発信箱:地に立つ視点=滝野隆浩(社会部)

毎日新聞 2012年10月24日 01時20分

 海上自衛隊の航空基地に近いせいか、自宅の上をよく哨戒機が飛ぶ。毎日ではないが、下腹に響く騒音を感じる。米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが配備された沖縄のことを思う。沖縄ではこの何倍も、深刻なのだと想像する。

 沖縄配備直前、他紙のベテラン記者2人による「オスプレイ搭乗記」が掲載され、興味深く読んだ。最も事故が起きやすいとされる「ヘリ/固定翼」の転換モードについて、1人は「気づかないほどスムーズ」と書き、もう1人は「ガタガタと機体は揺れ」とした。同じ防衛省主催の体験搭乗なのに正反対の感想。取材する者の考え方によって、こうも感じ方が違うのかと考えさせられた。

 沖縄の米軍基地問題の本質は「視点」の問題だと思う。安全保障の観点で空から必要性を説くのか、あるいは住民感情に心を寄せて空を見上げながら考えるか。両方大事だろうが、いまは当然、より住民に近いところで考えるべきだ。配備に当たっては日米両政府が細かな運用ルールを決めた。それが守られていないと、見上げる沖縄県が指摘している。どうしてその感覚を共有できないのか。

 米軍の「上から目線」が許せない。見下しているから県の指摘は受け流し、こんな情勢の中でも米兵による強姦(ごうかん)事件が起きるのだ。沖縄の感情を甘く見ている。さらにこうした米軍のふるまいに強く出られない日本政府の姿勢はもっと許せない。自衛隊が同様のことをしたら、まず間違いなく新型機の配備も訓練も中止になる。日米同盟が肝要だと本当に考えているのなら、日本の当局者は地に立て。住民とともに怒れ。遠慮すべきでない。その先にしか、真の同盟関係はありえない。

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