オスプレイ――固定翼機でも回転翼機でもなくなる「魔の瞬間」
米海兵隊が沖縄に配備を予定している新型機V-22オスプレイが、モロッコに続きフロリダでも、訓練中に墜落事故を起こした。米軍によれば、パイロットの操作に関わる「人為的なミス」が原因で、「機材に問題はない」と言われている。
オスプレイは、ヘリコプターのように垂直に離着陸することができ、飛行中は、固定翼航空機として高速で、したがって同じ燃料でより長距離を飛行することができる。ヘリコプターとプロペラ機の両面を備えた「すぐれもの」で、海兵隊の多様な作戦ニーズにも適応している。
ヘリコプターは、回転翼を回して揚力を得る。固定翼機は、推進力によって発生させた高速の気流を翼にぶつけて揚力を得る。いずれも、十分な揚力がなければ、空中には上がらない。空中で揚力を失えば落下する。
オスプレイは、離陸のとき、回転翼によって浮上し、徐々に回転翼を傾けて速度を増し、十分な速度になったところで回転翼を真横にしてプロペラとして使用し、固定翼によって揚力を保つ仕組みになっている。着陸の時は全く逆の動作が行われる。
そういう仕組みの飛行機にとって最大の問題は、回転翼から固定翼へ、またはその逆の転移がスムーズにいくかどうかだ。特に、着陸時の速度コントロールは、どんな飛行機でも難しい。早すぎれば着陸できないし、遅すぎれば失速して揚力を失う。オスプレイの場合、そこに、回転翼の角度を水平から垂直に変える操作が加わるため、難しさが倍増する。
最近の事故例は、いずれも、低高度を低速で飛行中に、ということは、おそらく固定翼から回転翼に転移する過程で、何らかの姿勢変化をしようとして失速し、墜落したものと思われる。
このような事故は、マニュアル通りの操作をすれば防ぐことができる。だが、実際の飛行では、急な風向きの変化がある。編隊飛行では、僚機の予期しない姿勢変化への対応も必要となり、マニュアル通りの操作では済まない場合がある。
普通の機体なら、そうした不意の操作への許容度があるが、オスプレイが、固定翼から回転翼に転移する過程においては、理論上、固定翼機でも回転翼機でもなくなる「魔の瞬間」があるため、不意の操作に対する許容度は少ない。まして作戦行動となれば、天候や風向きを選ぶわけにはいかず、想定されない敵の銃撃など、通常の離着陸とはかけはなれた運用が要求されるため、「人為的ミス」の確率は大きい。
それでも米軍は、機体に問題はなく、パイロットによる人為的ミスだったことを強調する。だが、人為的ミスは、必ず起きる。機体に問題がないのであれば、安全性の説明は、「人がミスを起こさない」ことを証明しなければならず、理論上不可能だろう。仲井真沖縄県知事が言うように、「専門家の軍人(パイロット)が操作しても事故を起こすなら、(それは、機体の設計自体に)問題がある」わけで、世間では、そういう飛行機を「欠陥機」と言う。
普天間基地の離着陸経路の下には多くの民家がある。「世界一危険な基地」と言われるゆえんだ。そこに、「世界一危険な飛行機」を配備することは、日米同盟を破綻させる意図があるとしか思えない愚行だ。
日本政府は、米軍の配備を拒否する権限がないと言う。だが、それは、東電の原発事故調査における自己弁護と同じ論理だ。
問題は、権限の有無ではなく、不安を抱える地元に対する誠意だ。昨年、石川県小松基地の自衛隊機が部品を落下させた事故の際には、地元に拒否する「権限」がないにもかかわらず、半年近くにわたって飛行を停止した。
ちなみに、小松基地の飛行を止めたのは、「素人」の一川保夫大臣だった。政治家であれば、アメリカに対して、「配備の強行は、日米同盟に禍根を残す」くらいの捨て台詞を言ってほしいところだが、なまじ安保に詳しい「学者」大臣には難しい、ということなのだろうか。
(栁澤協二 やなぎさわ・きょうじ 国際地政学研究所副理事長 元内閣官房副長官補)
3 |
2012/08/28 12:19
|
オスプレイ配備の本当の意味は何
航空戦術遂行には指揮官から兵まで陸地の地形が頭に入っていることが第一の要件です。 |
2 |
2012/07/10 23:23
|
オスプレイは危険なのか?
垂直離着陸輸送機のオスプレイ。 |
1 |
2012/07/10 03:05
|
尖閣列島に最適。
オスプレー配備ですか。 |
このエントリへのコメント: 3