グレイ

東京都在住 40代 会社員 男性 の方からいただいたご質問
様々な文献を見ると(「放射線影響情報文献レビュー」等), 3歳未満の子供に対するCTスキャンの150ミリグレイと書かれているものがあります。シーベルトで表すと頭部CTスキャンは2~3ミリシーベルト程度であると思いますが, グレイで表すとこのような大きな数値になるのでしょうか。また, 乳幼児はこれ程大きな影響を受けてしまうのでしょうか。
 

まず、グレイとシーベルトの違いについて述べますと、Gy[グレイ]はJ/kgと書き換えることができ、ある質量にどれだけのエネルギーが与えられたか、という物理学的に厳正な定義で、吸収線量といいます。これに対してSv[シーベルト]は与えられたエネルギーによって人体がどれほどの影響を受けるのかを表す単位ですが、与えられたエネルギーであるGyに、放射線の種類による影響の差(放射線荷重係数)を掛けて組織ごと(肺なら肺、甲状腺なら甲状腺ごと)に表わしたSvを(組織の)等価線量といいます。さらに、この等価線量に人体の組織ごとの影響の受けやすさの違い(組織荷重係数)を表す換算係数をかけて、全部を足し合わせた(したがって、全身を考えています)のを実効線量といい、同じSvで表わされます。等価線量と実効線量が同じ単位で表わされているところが紛らわしいところです。
このように、Svは、Gyと違って厳密さに欠ける点がありますが、これで表わせば、様々な放射線による影響を統一的に比べたり、また組織ごとの影響の違いを知ることができます。
たとえば、局部的に同じガンマ線で1Gyの吸収線量を被ばくした時の発癌を考えてみます。頭部と肺を例にとりますと、吸収線量のGyから等価線量のSvへの換算は、換算係数が1ですので、同じ数値で単位だけ違うことになります。したがって、脳の組織荷重係数は0.01ですので、Gyから実効線量のSvに換算すると100倍の差となります。また、肺の場合では組織加重係数が0.12ですので、およそ8.3倍の差となります。よって、脳の場合150mGyは1.5mSv程度に、肺の場合150mGyは18mSvの被ばく量であることがわかり、同じ吸収線量でも各組織で発がんの影響がどれだけ違うかを、数値で比較して知ることができます。なお、各組織のがん以外の固有の症状に関しては、それぞれの「しきい値」以上で発症することになり、それらは吸収線量のGyで示されます。
なお、受ける放射線がガンマ線で全身被ばくの場合、GyとSvの換算係数は1として、Gy=Svとして扱うことができます。
最後になりますが、脳の障害は150mGyでは出ませんし、発がんも数mSv程度の被ばく量では、他の要因に埋もれてしまい、確認することのできない程度です。

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