輸出規制の炭素繊維、中国に不正持ち出しか 大阪の商社 軍事転用可

2012.10.24 09:28

 軍事転用される恐れがある炭素繊維が、大阪府内の商社から中国に不正に持ち出された疑いがあることが捜査関係者などへの取材で分かった。炭素繊維は外為法で輸出が規制されており、外為法違反や詐欺の疑いも浮上。捜査関係者からは「戦闘機に使われれば、燃費など中国の軍事レベル向上につながりかねない」との声も上がっている。

 関係者などによると、戦闘機の機体に転用したい中国軍事関係者が最新鋭旅客機「ボーイング787」の機体にも使われる東レの最先端の炭素繊維を入手するよう、大阪府内の商社に依頼。平成21年8月に、この商社が約1キロの炭素繊維を経済産業省の許可を得ないまま、中国に持ち出した疑いがあるという。

 この商社は東レと取引実績がなかったため、静岡県内のベンチャー企業に東レの炭素繊維約2トンを2千万円で入手するよう依頼。ベンチャー企業は「工場で生産する水素発生装置のボディーに使う」などと東レ子会社に虚偽説明を行い、サンプル約1キロを確保した。商社はその後、中国側に炭素繊維を手渡したとみられている。静岡県警は捜査を行い、同様の事実を把握している。

 東レは社内調査などの結果、「詐欺行為の被害に遭ったことは把握しているが、商社が中国側に対し、低品位の炭素繊維を最先端のものと偽ったのではないか」(首脳)としている。大阪の商社は「特にコメントすることはありません」としている。