・ テルミンとは
 テルミンはロシアの物理学者テルミンが発明した世界初の電子楽器で、今日のシンセサイザーのルーツとも言えるもので、楽器名は発明者の名前を取って「テルミン」と命名された。(人名と楽器名が同じなので、以後は楽器名には「 」を付ける。)
 その最大の特徴は、楽器には一切手を触れないで演奏が可能であることで、楽器から上向きに出ている音程と横向きの音量用のアンテナと手の間隔を変化させることによって、静電容量を変化させ、音程と音量を変える仕組みになっている。
 テルミン(Lev Sergeivitch Theremin:1896-1993)はロシアのサント・ペテルブルグで生まれ、物理学・天文学をサンクト・ペテルスブルグ大学とペトログラード物理工学校で学んだ。サンクト・ぺテルブルク大学で、ノイズの特性からテルミンの原理を着想し、電子楽器を発明した。この楽器はたちまち評判を呼び、1922年にはテルミンヴォックス(Thereminvox:後に略されて「テルミン」)の原型であるイーサーフォン(Aetherphone)をレーニンの前で披露した。いたく気に入ったレーニンは一人で演奏を試みたそうである。この時期、レーニンはロシア共産主義の前進には電化が必要不可欠であると考えて、テルミンに電化を推進させるためのPR活動の一環として、国内各地で「テルミン」の巡回演奏を行わせた。
 テルミンは1927年に渡米、「テルミン」の普及に努めようと演奏会を開催して絶賛を浴びた。その後、RCA(Radio Cooperation of America)に「テルミン」の製造許諾を与えたことにより、この楽器が製造され、知識人の間で売れたと言われている。
 1930年代テルミンはニューヨークに研究室を設けて、「テルミン」の研究を続けたが、1938年に突然、ソ連に連れ戻された。その後のテルミンはまさに政治情勢に翻弄されつづけ、スターリン時代の知識人がたどる最悪の運命に見舞われ、シベリアはじめ各地の収容所に政治犯として収監された。何とかスターリンの粛正をまぬかれ生き延びたが、晩年はあまり恵まれた生活を送ることはできなかった。そんな中でも、電子関係の研究を一人続けていたと言われている。
 
      参照・引用文献
   渡辺明禎,トランジスタ技術,39(2),131,(2002)
   http://www.happystar.com
   http://theremin.asmik-ace.co.jp/
   http://www.d1.dion.ne.jp/~o_hideki/theremins/

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