人権委員会設置法案の閣議決定
VOL.107 (2012/9/20)
 

 9月19日の閣議で人権委員会設置法案を閣議決定しました。人権委員会は、人権を違法に侵害する行為による被害の救済、予防、人権啓発を任務とするもので、法務省の外局としますが独立性の高い機関としています。

 

人権救済制度を必要とする理由

 人権侵害に対する救済手段としては裁判所に訴えて救済を求める方法がありますが、解決に時間がかかります。そこで裁判手続きによらずに迅速に問題解決にあたる機関として人権委員会を設けることにしたものです。

 人権救済法案は、これまでいくつかの案が検討されてきました。その1つが、小泉内閣時代の2002年3月に国会に提出された人権擁護法案です。
しかし、国会での審議が進まないままに2003年10月の衆議院解散により廃案となりました。

 

これまでの法案の反対理由

 この法案には、次のような指摘があり、反対の論拠となりました。

@マスコミによる人権侵害の訴えがあれば強制調査の対象になり得ることになり、表現の自由との関連で問題である。

A人権委員会の委員や人権擁護委員に外国人が任命され、日本が外国に振り回される恐れがある。

B人権委員会を国家公安委員会のような国家行政組織法の第3条に定める委員会とするのは、強い権限を与えることになり不安である。

 

今回の法案の考えかた

 今回、閣議決定した人権委員会設置法案は、これまでの議論を踏まえて取りまとめたものです。先に挙げた指摘事項に即していえば、

@についてですが、マスコミを特別の規制の対象にすることとはしていませんし、そもそも人権委員会の権限に強制調査権はありません。

Aについてですが、人権委員会の委員や人権擁護委員には、この法案上、外国人を任命することはできません。

Bについてですが、人権委員会が強い権限をもつかどうかは、法律の規定でどのような権限を与えるかどうかによるのであって、国家行政組織法第3条に定める委員会であるからというだけで強い権限をもつものではありません。

 

法案の速やかな成立を

 これまで10年にわたり議論は出尽くしているのではないでしょうか。閣議決定した法案の一日も早い成立を望みたいと思います。

 

法務省ホームページ

*法案 → http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03_00141.html

*Q&A  → http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03_00041.html


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