韓国とどう付き合うか -- このエントリーを含むはてなブックマーク

前回と似たタイトルだが、
国名以外に異なる点があることをまず確認しておきたい。
前回が「中国人」とどう付き合うかであったのに対し、
今回は「韓国」とどう付き合うかである。
というのも、今まで個人レベルで在米韓国人との付き合いに
何か問題があったことはないからだ。

国としての韓国は日本人の目にどう映っているだろうか。
ここでは主に経済面に着目してみたい。
私がまず考えるのは、韓国には日本と競合関係にある
産業や企業が非常に多いということである。
自動車や電機などを初めとして、
あらゆるところで日韓企業は競合している。

もちろん私は日本人としては、
トヨタやホンダにヒュンダイより良い車を作って欲しいし、
ソニーやパナソニックにはサムスンより良い電気製品を作って欲しい。

しかし、もう少しマクロなレベルで考えると
日本が余裕を持ってこの競争を眺めるためには、
日本人が韓国資本そのものをもっと所有するのが
最も良いのではないかと思う。
日本企業が好調ならば韓国企業が苦戦し、
韓国企業が好調なら日本企業が苦戦するというような産業では、
両方を所有してしまえばリスクを大幅に減らすことができるからだ。

例えば、ソニーがサムソンの株式の過半数を持っていたとしたら、
液晶テレビ戦争だってもっと余裕をもって眺めることができるのではないか。
ソニーのテレビが売れて国内が潤えばもちろん問題ないし、
サムソンのテレビが売れても、その利益の大半は国内に還流する。

サムスンの時価総額は今やソニーの10倍以上あるため
この話そのものは現実的ではないが、
国全体で見れば、韓国株式市場の時価総額は1兆ドル前後と、
4兆ドル以上の時価総額を有する日本の4分の1程度に過ぎない。
17兆ドルを超える日本の個人金融資産のほんの一部を投資すれば、
日本企業と競合する韓国企業のかなりの部分を買い取れてしまうだろう。

しかも現在、韓国政府はウォンを意図的に安値に誘導しており、
ウォン資産は投資対象として「お買い得」なはずなのである。


個人の金融資産を国の政策で動かすのは、実はそんなに難しくない。

95年に1ドルが80円を割ったとき、
円は実質購買力の点で市場最高値をつけたが
あの当時は、庶民が銀行に頼んでも外貨預金を受け入れて
もらえないのが普通であった。
日本は巨額の経常黒字を計上していた上に、
巨額の個人資産すべてが円に縛られていたのだから超円高になるのは当然である。

その後、超円高に苦しんだ日本は個人の外貨購入を積極的に後押ししたり、
FXに関する規制を大幅に緩和したりした結果、
円安を後押しし、為替市場の安定性も増した。
今後も、外貨建て金融商品の広告表示に関する規制を変えたり、
FX取引の証拠金倍率に対する規制を変更するだけでも
個人の投資動向はそれなりに変えることができるだろう。

具体的に個人投資家の韓国に対する投資を増やす方法もたくさんある。

例えば、現在は何故か韓国ウォンの外貨商品を扱う金融機関が少ないが
外貨金融商品の取り扱い機関に対して「過度な投機を抑制するため」等と称して、
日本との貿易額の大きい国の通貨から順に商品を売るように定めれば、
一気に取り扱い機関は増えるだろう。

外貨取引のコストやリスクを抑えるためには、「くりっく365」のように
実質的に官営の取引所を使った使い勝手の良い仕組みを提供すれば良い。

もっと単純に、四季報などに韓国企業の業績が全て日本語で載っているだけでも、
興味を持つ投資家は大幅に増えるだろう。
そのためには単に、日本政府が委託研究とでも称して、
民間企業に韓国企業の業績を日本語でデータベース化するよう依頼するだけで良い。
ほんの数百万円か数千万円程度でできてしまうだろう。


つい最近、日本政府は韓国政府との通貨スワップ協定の一時増額部分を失効させた。
これは、金融危機の際の韓国ウォンの暴落リスクを若干高めたし、
単純な日本の右翼はそれだけで歓喜していたけれども、
そもそも暴落した資産を安値で買う事なしに、日本が何らメリットを享受する事はできない。
せいぜい、さらにウォン安となった経済環境の下で、
日本企業がコスト競争力の低下に悩むのが関の山だろう。
実際、リーマンショック後に起ったこともほぼ同様である。

日本は新興国に比べれば
圧倒的に自由な資本取引の中で経済を運営しており、
新興国との競争においてはこれを大きな武器にしなければならない。

日本の投資家が、金融危機時に韓国企業の資産を魅力的な価格で
買えるチャンスはあと何回くるだろうか。
私はせいぜいあと1回くらいではないかと思っている。
現在の韓国は1500億ドル程度(*)の対外純債務国であるため
依然として金融危機にさらされるリスクがあるが、
近年、毎年200億ドル超の経常黒字を計上している同国が
米国や日本のような国と同程度の安定した経済を
手に入れるのは時間の問題だからだ。

手遅れにならないうちに韓国の競合企業のある程度の部分を所有し、
仮に日本企業が多くの分野で競争に敗れても配当で食べていける、
という状態を作ることが、
日本の韓国に対する最大の経済的なリスクヘッジになるのではないか。


(*) 2009年時点。


テーマ : 韓国について
ジャンル : 政治・経済

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プロフィール

Willy

Author:Willy
日本の数学科で修士課程修了。
金融機関勤務を経て、米国の統計学科博士課程に留学。
2009年、某州立大数学科専任講師。2010年、助教。

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