2012-04-27-Fri
「たった7組」説から弱者憑依まで - どうしても同性愛を「普通じゃない」ことにしたい百合オタさんたちのロジックが変すぎる
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1. 概要
ライアーソフトの18禁百合ゲー『屋上の百合霊さん』について、上記リンク先とそのコメント欄で繰り広げられている議論がたいへん面白いです。ブログ主のtoppoiさんはこれらのエントリで、同作品の、同性愛をどこまでも「普通じゃない」ものとしてスティグマ視する姿勢を批判しています。コメント欄でそれに反論しようとする百合オタさんたちの採用しているロジックがあまりにも珍妙で、非常に興味深く読みました。
具体的には、百合オタさんたちの意見の以下の点が変なんです。
- 女の子同士のカップルが「たった7組」だからありふれていない(≒普通じゃない)と結論づけるところ
- 架空の「toppoiさんの説に傷ついたかもしれないセクマイ」を設定し、イタコのようにその気持ちを代弁し始めるところ
- 架空の「toppoiさんの説に傷ついたかもしれないセクマイ」を持ち出すわりに、現実のセクマイの声は無視するところ
- 「悪口は自己紹介」に陥ってしまっているところ
では、もう少しくわしく見ていきましょう。
2. toppoiさんによる『屋上の百合霊さん』評価
屋上の百合霊さん レビュー・感想・評価 凡百合ゲー、ときどき電波 とっぽい。を全文読んでいただくのがいちばん早いのですが、キモとなる部分を抜き出すと、こんな。なお、強調は引用者によります。
『百合霊さん』のストーリーにおいて、最終的に七組ものハッピーな同性カップルが成立することになる(数え間違えていたら申し訳ない)。カップルの組み合わせも(学園の構成員という括りはあるものの)教師と教え子、先輩と後輩、仲良し三人組からの派生など多種多様だ。全ての組がお互いを大切に思っているのも好感が持てる。とても素晴らしい。うん、いいこった。剛直棒至上主義のアダルトゲーム業界で、これだけ女同士のカップルが登場する作品を発表したチャレンジ精神は買われてしかるべきだろう。しかし、結局、何組ものカップルの仲を取り持った主人公に「同性同士の恋愛はやっぱり普通じゃない。でも、お互いが好きあっていればOK」という玉虫色のロジックしか言わせることができないのが、ライアーソフト並びに睦月たたらなるライターの限界なんだろう。お里が知れる。……何だか不安になってきたんだが、「なぜそこから『同性同士って案外ありふれているのね』という結論が出てこないんだ」と思ったのは私だけじゃあないよね?
3. 百合オタさん、「たった7組」説を用いて反論
上記エントリに対してついたコメントが以下。
全校生徒数がはっきりしないが、たった7組で「ありふれてる」と語らせたら、それこそアホだろ?
学園中から百合霊さんの二人が探し出して五組、百合霊の二人入れて六組。思いのほか居るかもしれないが、「ありふれている」と思えるかどうかは微妙なところ
結局のところ「これは駄作だ」と決め付けてから書いてるとしか思えないところが多い。
4.「たった7組」説のダメなところ(みやきちの意見)
4-1. 個人の経験から考える
いちレズビアンとして言わせてもらうと、身近な範囲で♀♀カップルが7組(主人公が6組12人もの同性愛者と出会う)って、すごく多い数字ですよ。同じ性的指向の知人がそんなにいる環境でいつまでもキャラに同性愛をネガティブ視させ、くよくよ悩ませ続けるのは無理がありすぎ。あたしゃ同性愛者ですが、初めて自分と同じセクシュアリティの友達ができたときの嬉しさや開放感、安心感は絶対に忘れませんよ。マイノリティであるからこそ、仲間の存在はものすごく大きな力になるんです。もしも自分の行ってた学校に10人以上もレズビアンの知人がいて、しかも複数の幸せな♀♀カップルと交流できていたら、どんなに心強かったか。どんなに幸せだったか。
4-2. 『カミングアウト・レターズ』の実例から考える
おまえ個人の経験などあてにならんとおっしゃるなら、『カミングアウト・レターズ』(RYOJI+砂川秀樹編、太郎次郎社エディタス)でもお読みになるとよろしいかと。この本は、同性愛者のカミングアウトをテーマとした、子と親、生徒と教師の往復書簡集。思春期の同性愛者が孤独感・疎外感に苦しめられ、だからこそ仲間の存在に救われることが、当事者の視点からたっぷり書かれていますよ。
以下、同書から何か所か引用します(強調は引用者によります)。まずゲイ男性の伊井義弘さんは、友達を求めて初めてゲイサークルに電話したときのことをこんな風に書いています(pp. 35 - 36.)。
すっごい緊張したのを今でも昨日のことのように覚えてるさ。何度も呼び出し音が鳴っている電話を切ったりとか。そこでね、札幌にも僕のほかにゲイの人がいることがわかって……。
これは、ショックだったよ。「なんで僕のほかにいるの??」みたいな。でも、その反面、とてもほっとしたんだよ。(引用者中略)それから友達が短期間にすごくたくさんできて、よくみんなでゲイバーに行ったりして遊んでたんだ。気がつくと僕と同年代のゲイやレズビアンの友達って多くて、とても楽しかった。あ、今も楽しいよ。
(引用者中略)
お母さんにカミングアウトしようと思ったのはね、僕がゲイの友人と遊ぶようになってから、とても毎日が楽しくて、以前考えていたような気持ちなんてまったく感じなくなったの。寂しさ、孤独感とか。
同じくゲイの昌志さんも、こんな風に書いています(p. 16)。
今、俺にはたくさんのゲイの友達がいる。そいつらのなかにいる時、俺は子どもの頃のような疎外感を感じることがない。
高校時代クロゼットで息苦しさを感じていたというレズビアンの侑子さんも、教師宛の手紙でこう語っています(p. 122)。
最近ではコミュニティーにも足を運び、同じレズビアンの友達もできました。自分を偽らず、心から話ができて、それに共感してくれる人がいるということはこんなにも心強いのだな、と初めて感じました。
直接話したり遊んだりする友達じゃなくてもいいんです。レズビアンのイトー・ターリさんは、こう述べています(p. 85)。
オランダで、女同士が手をつないで歩いている姿を見て、これだ、これでいいはずだと喜びであふれた。
この感覚もすごくわかる。幸せな同性愛者の姿をこの目で見るだけでも、自己肯定感や自己受容にとってものすごく大きなプラスになるんですよ。
4-3.では、『百合霊さん』主人公はどうだったか?
学園内で何組もの幸せな♀♀カップルと過ごし、自らも女の子とつきあうという『百合霊さん』主人公は、果たして同性愛をどのようにとらえているでしょうか。toppoiさんによると、グランドルートでの彼女の発言はこんなです(強調はみやきちによります)。
※注意※同性愛者の知人が何人も出来たあとの主人公の台詞である
「お、女同士なんだよ? もう今さら、それが変だとか思わないけど……。
でも、まわりの人は、そう考えてくれないかも。お父さんやお母さん、比奈のおじさんやおばさんを困らせるかもしれない」
「比奈にだって……、私が恋人だってことで、迷惑かけるかも。比奈が、変な目で見られたら、どうしよう……」
「結奈、別に、同性愛とか百合とか、女の子同士とか、そういうのが嫌いってわけじゃないんだよね?」
「そう思っている。確かに、最初は変なことだと思った、恋愛って男女の間のものだと思っていたから。それが普通だと。
でも、確かに普通じゃないかもしれないけど。誰かを好きという気持ちの行き先には、たとえその先が同性であっても、変じゃないと」
つまり、同性同士のラブラブカップルが周囲に何組いようと、そして彼女たちとどれだけ一緒に過ごそうと、この主人公にとって同性愛者とは、
- 「困らせる」存在
- 「迷惑をかける」存在
- 「変な目で見られる」存在
- 「普通じゃない」存在
- 「誰かを好きという気持ち」を免罪府にして初めてお目こぼしをいただける存在
の域を出ないわけですね。鬼か、それともクー・クラックス・クランの会員か何かですかこの人は。ていうかこの人、別に女の子なんか好きじゃないでしょ。同性愛者のことなんて他人事と決め込んで、偏見がっつりのヘテロが喜びそうな台詞をジェネレータかなんかで生成して並べてるだけでしょ。
toppoiさんはこの、生身の人間の感覚から乖離した台詞回しの不気味さ(この主人公、グランドルートに至るまで内心ずっと友人たちのことを『困らせ、迷惑をかけ、変な目で見られる普通じゃない人たち』と思ってたってわけですからね。怖い、怖すぎる)を批判しているのであって、それを「たった7組だから」と数字だけで論破するのは無理があります。
5. 「たった7組」説のダメなところ(toppoiさんの意見)
上記のように思ったのは自分だけではなかったらしく、toppoiさんは「たった7組」か? 「7組もいる」のか? マジョリティ目線の妄想百合トピア(笑)『屋上の百合霊さん』 とっぽい。というエントリで「たった7組」説への反論を展開しています。
以下、引用。
『屋上の百合霊さん』の主人公が、他の百合作品の主人公と決定的に違うところは、幽霊二人の存在によって、劇中で「6組12人もの」自分と同じセクシャリティの人々と出会えたことだろう。世の中には、たとえ自分の性を正しく認識していても、機会に恵まれず、気軽に話せるようなセクマイの友人が一人もできなかった人もざらにいるだろう。社会人になり、自分の生活基盤を整えて、それからアクションを起こす人も少なくないだろう。そんな人たちに比べたら、学生のうちに、10人以上の同じセクシャリティの友人が出来た主人公は恵まれているにもほどがある。セクマイの学生が健全な自己形成(「同性愛自体が健全じゃないし^^;」と思ったあなたは、くたばればいいと思うよ)をする上で、同セクシャリティの友人以上に優れたインプットは存在しないだろう。そいつらと一緒に勉強したり、部活や委員会活動で汗を流したり、同じ釜の飯を炊いたり食ったり、趣味について語ったり、物の考え方について話をしたり、恋バナの一つもしたりすれば、自分自身と友人のことを「普通じゃない」なんて考えなくなると思うんだけどな。身近で普通に生活している仲間の存在って、それくらい心強いものだろう。
何? セクシャリティを異常視するのと、友人そのものを異常視するのは話が別だって? 人の根幹に係わるアイデンティティを「普通じゃない」扱いするのは、友人そのものを「普通じゃない」と言っているのと何ら変わりはない。この点に納得いただけないんなら、もう手の施しようがない。
して、「6組もの」同性カップルと短くない期間を過ごし、そのうちの何組かの月下氷人となり、そのうちの何人かと親しい仲になった主人公が吐くのがこんな台詞である。
比奈の想いを変だと思うことはもうない。今まで、女同士でも、あんなにひたむきに、まっすぐに、想いを相手に向けている人を見てきた。
「お、女同士なんだよ? もう今さら、それが変だとか思わないけど……。
でも、まわりの人は、そう考えてくれないかも。お父さんやお母さん、比奈のおじさんやおばさんを困らせるかもしれない」
「比奈にだって……、私が恋人だってことで、迷惑かけるかも。比奈が、変な目で見られたら、どうしよう……」
「結奈、別に、同性愛とか百合とか、女の子同士とか、そういうのが嫌いってわけじゃないんだよね?」
「そう思っている。確かに、最初は変なことだと思った、恋愛って男女の間のものだと思っていたから。それが普通だと。
でも、確かに普通じゃないかもしれないけど。誰かを好きという気持ちの行き先には、たとえその先が同性であっても、変じゃないと」
そう思っている(キリッ)。強調は引用者による。作品の締めであるグランドルートで、狂言回し的ポジションにいる主人公にこんなことを言わせちゃうのを「繊細な心理描写」「リアリティのある葛藤」と思える人なら、この作品を楽しめたんだろうなぁ。
このくだりを読んだ時点で、私にとって『屋上の百合霊さん』は物語ではなくなった。睦月たたらなるライターの欲望を満たすためだけに存在するハリボテ御殿――百合トピア(笑)――に変わった。主人公は人間ではなくなった。百合トピア(笑)の従業員として、用意された萌え萌え台詞を吐く木偶人形に変わった。
ここで冒頭の「たった7組」の話を振り返ろう。主人公が「全校生徒1200人のうち6組12人が同性愛者」という「数字」だけを聞いて、女同士は普通じゃない、おかしいかもしれないと思うなら、まだ理解は出来るんだよ。正直に申し上げると、まともな人権教育を受けていないんだな〜とは思うが。見聞の狭い学生ということを考えれば、理解出来ないことはない。しかし、この主人公は事情が全く違うだろう。単なる数字ではない、普通に考えて普通に生活する生身の同性愛者と学園生活を送っていたじゃあないか。そんなまたとない機会に恵まれていたにもかかわらず「女同士は普通じゃない」とひたすらオウムのように連呼する。その人間らしさが著しく欠けた反応が不気味でしかたなかったんだよ。だけど、「これは百合萌えアミューズメントパーク『百合トピア(笑)』の従業員さんが、用意された台詞をしゃべっているだけなんだ。友情とか共感とか、そういった人間らしい感情を求めるのが間違いなんだ」と考えると、すっと腑に落ちたね。雇われの身に無理なことを要求した私が悪かったよ。
これは説得力あると思うんですよ。『カミングアウト・レターズ』に登場する現実の同性愛者たちの意見とも通底するし、別に同性愛者じゃなくても共感しやすいのではないでしょうか。
6. 百合オタさん、架空の「傷ついたセクマイ」のイタコと化す
ここに至ってさすがに「7組」という数字だけで「女の子同士の関係は普通じゃない」説を支えることに限界を感じたのか、百合オタさんたちは戦略を変えます。想像上の、「toppoiさんの発言に傷ついたかもしれないセクマイ」を持ち出し、イタコと化してその気持ちを代弁することで、toppoiさんを糾弾し始めるんです。以下、便宜上、上をイタコAさん、下をイタコBさんとします。
6-1. イタコAさんの主張
toppoiさんの仰る通り、このゲームの主人公は6組ものセクマイのカップルの友人と、性的指向をカムアウトして告白してくれた幼なじみもおり恵まれております。
ですが海外ではセクマイの人権を主張する団体の方でも、自身の性的指向を認めるのが怖いという談をする人が居ます。
toppoiさんはそう言った友人知人にセクマイの方が居るが、上手く自分に当てはめられない、自身の性的指向を認めるのが怖い。
といった悩みを抱えている人を一顧だにせずに、ゲーム内期間の半年と少しを短くない期間称し、半年でホモフォビアを改善出来ないのはとんま、人間じゃ無い、木偶人形だ。と切り捨てています。
セクマイの方のことを考えていらしたら、間違ってもこのような物言いは出来ないと思います。
それこそあなた自身が封殺される1%の事を考えないマジョリティ的思想の持ち主だからでは?
セクマイの方に一番偏見をもって馬鹿にしているのはtoppoiさんでは無いでしょうか?
20120421 | 名無しさん #- URL
6-2. イタコBさんの主張
toppoiさんの引用部分でも主人公は
別に変だとは思わないけど
と述べており、普通じゃないというのは多数派ではないというニュアンスだと思います
確かに言い方が悪いですが、セクマイについての正しい知識のない主人公の発言を、そのまま友人への侮辱と取るのは乱暴ではないですか?
また、toppoiさんは前回の記事で、普通じゃないかもしれないが、私たちは愛し合っている という論は空想のキャラだから言えると思っている
との主観において、血の通った人間の思考じゃない、無茶苦茶なこと、クソたわ言、お花畑ファンタジーだ。
と評しております。
実際に悩んで悩んで、悩み抜いた結果そのような結論にたどり着いた人もいるかも知れません。
しかし、そのような人を考慮せずに一蹴されたのは何故ですか?
それはやはりあなたがマジョリティ的思想の偏見をもってセクマイをバカにしているからでは?
20120421 | 名無しさん #-URL
7. イタコさんたちの論のダメなところ(みやきちの意見)
7-1. 弱者憑依は卑怯です
実在するのかしないのかもわからない「被害者」を持ち出し、その立場を勝手に代弁するというのは、私憤を義憤にすりかえて相手を黙らせようとするための詭弁でしかありません。先日、同性婚反対派が「同性婚を認めたら子どもがゲイのセックス広告にさらされる!」として、存在しない『子ども被害者』を盾にゲイを叩いてましたが(参考:http://www.starobserver.com.au/news/2012/03/14/anti-gay-message-hits-the-road/74072)、それとまったく同じ構造ですよ、この人たちのロジックは。
もうひとつ、このイタコさんたちとよく似た人の話をしましょう。『ウェブはバカと暇人のもの』(中川淳一郎、光文社)という本によると、オウム真理教を描いた映像作品『A』の一部がテレビで紹介されたとき、大量の抗議電話がテレビ局に寄せられたんだそうです。この作品の監督である森達也氏は、そのことに関して、作家の森巣博氏との対談で以下のように話しておられます(pp. 38 - 39)。
森:(前略)膨大な抗議の電話がテレビ朝日にきたらしいです。
森巣:えっ?
森:オウムの信者が笑っている顔を、なんでテレビ朝日は流すんだって。
森巣:はははは。彼ら彼女らだって、それはメシは食うし笑うでしょうよ。
森:被害者の遺族がこれを見たときのことを考えろという理屈らしい。
森巣:わからないのは、なんであんなに被害者に感情移入するんですかね。あたかも自分が被害者みたいになって社会正義を叫ぶでしょう。一方、たとえば従軍慰安婦となった被害者たちは無視する。
森:主語がないんです。『A』や『A2』に対する批判って、実は意外に少ないのですが、やはりこのテレビ朝日への抗議と共通するところがあって、「もし被害者やその遺族がこれを見たら、どう思うかを考えろ、お前はその責任取れるのか」式の批判です。一度だけ、上映会場でその疑問をぶつけてきた人がいたので、「あなたは被害者ではないのだから、あなたはどう思ったのかを僕はまず聞きたい」と質問し返したら、答えてくれないんです。……何というか、そんなことは考えたこともないといった感じで、とにかく被害者が……の一点張りなんです。
イタコAさんBさんも、この森監督への批判者にそっくりです。主語がなく、「あたかも自分が被害者みたいになって社会正義を叫ぶ」だけ。
この『ウェブはバカと暇人のもの』を書かれた中川氏はニュースサイトの編集者さんで、そのサイトにもよく「傷ついているかもしれない人がいるんです!」という抗議がくるそうです。そういう方には、「そうしたら、実害を受けた当事者の方を見つけて、私に連絡するよう伝えてください」と返すと、それ以上何も言わなくなるんだそうですよ。イタコさんたちも、「(toppoiさんのエントリによって)実害を受けた当事者の方」(いるかどうかは疑問ですが)を見つけて、その方の正確な発言をtoppoiさんに伝えてはいかがですか。なぜ、それをしない? それはつまり、彼ら(彼女ら?)は「被害者」から横取りした当事者性を錦の御旗にして相手を黙らせたいだけで、別にセクマイ当事者のことなんて考えてないからですよ。
なお、弱者を自分に憑依させ、勝手に気持ちを代弁することの問題点については、以下でまとめられている佐々木俊尚さんのツイートを読めばわかりやすいかと。未読の方はぜひどうぞ。
★★★【2012年7月17日追記】★★★上記は「セクマイ当事者以外はセクマイ差別を糾弾するな」という話ではまったくありませんよ、念のため。セクマイが実際に受けている被害を認識し、それをなくそうとするために活動してくださる非セクマイの方はたくさんいらっしゃるし、そうした方々にはいちレズビアンとしてどんなに感謝してもしきれません。実際あたしはたとえばベティ・デジェネレスやダニエル・ラドクリフに対して深い感謝と尊敬の念を抱いています。そもそもtoppoiさんご自身が異性愛者男性であることを公表されている方ですが、その立場から「女性同士の恋愛」への偏見を告発してくださっていることを、あたしはたいへん心強く、そしてありがたく思っています。あたしがこのエントリで批判しているのは、想像上の「被害」を口実として他者を中傷するという行為であり、発話者の性的指向は関係ありません。★★★【追記おわり】★★★
7-2. イタコさん、現実のセクマイの声を無視
さて、「toppoiさんの発言に傷ついているかもしれないセクマイ」という想像上の存在にたいへん同情的なイタコさんたちは、果たして現実のセクマイの声にはどう反応しているでしょうか。実は、toppoiさんのところのコメント欄には、上記のイタコさんたちよりも先にこうした意見が寄せられています。
私はこのゲームでいう『たった7組』に仕分けされてしまう女子なのですが、このゲームのセクマイ描写には不快感を覚えました。何本も有名どころの百合ゲーをプレイしてきた百合好きですが、正直なぜこのゲームが評価されてるのか分かりません。私と同じような感想をもたれる方がいらっしゃって安心しました。
20120416 | にゃも #MLEHLkZk URL [Edit]
この方もセクマイだと思うんですが、イタコさんたちはこの意見をなぜか完全に黙殺しています。現実の性的少数者(と思われる方)のこうした意見を無視し、想像上の「toppoiさんに馬鹿にされたセクマイ」の立場や意見をひたすら代弁したところで、それがいったい何になるのでしょう。単にイタコAB両氏が「我こそは弱者の味方であるぞ」という気分にひたって気持ち良くなれる、それだけじゃないですか。オナニーは自室でひとりでやってくださいよ、いちいち「セクマイの方」をダシにせずに。
7-3. イタコさん、悪口のつもりでうっかり自己紹介
まずイタコAさんの、この発言が変。
ですが海外ではセクマイの人権を主張する団体の方でも、自身の性的指向を認めるのが怖いという談をする人が居ます。
なんでいきなり海外限定の話になるんすか。あなた身近にLGB(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル)の知人いないでしょ。セクシュアリティについての書籍や論文も、おそらく読んだことないでしょ。日本にだって「性的指向を認めるのが怖い」人は腐るほどいて、そもそもなぜ「怖い」のかというと、『百合霊さん』の創り手および愛好者のような人たちが同性愛をどこまでもスティグマ視し、「フツウジャナイーフツウジャナイー」と大合唱しているからでしょうがっ!! なぜ、そこを無視する!?
toppoiさんは徹頭徹尾、その「フツウジャナイー」大合唱をやめろ、せめて作品のどこかで否定する姿勢をみせろという話をしてるんですよ。つまり、彼が批判しているのは現実のセクマイではなく、現実のセクマイを追い詰める「フツウジャナイー」論の信奉者たちです。正真正銘「セクマイの方」(笑)であるあたしもそこに共感し、「よくぞ言ってくださった!」と溜飲を下げてました。こともあろうにこんなtoppoiさんに向かって、
セクマイの方に一番偏見をもって馬鹿にしているのはtoppoiさんでは無いでしょうか?
と言い出すのは、俗に言う「悪口は自己紹介」では。まず自分が偏見を持って馬鹿にしているからこそ、自分が言われていちばん刺さることばを投げつけたんでしょ?
次、イタコBさんのこの一文に目の玉飛び出ました。
普通じゃないというのは多数派ではないというニュアンスだと思います
つまり、「普通=多数派」だと信じているわけですよこの人は! おまけに、
セクマイについての正しい知識のない主人公の発言を、そのまま友人への侮辱と取るのは乱暴ではないですか?
って、要するに知識がなければ何言っても免罪される(べき)とも思ってるわけですよこの人は! ああ、いるいる、こういう人。差別的な言動をとがめられても「知らなかった」「悪気はなかった」と言い張るのみで、絶対に非を認めないタイプの人。こういうメンタリティだからこそ『百合霊さん』のミョーな表現にも疑問を持たずにいられるのでは。つまりイタコBさんの言う、
それはやはりあなたがマジョリティ的思想の偏見をもってセクマイをバカにしているからでは?
ということばは、そのままイタコBさん自身にあてはまるんです。やっぱり「悪口は自己紹介」。
8. まとめと考察
本エントリでとりあげた百合オタさんたちの反論には説得力が感じられません。上の方で、
結局のところ「これは駄作だ」と決め付けてから書いてるとしか思えないところが多い、
としてtoppoiさんを批判するコメントを紹介しましたが、事実はどうやら逆なのでは。このコメント主さんたちの方が、まず「これは駄作ではない」という結論ありきで反論文を書いていて、結論を支える論拠をじゅうぶん考え抜いていない(考え抜く必要すら感じていない?)のだと思います。せっかく文章を書くのなら、『伝わる・揺さぶる! 文章を書く (山田ズーニー、PHP新書)とか読めばいいのになあ。
世の百合コンテンツというものがこうした層をターゲットとして制作されているのなら、そりゃ変な作品やよくわからないファンも多くなるはずだと納得した春の宵でした。「百合トピア(笑)」の支持者がこうも多い(このエントリで取り上げなかったコメント群については、こちらとこちらでご覧ください)んなら、もう今後はシナリオライターなんていらないんじゃないの? ジェネレータでいいよ、マジで。
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