アニメビジネスの今・アニメ空洞化論その1:海外への外注増加で日本アニメは空洞化するか? (3/4)
日本アニメが弱いフィリピン、ベトナム、インド
日本アニメが支配的なタイやインドネシア、マレーシアと多少異なるのがフィリピン、ベトナム、インドといった国々である。
フィリピンは古くからディズニーがアウトソーシングしており、現在は東映アニメーションが子会社を置いており、動画や仕上げを中心に日本からの仕事を引き受けている。その意味で技術移転によってライバルとなる可能性がある国と言える。
しかし、次表のように人気アニメは米国製と日本製で二分されている。上位は米国製が独占状態にあるが、これはフィリピンがかつて米国の植民地で、独立以降も実質的にその支配下に置かれていたことの影響によるものだろうか。作品の制作国別で見ると、大人層が米国製4作品で94%、日本製6作品で70%、子ども層は米国製4作品で145%、日本製6作品で64%と、ここでも米国が優勢である。
このようにフィリピンは技術移転によってライバルになる可能性はあるが、実際は自国アニメの製作がほとんど行われていないこともあり、そうした傾向は見られない。
ベトナムでも、米国のアニメーションが人気上位を占めている。『ミッキーマウス』が一番人気なら分かる気もするが、大人層の1位が『トムとジェリー』というのにはちょっと驚いてしまった。
上位が米国作品という点とそのほかが日本アニメという点はフィリピンによく似ているが、よく見ると日本アニメのポイントが非常に低い。大人層で米国製2作品で98%、日本製は8作品あるが81%、子ども層では米国製4作品で159%、日本製は6作品もあるのにわずか14%である。
これは要するに日本の作品がそれほど流通していないということで、米国の世界的なCATVに押されているからではないだろうか。日本アニメで唯一ポイントが高い『ドラえもん』は、1990年代からマンガの翻訳版(ただし海賊版)が流通していたことが影響している。
ただし日本の対抗馬という意味では、ベトナムは日本からのアウトソーシングがほとんどなく、自国製アニメもないため競争相手とはならないだろう。
映画大国のインドはほかのアジア諸国と文化的にもかなり異なるといった事情もあってか、自国製アニメーション『Chhota Bheem and the Curse of Damyaan』『The New Adventures of Hanuman』がランクインしており、米国製、日本製と三つどもえの状況になっている。大人層では米国+英国製5作品で140%、日本製3作品で100%、インド製2作品で81%、子ども層では日本製4作品で100%、米国+英国製4作品で74%、インド製2作品で62%という内わけである。
インドでは日本からのアウトソーシングは行われていないので、直接的な技術移転はない。また、インドで制作された2つの作品を見ると、日本よりは米国のCartoon(子ども向けアニメ)に近い。従って、インドでも技術移転は見られないものの、米国の影響を受けたインド製アニメーションとの競争はあるということになる。三つどもえの戦いが繰り広げられているインドだが、トムス製作の『巨人の星』インド版、テレビ朝日製作の『忍者ハットリくん』の新作が放映されるので、日本製アニメのさらなる拡大を期待したい。
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