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2012年10月24日(水)付

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米大統領選挙―問われる激動期の針路

11月6日投開票の米大統領選に向け、民主党のバラク・オバマ大統領と、共和党のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が激しく競り合っている。両氏は3度の討論会に臨み、各[記事全文]

日韓文書判決―裁かれた外務省の体質

1965年の日韓国交正常化までの外交文書の多くを公開するよう命じる判決が、先ごろ東京地裁で言いわたされた。審理を通じて見えたのは、外務省の度を超した隠蔽(いんぺい)体質だ。[記事全文]

米大統領選挙―問われる激動期の針路

 11月6日投開票の米大統領選に向け、民主党のバラク・オバマ大統領と、共和党のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が激しく競り合っている。

 両氏は3度の討論会に臨み、各回1時間半にわたって議論を交わした。大々的に中継され、有権者が候補者の政策や人柄に触れる貴重な機会だった。

 米国はイラク、アフガニスタンと二つの戦争で大きく傷ついた。「アラブの春」のあとの中東では地殻変動が起き、対応に苦慮している。

 2008年秋のリーマン・ショックで経済はつまずき、中国との産業競争も厳しさを増すばかりだ。世界唯一の超大国という立場は揺らぎ、国家財政の悪化で、これ以上、世界の問題を抱えきれないのが実情だ。

 針路をどうとるか。外交をテーマにした最後の討論会では、米国の指導力をめぐる考え方の違いが出た。

 オバマ氏は、核開発を進めるイランの制裁で中国やロシアの協力を取り付けたことを挙げ、「我々がどのようにして米国の威信と強さを世界で取り戻したかを示している」と述べた。

 一方、ロムニー氏は「4年前と比べ、世界のどこを見ても米国の影響力は強まっていない」と批判。自由や人権、民主主義を守るため、強い米国でなくてはならない、と訴えた。

 ただ、単独での軍事行動を辞さなかった共和党のブッシュ前政権とは一線を画した。内戦状態のシリアへの軍事介入の可能性は否定し、イランをめぐっても外交的手段で核開発を断念させることが重要だと訴えた。

 オバマ、ロムニー両氏がともに強調したのは、米国の力の回復には、国内経済の立て直しが必要との基本方針だ。それだけに選挙戦では、雇用の拡大や財政赤字の削減など、経済政策が最大の争点となっている。

 討論会で毎回とり上げられたのが、対中政策だ。

 両候補とも、中国への雇用流出や、貿易の不公正さを問題にした。ロムニー氏は「執務初日に中国を為替操作国に指定する」と訴えており、当選すれば、中国との貿易摩擦が悪化しかねないとの懸念も出ている。

 有権者受けを狙って対中強硬路線を打ち出している面もあるが、それだけ米国にとって中国の存在感が増していることの裏返しに他ならない。

 言うまでもなく、外交・安全保障でも、経済でも、米国の進む道は日本の針路とも深いつながりをもつ。内向きになりがちな米国の有権者だが、世界の動きにも視野を広げてほしい。

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日韓文書判決―裁かれた外務省の体質

 1965年の日韓国交正常化までの外交文書の多くを公開するよう命じる判決が、先ごろ東京地裁で言いわたされた。審理を通じて見えたのは、外務省の度を超した隠蔽(いんぺい)体質だ。

 当時の記録が表にでると、今後の韓国、北朝鮮との交渉に悪影響が及ぶ。外務省はそう主張し、控訴する考えだ。一方で、開示しても差し支えのない文書があるか調べるという。いい加減な扱いをしてきたことを、事実上認めたようなものだ。

 外交文書は原則30年で公開すると外務省自らが定めている。それだけの時間が過ぎ、社会情勢が変化してもなおオープンにできないというのなら、理由を説明しなければならない。

 判決はそう指摘したうえで、次のような文書まで公開を拒むのは違法だと述べた。

 日本政府がすでに開示している別の文書に書かれている内容と同じもの▽韓国政府が開示したもの▽両国がかわした見解や発言のうち、非公開とする約束をしていないもの▽朝鮮半島から日本にわたった文化財のリストなど、客観的事実を記録したもの――などである。

 もっともな見解だ。外務省はなぜ、こうした文書まで隠したのか。韓国民は知っているのに日本国民に知らせてはならない「機密情報」とは何なのか。主権者である国民を愚弄(ぐろう)する振る舞いと言わざるをえない。

 判決は、外務省が非開示とした382カ所のうち、268カ所の公開を命じた。一方で、たとえば竹島問題に関する政府内部の検討案など、外に出ると現在の交渉が不利になるおそれがある記録は対象としていない。手堅い判断といえよう。

 もどかしいのは、これらが文書そのものを精査したうえでの結論ではないことだ。

 情報公開法は、裁判官が文書を直接見て開示か非開示かを決める「インカメラ審理」を認めておらず、表題や前後の文章から内容を推認するほかない。

 判決は「この制約がなければ開示の範囲はさらに広がる可能性がある」と述べている。抑制的に検討した結果が「268カ所」だといっているわけで、外務省の認識との溝は深い。

 インカメラ審理を導入するための情報公開法改正案は、昨年4月に閣議決定されたものの、たなざらしになっている。知る権利の旗を高くかかげた民主党は、どこにいったのか。

 情報がしっかり開示され、国民が行政を適切にチェックすることで、民主主義は発展する。「よらしむべし、知らしむべからず」の国に、未来はない。

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