深い「サイボーグ009」
昨日(5月25日)もNHK教育テレビで「サイボーグ009を作った男」石ノ森章太郎氏の特集をやっていた。精神科医の名越康文氏が、養老孟司氏(解剖学者)や姜尚中氏(政治学者)や植島啓司氏(宗教学者)と会談したり、3月に放送された「とことん石ノ森章太郎」よりも、大人向けでインテリ的で深い内容だった。まちろん、漫画家の島本和彦さんも出演された。以前も紹介されたが、石ノ森氏は漫画でお金を貯めて大学に進学し、本当は映画監督か小説家になる予定であった。その為に上京した。しかし、漫画家として人気が出て仕事が忙しくなり、勉強ができなくなった。そんな時、一緒にトキワ荘で暮らしていた、美しいお姉さんが喘息の発作で、救急車で運ばれ入院する。喘息で苦しむ姉の姿が見たくなくて、友人と映画を見に行ってしまった、自分が映画を見ているときに姉はたった一人で亡くなってしまった。石ノ森氏は、後悔と苦しみ悲しみから逃れたくて、漫画から逃げ一人、世界旅行をする。結局、逃げても、苦しみから逃れることはできないと悟り、トキワ荘に戻り再び漫画を描く。そして生まれたのが「サイボーグ009」「幻魔大戦」。石ノ森氏が009に対して思いれがあるのは理解できる。まるで、氏のお姉さんは石ノ森氏が傑作漫画を描く、漫画家になるよう導いた女神のようです。どなたかが言ってましたが、手塚治虫氏の作品は深いが明るい。しかし石ノ森氏は深くて暗いとても。なるほどと思った。009のメンバーは様々な国の人種で、人間であったときはそれぞれ環境も思想も違う、自分の意思もなく無理やりサイボーグにされた。彼らは空を飛べたり、早く走れても少しもうれしくない。常に自問自答しながら悩み苦しむ、彼らは人間としての心の苦しみが共感し団結する。平和を守るためブラックゴーストと戦う。石ノ森氏の作詞した009の主題歌、[誰ために戦う~♪]が頭に浮かんだ。それにしても009は私が生まれる前の作品なんですよね、もう40年以上前・・・。しかし、全く古さを感じない。いや、現代こそ009が受け入れられる。様々な人種の組織という斬新な発想がすごいと思う。どんな国の人でも人間は人間である。漫画では未完の「009神々との戦い」、(構想を託された息子さんが後日、小説で完結編を出される予定)人間を造った神が、憎しみや欲に翻弄され争いばかりおこす人間は失敗作だという、滅ぼして造り直そうとしているのだ。不可解な災害や事故は人間を滅ぼそうとしている神のせいだという。009達はそれでも人間は生きたいのだから、神と戦う決意をする。009は調べながら考える「神とは?神とは・・・」漫画はここで終わっている、つらい~。前回、009が倒したブラックゴーストは、人間の醜い心がある限り滅びないという。石ノ森章太郎氏の作品は様々な疑問を読者に撃ってくる、答えはない。まともに受け考えると哲学にいきつく。ただひとつ結論がある、「ヨミ編」のラストのシーンで、姉弟が流れ星(002と009の落下だけど)を見てお願いごとをする。姉の願いは「世界が平和になりますように・・・」 現在、世界を見わたすと戦争、災害、不可解な犯罪、不況、等々混沌とした現代・・・平和で生きているのは奇跡かもしれない。まるで、漫画のように神が失敗をやり直そうとしているかのよう。これからは、一人ひとりが自分の中にある悪に負けないよう、人間としてしっかりとした考えを持つことだと思う。番組の中で、009の大ファンでもあるハリウッド映画プロデューサー、マイケル・ウスランさんが「サイボーグ009」の実写映画を考えているらしい。ぜひ期待したいです。映画も小説も気長に待ちましょう。
| 固定リンク
| コメント (2)
| トラックバック (0)
最近のコメント