原子力防災訓練めど立たぬ自治体も10月23日 19時35分
国の原子力規制委員会の発足後、都道府県レベルでは初めてとなる原子力防災訓練が、23日、愛媛県で行われましたが、NHKが、原子力災害対策が求められる21の道府県に聞いたところ、訓練の実施の見通しが立っているところは12の道県にとどまっていることが分かりました。
訓練の予定が立たない自治体の多くは、防災指針の見直しが進まないなか、訓練の内容が定まらないことを課題に挙げています。
原子力規制委員会が今月中にもまとめる新たな防災指針では、避難などの対象となる範囲の目安が原発から30キロに拡大され、原子力災害への備えが必要な自治体が21の道府県に増えます。
これを受けてNHKは、今年度の原子力防災訓練の実施計画などについて自治体に尋ねました。
その結果、日程を含めて実施の見通しが立っていると答えた自治体は、すでに訓練を終えている石川県や富山県などを含めて、合わせて12の道県にとどまりました。
ほかの9つの府県のうち、茨城県や新潟県など6つの府県は、訓練の実施は決めているものの「時期は未定」と答え、「避難の基準などが指針で示されておらず、訓練の内容が定まらないこと」などを課題に挙げています。
一方、福島県や宮城県など3つの県は、震災の影響などを理由に「できない」「行わない」などとしています。
訓練の課題を聞いたところ、福島の事故で避難中に多くの人が亡くなった、入院患者やお年寄りの避難への懸念のほか、原発のない自治体からは、原子力防災に詳しい職員が乏しいという意見もありました。
新たな防災指針のたたき台では、原発事故を教訓に、これまで僅か1ページ弱だった訓練の記述を3ページに増やし、シナリオのない訓練の実施や、国や自治体などの連携の確認など、事前の訓練の重要性を強調しています。
しかし、原子力規制委員会は、今回のような自治体主催の訓練については、現地の検査官を除けば、東京からは視察だけで、依頼があればテレビ会議でやり取りする程度と、消極的な姿勢です。
原子力防災に詳しい東京女子大学の広瀬弘忠名誉教授は、「訓練はシナリオに沿って機械的に避難させるだけでは、儀式にすぎない。福島の事故の教訓を取り入れた実効性のあるものにすべきだ」と話しています。
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