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政治
【主張】田中法相辞任 もはや政権担当資格なし
外国系企業からの献金や暴力団との交際の責任を問われた田中慶秋法相の辞任は当然であり、むしろ遅きに失した。
野田佳彦首相は、かねて不適切な「政治とカネ」の問題が指摘されてきた田中氏を法の番人たる法相に任命し、本人が問題を事実として認めた後も更迭せずに放置してきた。首相の任免権者としての責任は極めて重大である。
田中氏の辞任について首相は、「体調不良のため加療が必要ということで、大変残念だが辞表を受理した」と述べた。田中氏が辞任に追い込まれた真の理由を覆い隠す驚くべき発言だ。
田中氏は暴力団の幹部の仲人を務め、組長の宴席にも出席していた。法相としてばかりか、国会議員としても失格である。田中氏は体調不良を理由に一時入院したが、直ちに辞任すべきだった。
田中氏は就任記者会見で、質問と答えがかみ合わないなど、職務執行能力も疑問視されてきた。首相は法務行政への信頼を失墜させた根本原因が自らにあることを、認識していないのだろうか。
首相は問題発覚後も田中氏をかばい続けたが、その田中氏は18日の参院決算委員会を公務を理由に欠席し、招請されていなかった会合にも急遽(きゅうきょ)、出向いていた。国会答弁で窮地に陥ることを恐れた民主党の判断があったともいう。事実なら言語道断だ。
外国系企業からの献金でも、民主党幹部らから「献金相手に国籍は聞きづらい」との擁護の声が相次いだ。極めて認識が甘い。
同じく辞任に追い込まれた一川保夫、田中直紀両氏の防衛相起用をはじめ、野田内閣は昨秋の発足後、党内融和第一の「内向き人事」で失敗を重ねてきた。
田中氏の閣僚起用についても、9月の民主党代表選で支持を受けたことへの「論功行賞」だとされる。政権基盤の安定を優先して法務行政をないがしろにしたものなら、本末転倒と言うほかない。
田中氏は拉致問題担当相も兼務していた。拉致被害者の帰国から10年という節目の年に、適性が疑われる人物の登用は、野田政権が拉致問題を軽視していることを如実に物語る。拉致被害者家族の落胆の声をどう聞くのか。
民主党に政権を担う資格が欠如していることは、すでに明らかだ。野田首相は一刻も早く国民に信を問うべきである。
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