中国による歴史捏造が止まらない。沖縄県・尖閣諸島を「中国古来の領土だ」と世界に向けて発信しているだけでなく、「琉球(沖縄県)は明治政府が中国から強奪した」とまで言い始めているのだ。そんななか、国境問題を長年取材してきたフォトジャーナリストの山本皓一氏は、先日出版した自著で、中国の許し難い歴史捏造の証拠を写真付きで暴いた。山本氏を直撃した。
「海外取材が長かったせいか、外から日本の国境を見ていると、常識では考えられないほど無関心・無防備に思えた。『いつか大問題になる』と危機感を持ち、二十数年前から国境の島々に上陸を敢行、問題提起を続けてきた。悪い予感は的中した。日本人に尖閣諸島の実像を知ってもらい、先人による開拓の歴史を共有してもらうために、緊急出版した」
山本氏の注目の新書は「日本の国境を直視する1 尖閣諸島」(KKベストセラーズ)。明治期の実業家、古賀辰四郎氏による尖閣開拓史と歴史的資料を紹介するとともに、一昨年の中国漁船衝突事件から、国有化までの動きを克明にリポート、山本氏が上陸したり接近して撮影した尖閣諸島の貴重な写真120点が掲載されている。
歴史的にも国際法上も、尖閣諸島は日本固有の領土だが、傍若無人な中国は強奪を諦めていない。同著にはなんと、中国人が「釣魚臺列嶼中国領土(=尖閣諸島は中国領土)」と刻まれた石碑を、尖閣近くの東シナ海に沈めていた事実と証拠写真が記されている。
同著によると、歴史捏造の証拠写真と記事が掲載されたのは、香港紙「文匯報」のニュースサイト「文匯網」(2004年3月26日)。黒曜石の立派なもので、「中国民間保釣連合会は3月上旬、中国主権を示す20個の石碑を尖閣海域に投げ入れると宣言した」と報じたという。
この直前の同月24日、中国人7人が魚釣島に強行上陸し、沖縄県警に入管法違反の現行犯で逮捕されている。
また、中国のタブロイド紙「新京報」(04年1月17日号)は、「20個の石碑を、釣魚島海域の東経123度17分、北緯25度40分に投げ入れた」と報道したという。
海中投下は複数回行われたのか。新京報が報じた経度・緯度は、魚釣島の西わずか20キロ弱の地点である。山本氏はいう。
「50年後、100年後に石碑が発見されたとき、『尖閣諸島は中国領という動かぬ証拠』とアピールするためだ。かつて、チベットを侵略したときも、中国の古い貨幣を地中に埋めたというが、後で発見させて『昔から中国の一部だった』と主張するため。中国の常套手段といえる」
中国は長い歴史の中で「易姓革命」という王朝交代を繰り返してきた。戦いで勝った者が新しい皇帝を名乗り、前王朝の関係者や施設を抹殺・破壊して、自分たちに都合よく歴史を書き換えてきた。現在の“共産党王朝”も、歴史をねじ曲げることに何の躊躇もないのか。
現に、中国は先日、国連で「尖閣を日本が盗んだ」と演説したばかりか、米紙「ニューヨーク・タイムズ」と「ワシントン・ポスト」に「尖閣は中国領」という広告を掲載し、米政府や議会関係者に盛んにロビー活動を行っている。
中国がここまで露骨に尖閣強奪に乗り出したのは、やはり3年前の政権交代が原因だ。
当時の鳩山由紀夫首相は、米軍普天間移設問題で日米同盟を傷つけた。さらに、最高実力者とされ、「在日米軍は第7艦隊だけで十分」と豪語した小沢一郎幹事長(現・国民の生活が第一代表)は2009年12月、民主党国会議員143人を引き連れて訪中。リップサービスとはいえ、「例えて言えば、私(小沢)は人民解放軍の野戦司令官」とまで語った。
山本氏も「あれから、中国の尖閣奪取の動きが早まった。『日本が弱体化した。今がチャンスだ』と見極めたのだろう。昨年3月の東日本大震災直後、私は『中国漁船が6月に尖閣上陸を画策している』という情報を得た。ところが、日本人が震災に冷静に対応し、海上保安庁や自衛隊が守りを固めていたため、その時は見送ったようだ」という。
日本の「尖閣国有化」を受け、来月の第18回中国共産党大会で、次期総書記に就任予定の習近平国家副主席は、さらなる対日強硬路線を取ることが指摘されている。山本氏は警戒する。
「日本領海に中国公船が侵入しており、何があってもおかしくない。尖閣を取られれば、沖縄も取られる。すでに中国は『琉球独立』を訴えて、琉球共和国の憲法から国旗まで作っている。日本をチベット化するつもりか、東日本を『日本自治区』、西日本を『東海省』とする地図まで作製している。一部知識人の中に『小さな島のことで、中国と争うことはない』という人がいるが、日本を社会主義化させて自分が『赤い貴族』になりたいのでは。先人が築いた日本の歴史を抹殺させてはならない」