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ハチへの殺虫剤の影響、従来研究上回る 大量死解明にヒントか?

  • 2012年10月22日 20:08 発信地:パリ/フランス
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マーガレットのがくで蜜を吸うマルハナバチ。独ベルリン(Berlin)で(2011年7月11日撮影)。(c)AFP/WOLFGANG KUMM

【10月22日 AFP】欧州や北米の養蜂場で問題となっているハチの大量死「蜂群崩壊症候群」──原因については明らかになっていないが、その謎に迫る可能性のある発見として、殺虫剤の慢性的な暴露によるハチへの影響は従来の研究よりも大きいとする研究論文を英ロンドン大(University of London)の生物学者らが発表した。

 同大のチームは一般的に使用されている2種類の農業用殺虫剤、「イミダクロプリド」と「ガンマ・シハロトリン」の暴露によるハチへの影響について、マルハナバチを対象に特別な野外実験を行った。

 実験環境は、作物ごとに種類も分量も回数も異なる農薬が使用される現実の環境を考慮して設定した。実際のところ、ハチは農薬が使用された作物でも、野生の植物でも採餌活動を行うため、農薬への総暴露量を計算することは困難だ。またコロニーへ帰った後のハチの行動についても未知の部分が多く、殺虫剤がついた餌を幼虫に運んでいる可能性もある。

 チームは40か所のコロニーでマルハナバチ259匹にRFID(無線識別装置)タグを付け、1匹ずつ巣を離れた時間と戻った時間を記録した。

 実験では40か所のコロニーを4グループに分け、うち3グループには巣箱への通り道にえさ箱を置いた。中身はグループごとに変え、イミダクロプリドが添加された砂糖液か、ガンマ・シハロトリンをしみ込ませたフィルター紙、あるいはその両方を置いた。ハチの行動は制限せず、周辺で自由に採餌活動をさせた。4番目のグループのコロニーだけは対照群として、えさ箱を置かなかった。

 その結果、イミダクロプリドに接触したコロニーでは成虫まで育った幼虫が少なく、また働きバチが巣に帰ってこない割合が他のコロニーよりも高かった。またガンマ・シハロトリンに接触したコロニーでは、働きバチの死亡率が比較的高かった。また両方の農薬に接触したコロニーではより多くの崩壊がみられた。

 現在、殺虫剤のハチへの影響の基準となっている実験は最大96時間だが、今回の実験は4週間という異例の長さで詳細に行われた。また2種類の異なる農薬に同時にハチが接した場合に起きる現象、さらにはコロニーの社会構造の変化に焦点を当てた。

 21日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された論文は「われわれの発見は集約農業地域における花粉媒介昆虫、特に複雑な社会構造を持ち、働きバチへの依存に臨界閾値がある社会性ミツバチの保存に関わる明確な影響を示している」と述べている。

 昆虫による授粉の約80%はハチによるものだ。「蜂群崩壊症候群」の原因は解明されておらず、ダニやウイルス、菌類などから、殺虫剤やそれらの複合説まで様々な説がある。

 一方、科学者の間では今回の研究を称賛しながらも、マルハナバチとミツバチを直接比較することはできないとする慎重な声もあがっている。(c)AFP

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