(2012年10月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
シリアの内戦は近隣諸国に飛び火し、先週末にはレバノン治安警察の情報部門トップが殺害された。ヨルダンやトルコの国境付近でも緊張状態が続いている。アサド大統領の政権維持に向けた激戦が政情不安をあおっているのは明らかであり、欧米諸国が不介入姿勢を続けるのも困難になりつつある。
■方針転換を迫るだけでは効果なく
欧米諸国は長い間、シリア内戦に対して難しい政策を取ってきた。アサド大統領に退陣を求めるものの、長期化する厄介な内戦に引きずり込まれることを恐れ、積極的に動こうとはしなかった。残念ながら、その結果、アサド大統領は戦闘態勢を維持し、反体制派も過激化した。今や、シリアは危険な手詰まり状態のなかで多くの死者を出し、近隣諸国もこの泥沼に巻き込まれている。
アサド大統領に方針転換を迫っても無駄だった。大統領は継続的にロシアやイランの支持を受けており、軍事的に優勢になる見込みがないのに内戦を長期化させる動機になっている。また、ロシアの国際社会との対立も国連主導の介入を妨げている。
その結果、気の向かない選択肢を消去法で選ぶことになる。国際社会が内戦を傍観するという選択は過激分子を巻き込んで紛争地域をさらに拡大する恐れがある。一方、シリアの反アサド勢力に口先だけでない支援をするという選択もある。
これは決して簡単なことではない。ロシアやイランとの紛争を引き起こす危険を高めるばかりか、反体制派の軍備を増強させるだけで終わる可能性もあるからだ。
■積極介入に向けた地ならしを
この内戦を終結に向かわせるには、欧米諸国が積極介入するための地ならしをする必要がある。これはシリアに軍隊を派遣するのではなく、反体制派の武装化を支援するという意味だが、一朝一夕にできることではない。欧米諸国が最新鋭の兵器を供給する場合、反体制派と公的な関係を結ばなければならないし、供給した兵器がどう使用されるか監視し、終戦後に回収する必要もある。こうした介入を正当化するために、トルコやアラブ世界など地域のリーダー的存在との間で幅広く議論しておくことも重要だ。
不介入政策はすべての国が順守する場合のみ信頼し得るが、明らかにシリアには当てはまらない。アサド政権はイランやロシアから軍事的・財政的支援を受けており、反体制派はサウジアラビアやカタールの支援を得ている。内戦が膠着状態にあるのに、国際社会が傍観者の立場で懸念を表明するだけでは、内戦の長期化や地域の過激化を助長する危険を高めるばかりだ。今こそ方針転換の時だ。
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