「田んぼは持って逃げられない。生活基盤が奪われる」。新潟県魚沼市のコメ農家の坂大貞次さん(64)は、柏崎刈羽原発の放射能拡散予測を厳しい表情で受け止めた。
魚沼市は「魚沼産コシヒカリ」の産地で、防災対策の重点区域の目安となる30キロ圏の外だった。24日公表の拡散予測では、福島第一原発並みの事故が柏崎刈羽原発で起きた場合、市中心部だけでなく原発から東南東に40.2キロ離れた山間部まで1週間の被曝(ひばく)量が100ミリシーベルトに達すると試算された。
JA北魚沼の三浦哲郎理事長も「逃げなくて済む農家があっても『魚沼産』というだけで売れなくなる。ブランドどころの話ではない」。市中心部の商店街でも動揺が広がり、理容業男性(71)は「魚沼は原発の風下。事故があれば放射性物質が飛んでくるとのうわさはあった。もっと早く伝えてほしかった」とし、不動産会社役員の男性も「どう避難するのかを同時に示してくれないとパニックになる」と話した。