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政治
【産経抄】10月24日
2012.10.24 03:07
いつもよりは少し遅いようだが、今年も金木犀(きんもくせい)の香りが漂っている。秋になると、この甘酸っぱい花を求めて、遠近(おちこち)を歩き回る人も多い。しかし拉致被害者、横田めぐみさんの両親、滋さんと早紀江さんにとってはつらい思いにかられる香りでもあるようだ。
▼めぐみさんが生まれたのは金木犀の花が咲き始める10月5日だ。拉致されたのが香りが収まるころの11月15日である。一昨年の誕生日にあたり両親はこんな書き出しの手紙を支援者らに送った。「今年も又めぐみのいない金木犀香る頃となりました」。
▼だが横田さんら被害者家族にとってこの秋は、もっとつらい季節かもしれない。拉致問題担当相でもあった田中慶秋法相が、就任後わずか3週間で辞任した。そのことで、野田佳彦内閣がいかに拉致問題を軽視しているかが明らかになったからだ。
▼田中氏は3年余り前に民主党政権になってから実に7人目の担当相だった。それもこれまでの中で最も熱心で家族の信頼厚かった松原仁前担当相に代えての起用だった。だがそれまで田中氏が、拉致問題で熱心に動いていたような形跡はなかった。
▼逆に就任後、暴力団関係者との交際や外国系企業からの献金が指摘された。「正義」というものから遠い政治家だったようだ。そんな人を最も正義感が求められる法相や拉致担当相にあてた。それだけで野田首相に拉致問題を解決する気があるのか、疑問視されても仕方ない。
▼しかも辞表を受理した首相に責任感は見てとれない。閣僚懇談会では「病気治療のため」で押し通したそうだ。そんな取り繕いでは国民が悲しくなる。まずは被害者家族に「ふさわしくない人を任命し申し訳ない」と謝るべきだろう。
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