったのも兄さんのせいだぞ。馬鹿。間抜け」戻ってきたジローをぶんなぐるイチロー。「何をするんだ、兄さん。確かにアキラ君をさらわれてしまったのは、僕の」「そんなことじゃねえ。さっき言ったことをもういっぺん言ってみろ。よくも兄貴に向かってそんなことを」「いったい何の話だい」「まだ、とぼけるのか」

二人の喧嘩を止めるリエコ。「アキラ君がさらわれたのに、あなたたちが兄弟喧嘩なんて」「すみません。どうしても追いつけなかったんです」へっと毒づいて部屋を出るイチロー。何をあんなに兄さんは怒っているんだ、とつぶやくジローを卑怯だというリエコ。「あんななことを言われれば、誰だって腹を立てるわ。あなたさえ素直に謝れば」「リエコさん。いったい何の話です」「ジローさん。イチローさんのことを馬鹿とか間抜けとか、わたしに触るなとか言わなかったの」「そんなこと僕が言うもんか」「だって、あれはジローさんの声だったわ」「声なんて誰でも真似できる。ロボットなら特に」「でも、なぜそんなことを」「僕と兄さんの仲を裂こうと言う計画なんだ」

ジローとリエコはイチローを説得するが、つむじを曲げたイチローはなかなか納得しない。「そんな作り話は俺は信じないぞ。なんでえ、畜生。二人して言い訳をでっちあげやあgって」「違うわ、イチローさん」「そうだよ、兄さん」「いやに気があうな。そりゃあまあそうだろうよ。ジローは優等生で誰にでも好かれるもんな。もうジローとはやっていけねえ。俺はもうお前たちとかかわるのはごめんこうむるぜ」そして傷ついたジローは一人でアキラを探しに行く。イチローはリエコを連れて、アキラを探しに行く。

 

キカイダー00

シャドウは最終兵器ジャイアントデビルを完成し、テストするがスイッチオンした瞬間、ジャイアントデビルは跡形もなく消えてしまう。「そうか。この子の体の設計図だけでは不完全なんだ。エネルギー制御装置の設計図がまだどこにあるんだ。くそ」幼い娘を抱いて笑うハカイダ―。「そのとおり、コントロールパネルの部分はこっちが握っているんだ。この娘の体の中にな。ふふふ。貴様たちがいくらジャイアントデビルを作っても、エネルギー制御装置ができなれければ、武器としては役に立たんのだ」少し考え込むハカイダ―。「とはいうものの、こちらもアキラを取り戻さないとどうしようもない。しかし一人ではとてもやつらの組織に立ち向かえない。ここはキカイダー兄弟を騙して手を結ぼう」

カニロボットがイチローとリエコを襲う。イチローはキカイダー01に変身してカニロボットと戦うが、ハカイダ―が現れ助太刀する。「ハカイダ―。死んだんじゃないのか」「俺はもう君たち兄弟と戦う気はない。このまえやられたとき、メカの一部が狂ったらしく、悪いことをするのが嫌になったのだ。その証拠に、この娘と旅している。みなしごを引き取ったのだよ。俺は君たちの味方だ」「ほんとかよ」「それにアキラは俺の息子だ。君たちと力を合わせて取り戻したい。やつらの基地を知っているんだ」「え」「そう。俺はシャドウの基地のありかを知っている」

さっそく乗り込もうというイチローにジローはどうしたと聞くハカイダ―。「基地へ乗り込むには一人でも多いほうが」「あんなやつがいなくてもいい」「わかった。とりあえず偵察だけでも」「偵察だけ?そんなケチなこと言うない。さあ、基地はどこにあるんだ」「海の底だ」リエコに語り掛けるハカイダ―。「お前は、その娘をしっかり守るんだ。その娘を襲ってくるものがあれば戦うのだ。お前にはその力があるのだ。お前はお前の本来の姿の記憶を失っているが」「え」

海に飛び込むハカイダ―とイチロー。娘にルミちゃん、と呼びかけるリエコ。「おねえちゃん。どうしてあたちの名前知ってるの」「え。どうして。わからない」二人をタコロボットが襲う。タコロボットの腕に捕われた瞬間、ロボットに変身するリエコ。「そうだ。あたしもロボットだったんだわ。この娘を守らなければ」タコロボットの弱点を見つけ、乳首から破壊光線を出すリエコ。爆発するタコロボット。

シャドウの恐竜ロボットに襲われ偵察から帰ってくるハカイダ―とイチロー。「やはり、シャドウを倒すにはこちらの戦力をもっと補強しなくては。リエコ、何か変わったことは」「い、いえ。別に何も」どうやって戦力補強をと聞くイチロー。「キカイダーを探すのだ」「へっ」「でなければ、いろいろな武器を作って装備するか」「うん。それなら賛成すらあ。そうと決まれば光明寺博士の地下研究室に戻ろうぜ。あそこにはいろいろと設備がそろっているからな」

地下研究室に戻る一同を出迎える見知らぬ青年。「どなたですか」「そっちこそどなただ」「僕の名前は零」現れるジロー。「あ、イチロー兄さん」「ジロー」「キカイダー」「ハカイダ―?どういうことだ、これは」説明するジロー。「兄さんたちと別れて、僕はとてもさみしかった。だからここに戻ったけど、兄さんたちはいなかった。それで、どうしても話し相手が欲しくて、光明寺博士の残した設計図をもとに、キカイダー00、零を作り上げたんだ」これはラッキーと喜ぶハカイダ―。「このさい味方が一体でも多いほうが、シャドウを叩き潰すには好都合だからな」

ルミを子守唄で寝かしつけるリエコ。「この娘もアキラ君と同じようにギル博士の子どもなのかしら。そしてやはりあんなひどいことをされているのかしら」そのとおり、というハカイダ―。「ルミもアキラもわしの本当の子どもだよ。二卵性双生児でな。わしは二人に肝心な部分を少しずつ変えて、わしの最後の希望である最終兵器の設計図を隠し彫りにした」「あなたは悪魔。本当の子どもによくそんなひどいことが」「ふふん。自分が作った子どもだからこそ、なんでもできるのだ。それより、お前の本当の姿のことだか」「し、知っているわ、もう」

「なら話は早い。お前はわしがアキラのために作った乳母ロボットだ。しかし、ロボットであることをキカイダー兄弟に気づかれるな」「なぜ」「あいつらには人間コンプレックスというか、人間に憧れる気持ちがある。だからこそ、兄弟げんかまでして、二人でお前を好きになった。シャドウを倒したあと、やつらはまたわしの敵になる。そのとき兄弟げんかをさせておいたほうが、都合がいいからな。それにお前だって本物の人間だと思われて憧れられていたほうが、いい気分だろうが。ふふふ」

シャドウはシャム双生児型ロボット、ザダームを繰り出して研究所を攻撃する。ザダームに戦いを挑むキカイダー、01、00のキカイダー三兄弟とハカイダ―。ザダームをは破壊されるが、その隙に球形ロボットがリエコとルミを襲い、球形ロボットから出た無数の触手がリエコを襲う。リエコは乳母ロボットに変身し、ルミを木陰に隠す。「この娘を守る手段はただひとつ。ルミちゃん。みんなによろしく言ってね。さよなら、ジロー」球形ロットに体当たりを挑む乳母ロボット。リエコともども大爆発する球形ロボット。リエコの頭部を抱きしめるジロー。驚くイチロー。「リエコさんもロボットだったのか」「そう、リエコはわしが作った乳母ロボットだった」「くそ。なんで今まで黙っていたんだ」

シャドウの海底基地を目指すキカイダー三兄弟とハカイダ―。「こうなったら機先を制するのだ」「攻撃は最大の防御っていうもんな」「とにかくアキラ君を取り返さなくては」「そう。最終兵器を作られてしまったら、ジエンドだからな」恐竜ロボットを破壊し、シャドウの基地に乗り込んだ一同は、カプセルに入れられたアキラを見つける。激しく揺れて回転する基地。そこにアナウンスが。「ご苦労だった、諸君。諸君の闘志に免じてアキラは帰してやる。なに、実は背中の設計図は完全なコピーをとったので、用済みなのだ」「……」

「ところでこの基地はあと5分で爆発する。そこから脱出する方法は一つしかない。そこで取引だが、設計図を背中に彫りこまれているルミという女の子をどこに隠した。お前たちが光明寺の家から連れて出なかったことまでは確認しているのだが。外は宇宙空間だ。基地の爆破はあと5分後だ。さあ、どうかね。女の子の隠し場所と脱出の方法を交換するか。さもなくば死を選ぶか」

爆破でもなんでもしろ、というキカイダー01。「宇宙空間だと?えへへへ、俺たちはロボットだぜ」「ふふふ。お前たちがここに来たのは、アキラを助けるためではなかったのか。その子はお前たちと違って、生身の人間だぞ」わかった、というキカイダー。「ルミちゃんの隠し場所は教えよう。そのかわり、僕らを必ず無事に地球に送り届けてくれるか」「よし。では中央のデスクの赤いボタンAを押してみるがいい」大気圏に入っていく基地。ルミはどこにいると聞くアナウンス。

「では、教えよう。ルミは光明寺博士の地下研究所にいる」「嘘をつけ。あそこはとっくに探したぞ。猫の子一匹、命のあるものはいなかった」「僕には良心回路がついている。嘘はつけない。つぶれたロッカーの中に」しかしロッカーの中にはルミの洋服しかなかった。「騙したな、キカイダー」「飛び出せ」シャドウの基地から脱出する一同。騙していない、というキカイダー。「僕は本当に嘘はつけないんだ」

 

ビジンダー

光明寺博士邸の焼け跡に戻る一同。乳母ロボットの胸の中に隠していたルミを救出するジロー。「シャドウはロボットは嘘をつけないという論理にひっかかったんだ。ルミは確かにこの地下研究所の中にいた。ただし、冷凍催眠で仮死状態になっていて、生命エネルギーを探知できなかったんだ」「だが、これでやつらがあきらめたわけじゃないだろう。またすぐ襲来してくるぜ。来たら、この二人の子どもたちを守って、精一杯戦うだけだ」

考え込むハカイダ―。(さて、俺はあの二人の子どもをどうやって奴らから離すか、だが)「あたしが力を貸しましょうか、ハカイダ―さん」小悪魔的な女が現れる。「あたしはロボットの心が読めるのよ」「むう。貴様、ロボットだな。人間の体熱と同じ温度を放射しているが、かすかな機械音が聞こえる」「誰がロボットじゃない、といって」「むう」「あたしはロボットよ」「貴様、どこからのまわしものだ」「もちろん、シャドウからよ」「な、なに」

シャドウで反乱を企てている部隊から派遣されたとう女。「反乱部隊のボスは今の本部のボスのやり方に不満を抱いているの。そしてシャドウ全体を、そして世界を支配するにはあれがいる、というの。崩壊前のあなたの組織で作った最終兵器。あたしたちは、アマゲドン・ゴッドと呼んでいるけど」「……」「で、それを手に入れるには、その正当な所有者であるあなた、ハカイダ―さんと手を結ぶのが一番というわけよ」

「図々しい奴らだな。要するに人の褌で相撲を取ろうって魂胆じゃねえか」「そうかもしれないけど、そのほうがあなたにとって有利じゃない。一匹オオカミでアマゲドン・ゴッドを作るのは無理だし、手を組んで新シャドウの結成に協力すれば、最高幹部の席は間違いないし」(なるほど。そうなれば新シャドウのボスを倒して、この俺様が全軍指揮を)「うふふ。気をつけなさいな。ハカイダ―さん。あたしはロボットの心を読めると言ったでしょう。回路を走る電流量から、思考を計算できるのよ」「う」「でも、御心配なく。このあたし一人と手を結びましょう」「う。お前さん、ズベ公だな。わかった手を組もう。お前さんの名は」「みんなはビジンダーって呼ぶわ。名前はミエコ」

ミエコをキカイダー三兄弟に紹介するハカイダ―。「俺が前に作っておいた乳母ロボットのひとりだ。子供たちふたりの世話をさせるために呼んだのだ」あきれるイチロー。「お前は乳母ロボットを何体作っておいたんだ」三兄弟を見つめるミエコ。「ヨロシクね。みなさん」ぽわんとする三兄弟。「こ、こちらこそ」何をやったとミエコに聞くハカイダ―。「ちょっと、彼らの回路を加熱しただけよ。あたしに恋心を抱かせるように」(催眠術も使うのか。どうも、あいつは信用できん)

ミエコはジローはほかのロボットと一味違うことに気づく。「神経が細かくて優しくて人間みたい」「僕には光明寺博士が良心回路を埋め込んでくれたんだ。でも不完全で」「まあ、ジロー。恥ずかしがることないわ。人間だって完全な良心を持ってないんだから」「ありがとう。君も優しいね」歩み去るジローにぽーっとなるミエコ。そこに現れるイチロー。「やい、ビジンダー。人間のふりしやがって。よくも人の回路にちょっかい出してくれたな。ハカイダ―に聞いたんだ。てめえ、シャドウのスパイロボットなんだってな。ぶっこわしてやる」「ふん。あのおしゃべり」ミエコはビジンダーに変身し、クレイジーアイ光線をキカイダー01に浴びせる。完全に頭がショートしてしまうイチロー。その隙にアキラとルミを連れて逃走するハカイダ―。がっかりするジロー。「ハカイダ―。裏切者め。信じていた友情を裏切られることほど、つらいことはない」それを聞いてドキリとするミエコ。

ミエコの前にミエコの兄を名乗る男が現れる。「なにい。ジローに恋しちゃっただ、と。それじゃ話があべこべじゃないか。ビジンダー。お前の得意技はロボットの回路を加熱して狂わせることだったはずだ」「ええ。だから自分自身でよくわからないの。多分、ジローについている良心回路と、あたしコントロール音波が同調しちゃったんじゃないかと思うけど。とにかくもうジローとは離れられないわ」

冗談じゃない、と怒るミエコの兄。「お前の使命はハカイダ―の二人の子どもをさらうことだった。あんな三兄弟にくっついても何の役にもたたないんだ」五本の指を光線銃砲にチェンジするミエコの兄。「それができないならお前を破壊する」しかし、体が硬直してしまうミエコの兄。「忘れたの、ワルダ―。あたしは同調しただけで、狂ったわけじゃないのよ。まだコントロール音波は放射できるわ」「う、撃てない」「サヨナラ」

その様子を見て嘆くシャドウのドロメダ博士。「わしゃ恥ずかしい。ビジンダーといいワルダ―といい、二体ともイカレロボットじゃ。生みの親としてシャドウのボスに顔向けできん。こうなったらビジンダーは壊さなくてはいかんが、それにはコントロール音波遮蔽装置をつけなければならん。こい、ワルダ―。ビジンダーを破壊するのはお前の役目だ。早速遮蔽装置をつけてやる」「お願いします。俺もこのままじゃ」

早速狂ったイチローの修理を開始するジロー。ブラックキャットに命じるドロメダ博士。「お前はやつらを見張ってろ。その間にわしはワルダ―にビジンダーの出すコントロール音波遮蔽装置をつける」修理に手間取るジロー。「ここの焼き切れたコイルどうしようかな。特殊なヤツだからなあ」「待ってて、ジロー。あたしが捜してくるわ」「え。探してくるって、どこで」「心あたりがあるの。戻るまでほかの部分を修理していて」

研究室を出て声をかけるミエコ。「出ておいで、ブラックキャット。いやらしいスパイネコ。お前のコイルをもらいたいんだ」ビジンダーに変身し、見事にブラックキャットを倒し、コイルをゲットするミエコ。「これさえあれば、01は元に戻れる。でも、元に戻ったら、あたしがビジンダーというシャドウのロボットであることをジローに話すかもしれない。それが知れてしまったら」

ミエコはジローにコイルを渡す。感謝するジロー。「これでイチロー兄さんも元どおりになれる。ミエちゃんは命の恩人になるなあ」こっそりと研究室から出ようとするミエコ。「さよなら、ジロー。あなたと一緒にいた数日間はとても楽しかったわ。ずっと一緒にいたいけど、01が元に戻ったら、ジローはきっとあたしを憎むわ。だからその前に」ミエコに声をかける零。「どこへ行くんだい、ビジンダー」「え」「君がロボットってことは知っている。それに01の電子頭脳を狂わせたのも君だったことも」「零」

「さっきのスパイネコと君が戦うところを見てしまったのさ。だから、もしあのコイルをジローに渡さなかったら、俺は君をやっつけようと思っていた。しかし君は渡した。君は俺たちの仲間だ」「あたしはミイラとりがミイラになってしまったの。いえ、あたしの能力がジローの良心回路に負けたんだわ。良心回路が持っている愛に」「違うな。電子頭脳を狂わす装置は精密に作られている。だから、ジローの良心回路に入り込んだ時、高感度の君の回路が逆に影響を受けてしまったんだ」

それだけじゃないというミエコ。「あたしはジローを愛しているの」「忠告しておこう。俺たちは機械だ。機械に愛など無意味だ」「それじゃあたしのこの気持ちはなんなの」「それこそ、ミイラとりがミイラになって、狂ったのかもな」「冷たいこと言うのね、零」「そうじゃない。俺は機械同志が愛し合ってもどうにもならないと言っているだけだ。みじめな将来がわかっているから、そういうんだ。そしてますます人間との違いがわかって君たち二人が傷つくのを恐れるから、忠告してるだけなんだよ」「……」立ち去る零。

 

ピノキオ

泣き崩れるミエコ。「でも愛しているの。ジローがわたしを嫌いになったら、わたしはもう」「どうするね。死ぬかね。望みをかなえてやろうか、ビジンダー」「ワルダ―」「どうするんだ。死ぬか。それともおとなしく任務につくか」「どっちもいやだ」ミエコはコントロール音波を発するが、ワルダ―の遮蔽装置のために音波は反射され、ミエコは倒れ、ワルダーの傀儡人形となる。「さあ、起きろ、ビジンダー。地下実験室に戻るんだ。お前の望み通り、連中と一緒に暮らすがいい。連中をシャドウの一味にしてしまうんだ。お前のコントロール音波で」

待つワルダ―。ミエコはキカイダー三兄弟を引き連れて研究所を出る。喜ぶワルダ―であったが、三兄弟から攻撃を受ける。「ワルダ―。貴様とビジンダーのやり取りを零が見てたのさ。だからミエコが研究所の中にはいったとき、作動スイッチを切って、回路を元通りに修復したんだ」ワルダ―のピンチを巨大な丸い岩が救う。説明するミエコ。「シャドウの科学者ドロメダ博士のモンストロックという乗り物よ」

三兄弟はキカイダーに変身して、十字砲火をワルダ―に浴びせ、ワルダ―を爆発させる。「ワルダ―の爆発でモンストロックに穴があいたぞ」無線がドロメダを呼ぶ。「ハカイダ―のアジトが判明。ワルダ―、ビジンダーとともに至急出動せよ。アジトは日本アルプス地獄岳のこの地点なり」早速モンストロックを修理し、ミエコの操縦でハカイダ―のアジトに向かう一同。「アキラ君、ルミちゃん。もう少しの辛抱だよ。すぐ助けに行くからね」

地獄岳について巨大ロボットを発見する一同。「もうできている。まさかこんなに早く」冷静に分析する零。「あの兄妹の背中にあった設計図はもっとも重要な部分だけのものだったんだ。だからその部分さえすぐに作ってとりつければ」そっと一同はロボットに近づくが、ロボットはジローたちを見つけ、怪光線を発する。

意識を取り戻したジローは自分が手術台の上に拘束されていることに気づく。そこに現れるハカイダ―。「来たるべき世界の帝王、ハカイダー様だ」「ほかのみんなはどうした。僕はなぜここに。ここはどうだ」「説明してやる。ここはアーマゲドンの内部だ。お前たちを倒した巨大最終兵器ロボットさ。ぶっ倒れているところを運び込んだ。あの光線はエネルギー停止光線で、人間でも機械でもすべて生あるものを一時的に仮死状態にしてしまう光線だ。それでデクノボーとなったお前たちを運び込んで改造した」「え」

「お前たちはこの物資不足で物価高の時代では破壊するに惜しいロボットだからな」「改造したって、どんな風に」「俺の部下として素直に命令を聞けるロボットにだ」キカイダー01とキカイダー00とビジンダーが現れる。「やあ、ジロー。まだそんな恰好してんのか。早く機械になれよ。アーマゲドンの世界征服旅行出発の準備で猫の手も借りたいんだ。じゃあ、待ってるぜ、ジロー」

ショックを受けるジロー。「本当にみんなただのロボットになってしまったのか」「見たとおりだ」「じゃあ、僕はなぜ」「いいや。お前さんにも服従回路は組み込んだ。だが時間の関係もあって良心回路ははずせなかった。だから用心のためそうやってもらっている。しかし良心回路は不完全だから、服従回路の力が勝つはずだ。では試してみるとするか」そこでシャドウのロボット軍団総攻撃に知らせがはいる。「ジロー。お前のテストはやつらを始末してからにする」

アーマゲドンから攻撃を開始するハカイダ―。ジローは通りかかったビジンダーに声をかける。「頼むよ、この拘束輪を外してくれ」「ダメ。ハカイダ―様の命令のないことはできないのよ」「シャドウ軍団が攻めてきたというじゃないか。僕もみんなと一緒に戦いたいんだよ」「騙すんじゃないでしょうえ」「まさか。もともと良心回路なんて不完全なものだったんだ。服従回路にかなうはずないじゃないか」「そうね」自由の身になったジローを促すビジンダー。「それじゃ、そんな人間のスタイルなんか、さっさとやめて」「なぜ」「馬鹿ね。私たちは誇り高きロボットよ。これから人間どもを支配するんじゃないのさ」「……」

シャドウのロボット軍団を一掃するアーマゲドンは、最終決戦に現れたシャドウの基地も壊滅させる。これでシャドウ軍団は全滅だ、と喜ぶハカイダ―に、お前もな、というキカイダー。驚くビジンダー。「お前、あたしを騙したの」「そうだ。騙したのだ。今の僕は友達を騙すこともできる。そして兄弟も殺すことができる」ビジンダーとキカイダー01とキカイダー00を破壊するキカイダー。

驚くハカイダ―。「貴様」「そうだ。お前が組み込んだ服従回路だ」「む」「確かにこの通り作動しているのだ。お前が望んだ悪の心が。破壊光線も使えたし、それで兄弟の殺せた」「む」「そうなんだ。悪の心が逆に俺を強くしたんだ。そんなものに負けちゃいけないという心が俺を強くした」ハカイダ―を破壊し、ジローに戻るキカイダー。「俺はこれで人間と同じになった。だが、それと引き換えに俺は永久に悪と良心の心の戦いに苦しめられるだろう」

破壊されるアーマゲドン。アキラとルミを救出するジロー。ピノキオは人間になれました。めでたし、めでたし。だが、ピノキオは人間になって本当に幸せになれたのだろうか。

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