渡部友一郎先生訪問(2012年4月26日)
文責 小槻英之
この度、UTSL TIXでは2012年度、第一弾の活動として、株式会社DeNAでインハウスローヤーとしてご活躍なさっている、渡部友一郎先生(28歳)を訪問させて頂きました。
渡部先生は、東京大学ロースクールを卒業後、英国系グローバルローファームの東京オフィスでの勤務を経て、現在株式会社DeNAにてインハウスローヤーとして働かれて
います。
以下、渡部先生がお話ししてくださったことのエッセンスをまとめさせていただきます。
渡部先生がおっしゃっていたことの第一点目は、自分の考えるサクセスモデルが本当に正しいのか、より自分に合った道があるのではないかを常に考えることが大切ということでした。その際の一つのポイントとなるのが、法曹資格を取得して弁護士になったからと言って「法律」に自分を拘束しすぎないということだそうです。弁護士という仕事上、どうしてもビジネスジャッジを切り離してリーガルジャッジの側面だけに目が行きがちになってしまうので、外部に広くアンテナを張り、法律に固執せずに自分がより力を発揮できる場所はないかを考えることが大切であるとのことでした。
事実、DeNAには、弁護士資格を持ちながら、会社の経営、すなわちビジネスジャッジの場面でご活躍なさっている方もいるということです。
2:インハウスローヤーとしてのお仕事
インハウスローヤーの魅力は、ビジネスにより近い場面で、ビジネスジャッジとリーガルジャッジの直接の橋渡しができるところにあるそうです。
弁護士は、日本経済の先頭に立って進んでいる企業に対して、法的なアドバイスを提供する役割を担っています。特に、IT企業などの迅速性が求められるお仕事においては、一刻一秒を争う大事な局面ですぐさま法律的な問題を解決してほしいというニーズが高いそうです。そのようなニーズに応えるべく、企業内部での迅速な法律問題の解決を可能にするのがインハウスローヤーの役割です。例えるならば、船の中で迅速にアドバイスを提供できる航海士、または、事業部の懐刀のような存在がインハウスローヤーであるということでした。
実際にお仕事をなさっていても、法律事務所と協力して解決する案件も少なくないそうですが、企業内で処理する案件もかなり多いとのことです。また、法的には困難な問題に対しても代替案を提供する等、ビジネスジャッジのすぐ傍に寄り添う場面も多々あるということが、インハウスローヤーのお仕事の魅力であるとのことでした。
このような点の他にも、より広い人間関係を築くことができること、そして、「自分の時間」を持つことが出来るようになることが、インハウスローヤーとして働くメリットであると渡部さんは語ってくださいました。
しかし、法律の問題に広く深く通じ、色々なお客様へ法律サービスを売っていく弁護士事務所とは環境が異なるために、法的素養や専門性について、より意識的にアップデートし勉強していく意欲が重要ということも同時におっしゃっていました。渡部さんも、弁護士会の勉強会に率先して参加するなどして、常に専門性を自ら補完していらっしゃるということでした。
3:DeNAという企業について
永久ベンチャーを掲げ、現在進行形で海外市場に挑戦している会社、それがDeNAです。優秀かつ多彩な人材を擁し、ピラミッド型ではなくプロジェクト型(球型)の組織で、コンサル的に少人数で迅速にプロジェクトを動かしていくことに特徴があります。DeNAの社員の方の年齢も30代前半と若く、当然、若いうちから即戦力として、大きなプロジェクトに挑戦できるのが特徴のようです。
ロジック、データ、エフェクトを重視する、論理に裏打ちされた若々しい企業であるとのことでした。
4:その他
ビジネスローヤーを目指すならば、金商法、会社法、税法の3科目を学んでおくことをお勧めされました。また、ビジネスを学ぶという側面からは、社会に出てから、自分が分からないことを、自分が納得できるまで相手に聞くということが大切だそうです。
以上です。渡部さん、貴重なお話をどうもありがとうございました。
参加者の感想
2年生
◆渡部さんのお話を伺って感じたことは、渡部さんが、これまでご自身の歩んできた道に一片の後悔もないということでした。
◆渡部さんが、今自分のいる場所が自分にとって最適であるとの確信を抱いていらっしゃることが、非常にうらやましかったです。
◆渡部さんの確信の根拠は、ご自身で精力的に情報収集をし、多くの選択肢の中から自分にとって最適だと思える解を選択してきたことにあると思いました。
◆周りに流されるのではなく、自分で選択すること、選択したことにともなう責任を負うこと、選択する自由に感謝することの大切さについて、学んだ気がします。
◆将来たとえ法曹になるにしても、自分にはそれ以外の可能性があることを十分意識した上で、選択したいと思いました。
3年生
◆インハウスについて従来あいまいなイメージしかなかったのですが、インハウスと一言でいっても、会社によって期待される役割が大きく異なること、就業時間の面などからとりはやされるけれども、自分で専門的分野について詳しくなるのでなければ、市場価値は0になってしまうこと、そういった意味で目的意識が明確で、自己管理ができる人でなければ難しいのではないか、という点が印象的でした。
◆特に、はじめからインハウスになる道もないわけではないが、教育システムの面などから考えると、他で経験を積んだ者が、弁護士事務所ではできないような、「ビジネスのすぐ横」で活動することに価値を見出した時に進みうる道なのだ、という点は、大きな発見でした。
◆法務部の一員として、法曹に限らず他の社員と一丸となって、ビジネスを作り上げていく、というビジョンを共有できるというメリットは、やはり一時的にしかビジネスに関与しない大手弁護士事務所では味わえない、インハウスのメリットだと思い、惹かれました。
1年生
◆今回、渡部さんにお話を伺って、現時点での自分の目標を明確化するとともに、目標までの道筋については、もう少し時間をかけて調査・検討する必要があることを認識しました。
◆私は、ロースクール入学前から、インハウスローヤーになることを目標にしていましたが、それはインハウスの立場でその企業の活動計画に関わることによって、企業活動から生じるあらゆる「害」を抑制できると考えたからです。例えば、景観破壊に繋がりうる活動に対して、紛争発生を避けるために軌道修正のアドバイスをすることによって、訴訟による損失と景観破壊の両方を回避できるのではないか、ということです。
しかし、渡部さんのお話から、インハウスローヤーは、「害」を抑制するだけでなく、積極的に「益」を生みだすことのできる職であると感じました。
まず、企業にとっての「益」としては、法律事務所の弁護士に依頼するより、インハウスローヤーを置く方が迅速に問題を処理できる点があります。また、大きな案件に限って携わる弁護士よりも、インハウスはその企業の状況を深く把握しているため、プロジェクトによりフィットした有効な解答を提示できます。
そして、インハウスローヤー自身の「益」も大きいと感じました。特に、案件単位の関わりではなく企業に所属することにより、アドバイス内容も、また人間関係も、深めることができることです。
これらの点から、私は、インハウスローヤーになりたいという思いを一層強くし、目標を明確化しました。
ただ、一口にインハウスローヤーといっても、求められる役割は企業によって相当異なり、それに応じて、語学力・法律事務所での経験など、必要な能力・経験に違いがあることがわかりました。この点については、今後幅広く調査し、自分の能力を把握した上で方向性を定めていきたいと思います。
◆この度の見学会では、今まで頭の中で考えていたことを具体化することができ、目標へ向かうモチベーションが高まりました。非常に有益な経験をさせていただき、感謝いたします。
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